医食同源
- 「医食同源(イショクドウゲン)」は、「医は三分」、「食は七分」です。医は漢方治療であり、食は食養生を中心とした「養生法」です。
- 東洋医学の古典「黄帝内経素問(コウテイダイケイソモン)、四気調神大論(シキチョウシンダイロン)第二」には、季節に合わせての生活養生方の基本が記載されています。一例として、夏は太陽が昇る前に起床、冬は日の出後に起きる等です。
- 東洋医学では養生法を大事にします。同じ食事、同じ環境、同じ生活では、また同じ病が生じます。漢方の養生法は難しくありません。自然に従って生きるだけです。
- 季節に応じ食事が変わります、旬の食材を食べます。身体は季節に応じ変化しているからです。食事が変わるように、「漢方の古典」に基づき漢方治療も季節に応じ変化します。
身土不仁(シンドフジ)
- 漢方医学は「宇宙」と言う基本概念があるのが特徴です。宇宙には大宇宙と小宇宙があります。
- 大宇宙の中には更に大宇宙と小宇宙があります。同様に小宇宙の中には更に小さい小宇宙があり、更にその中にと、漢方医学では永遠に続きます。ここでは難しくなるので簡単に説明します。
- 例えば、大宇宙は自分を囲む自然界だと考えて下さい。小宇宙は自分自身となります。
- 生物は、周囲の環境に左右され進化してきました。西表(イリオモテ)島のイリオモテ山猫は、大陸と陸続きの時に渡って来た大陸の山猫です。しかし、数千年の間に西表島の環境の中、西表島の食べ物を食べ、独自の進化を遂げてきました。こういう例は、自然界では当たり前のことです。「小宇宙である生命体は、環境と言う大宇宙に生かされています。」
- 北海道と沖縄では気温が違います。人間は恒温動物です。当然、一定の体温を維持する為、北海道と沖縄では発熱量、発汗量が異なってきます。消費カロリーが変わり、エネルギー産生に伴うビタミン、ミネラルの消費が変われば、住む所によって食べ物が変わって当たり前です。「小宇宙である人間は環境という大宇宙に合わせて生きていきます。」これが身土不仁です。
- 住む所で食べ物が変わり、生活が変わります。季節によって食べ物が変わり、生活が変わります。細かく言えば朝夕でも変わります。年齢が変われば食物も変わり、生活も変わります。本来の漢方治療は、漢方薬も季節により微妙に変化させます。
- 自分の住んでいる土地(60Km、人間が原始の時に移動できた距離)四方で取れる食材を食べるのが基本です。
漢方と一物全体(イチモツゼンタイ)
- 「身土不仁」(シンドフジ)の項目で簡単に「大宇宙」と「小宇宙」の説明をしました。
- 更に東洋医学では、宇宙は陰(イン)と陽(ヨウ)で構成されていると考えています。例えば、男と女、夏と冬、昼と夜。また、人間の身体も小宇宙であり、陰と陽で構成せれていると、漢方では考えています。
- 簡単な例を挙げると、人間は体温調節中枢で体温を維持しています。同時に発熱のため活性物質パイレキシンや、反対にプロスタグランディンなどの解熱物質も併せ持ち体温調節をしています。
- また、排尿に関しては小便を出すための副腎利尿ホルモンと、小便を出さなくする脳下垂体抗利尿ホルモンを併せ持っています。小便が出過ぎる事が良い事ではなく、小便が出ない事が良い事でもありません。両方の力のバランスが取れている事が良い事なのです。
- 陰陽とは相反する力のバランスを言っています。病はこのバランスが崩れた時に起こると東洋医学では考えています。漢方の治療は、崩れた陰陽のバランスを元に戻し、結果として病を治していきます。
- 小宇宙、生命体は陰陽の両方の気を持っています。食材として植物を見ると、地上系である葉、野菜は身体を冷やし、地下系である根物は身体を温める傾向にあります。身体は温まり過ぎてもいけません。冷え過ぎてもいけません。陰陽のバランスを取る為、身体を温める根物から、身体を冷やす葉野菜までバランス良く食べます。
- 葉から根まで。頭から尻尾まで。これが「一物全体」です。小魚等は頭まで食べます。野菜を食べたら、根菜類も食べます。
- 一物全体とは、身体の「陰陽の気」を整える食養上の知恵です。身体に熱となる肉類を食べたら、身体を冷やす食物を併せ食べます。身体を冷やす食物を食べたら、身体を温める食物を併せ食べます。
- 冬は身体を温める食物を食べます。夏は季節に合わせ、発散する食物を食べます。
- 冷え性、低血圧の人は、身体を温める食物(温、升)を中心にします。多血症、のぼせ症、高血圧症の人は、身体を冷やす食物(涼、降)を中心に食べます。
漢方とは
目次 |
漢方とは |
1300年以上続く日本独自の医学。誰でも分る要点 |
病の性質と虚実の3つの診断について |
4種の診察法 |
医療気功「糸練功。5つの技術」を知る |
食養生、大事な2点 |
原料の生薬、6通りの下ごしらえ |