平胃散、平肝流気飲、防已黄耆湯、防已黄耆湯加麻黄、防風通聖散、補中益気湯

漢方薬

日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。
一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。

平胃散。和剤局方

処方薬味

白朮、蒼朮蒼朮 厚朴厚朴 陳皮陳皮
大棗大棗 生姜、乾姜乾姜 甘草甘草

適応疾患

急性慢性胃カタル、急性、慢性胃腸炎、胃アトニー、胃下垂症、胃腸虚弱、胃拡張、喘息、貧血症

使用目標

胃の消化が悪く、宿食、停水が停滞して、膨満感があり、時に下痢がある方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    少陽病、虚実中間の実証
  • 十二臓腑配当
  • 方意
    上焦の気滞、上焦の水毒による食欲不振、悪心、息切れ、胸満感に対する方剤です。
  • 備考
    平胃散証の方は、胃は弱っていないが、怠けている状態だと考えられます。

平肝流気飲。万病回春

山梔子2

処方薬味

甘草甘草 黄連黄連 生姜、乾姜生姜
芍薬芍薬 茯苓茯苓 香附子香附子
川芎川芎 厚朴厚朴 柴胡柴胡
半夏半夏 呉茱萸呉茱萸 陳皮陳皮
山梔子2山梔子 青皮青皮 当帰当帰

適応疾患

腹水の溜まっていない肝硬変症、膵臓炎、胆嚢炎、慢性肝炎、疝気、腹痛

使用目標

肝硬変の方で日数が経過し、腹水はなく又は少ない、脇痛のある方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    少陽病、中間証
  • 方意
    肝気の亢進、気の欝滞に対する方剤です。

防已黄耆湯、防已黄耆湯加麻黄。金匱要略

防已

改善例

常習性浮腫
40歳、女性。漢方処方応用の実際より引用。

中年の女性からのご相談。毎日午後になると顏や下腿が浮腫む。身体が重く疲れやすく、イライラするとの事。医師に診て貰っても「どこも悪くなく、年のせいだろう」と笑われる。しかし、ご本人はとても辛いご様子。

やや肥満型で色白の婦人。脈は浮とは言えないが特に沈でもなく力は弱い。腹証に特に特徴無し。

防已黄耆湯を1ヶ月程飲んですっかり元気になり浮腫みが出なくなった。この例は、比較的短い日数で身体の調子が回復したものと考えられる。

処方薬味

防已防已 黄耆黄耆 白朮、蒼朮白朮又は蒼朮
生姜、乾姜生姜 大棗大棗 甘草甘草
麻黄麻黄    

適応疾患

感冒後の悪寒、自汗、身体痛等が治らぬもの。水太りの肥満症、多汗症腎炎、ネフローゼ症候群変形性膝関節症、陰嚢水腫、カリエス、冷え性、生理不順等に用いられます。

使用目標

体表の水毒、表の水毒が原因で、浮腫や関節の腫痛を生じるものに用います。この証の方は肥満の傾向にあるが体質は虚証でいわゆる水太りタイプです。

中年の女性で色白で筋肉が柔らかく締りが悪くて冷たい。表虚で肌肉部の機能低下。多感、溺利減少の傾向があり疲れ易く、足が冷え、身体が重くやや口渇のある方が多いです。しかし、必ずしも水太り体質ではなく、やや筋骨質の方や男性にも用いられます。

原典には、「風湿リウマチのような病症、脈浮、身重、汗出で悪風のもの」とあります。本方証は色白の方が多いのですが、これにこだわる必要はありません。表虚して血色に乏しく、水っぽい肌の人は色素沈着が少ないだけの事なのです。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    陰病、虚実
  • 十二臓腑配当
    脾、肺、腎
  • 方意
    水毒による水太り、身重、浮腫、尿不利、足冷。表の水毒による関節痛、関節水腫、稀薄な浸出液、多汗、麻痺、痙攣、皮膚筋肉軟弱、色白。表の寒証による悪寒、発熱、頭痛
  • 備考
    防已黄耆湯加麻黄は、防已黄耆湯に麻黄を加えたものです。防已黄耆湯では治らない体表の痛み、関節症、身体痛に対してより著効を示します。骨粗鬆症で骨がもろくなった痛みの方にも用います。

防風通聖散。宣明論

改善例

慢性耳漏
47歳、男性。漢方処方応用の実際より引用。

大兵肥満で体重は86キロの相撲取りのような、どっしりとした体格で顏色は赤く大酒飲みである。20年前中耳炎に乳様突起炎を併発し、切開手術を受けた。又、同じ年に顎洞化膿症で手術をした。それ以来、左の耳と乳様突起手術後の傷跡から排膿が続いて止まらない。時々、左耳の後が痛む。10年前に盲腸炎の手術もしている。

血圧は最高180、最低80で、肩凝りが酷く、また首筋も凝り、口渇が甚だしく水は1日1リットル位を平気で飲むと言う。大便は1日1、2回である。脈は力がある。この時点で典型的な防風通聖散証と思われた。

しかし、この方、便秘ではなく便は軟便である。そこで防風通聖散から大黄、芒硝を去って、辛夷を2加えた。本方服用後25日間で、耳内と耳後よりの排膿が綺麗に止まってしまった。血圧も最高150、最低75に降下し、一般症状が好転した。

兎に角、20年間、1日と言えども排膿の止んだ事が無かったのが、服薬20日間でピタリと止まったと言うのであるから、本方の降下によるものと推定して良いと思われる。血圧も最高140、最低80のところに落ち着いている。

処方薬味

当帰当帰 芍薬芍薬 川芎川芎
山梔子2山梔子 連翹連翹 薄荷薄荷
生姜、乾姜生姜 荊芥荊芥 防風防風
麻黄麻黄 大黄大黄 芒硝芒硝
桔梗桔梗 黄芩黄芩 石膏石膏
甘草甘草 滑石滑石  

適応疾患

高血圧、脳溢血、動脈硬化症、肥満症、脂肪心、慢性腎臓炎、糖尿病、丹毒、頭瘡、眼病、蓄膿症、酒サ鼻、皮膚病、喘息、胃腸過多症

使用目標

実証で体力が充実し腹部が膨満して力のある、いわゆる太鼓腹で重役型の体質の人に多く、便秘がちの方に用います。脈に力があり、腹部は臍を中心に充実しているけれど、なかにはあまり腹満のない方もいます。

肥満卒中体質の方に用いることが多く、食毒、水毒、その他の一切の自家中毒物が停滞して種々の病変を呈するもの、臓毒証体質を発汗、利尿、便通などによりそれぞれの毒を排出し解毒します。

皮膚の色、顏の色が強く、赤色を帯びているのは瘀血を兼ねているので、そのような場合は防風通聖散だけでなく駆瘀血剤を合わせて用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    陽明病、実証
  • 十二臓腑配当
  • 方意
    裏の実証による腹実満、便秘、肥満。熱証による充血、発疹、化膿傾向、顔面紅潮。上衝の熱証による不眠、肩背強急などの精神症状。水毒による浮腫、咳嗽、関節痛。瘀血による月経異常に対する方剤です。
  • 備考
    この証の方は特に呼吸器疾患が無いのに、咳嗽、鼻閉を訴える事があります。

補中益気湯。弁惑論

人参

改善例

性欲の減退
54歳、中間管理職の男性

2年ほど前から性欲の減退を感じるようになった。眠りが浅くて疲れやすく、下痢を繰り返し胃下垂もある。気虚と診断し、補中益気湯を処方した。服用し始めて1週間ほどでよく眠れるようになり、日中の眠気が減少。また形のある便になるなど便通も整ってきた。1ヶ月後に受診した際には久しぶりに射精し、働く意欲も出てきたという。

この男性は完ぺき主義の性格で、仕事第一のビジネスマンとして頑張ってきたが、これを機会に自分の性格やこれまでの行動パターンを見直し家族と接する時間を増やすなど無理のない生き方を模索中。

処方薬味

黄耆黄耆 白朮、蒼朮白朮 人参人参
当帰当帰 陳皮陳皮 甘草甘草
大棗大棗 生姜、乾姜乾姜 柴胡柴胡
升麻升麻    

適応疾患

虚弱者の感冒、胸膜炎、肺結核、腹膜炎、夏痩せ、病後の衰弱、神経衰弱、脱肛、子宮脱、虚労、陰萎、半身不随、多汗症、倦怠、頭痛、悪寒、自汗、身熱、微熱

使用目標

虚証で体力が衰えて元気がなく、衰弱の傾向があり、食欲不振、倦怠、頭痛、悪寒、自然と汗が出る自汗、身熱、微熱のある方に用います。ポイントとして手足がだるく、言葉に力がなく、眼の光が鈍く力がなく、熱いものを食べたがる方などに適しています。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    太陰病から少陽病、虚証
  • 十二臓腑配当
    脾、三焦
  • 方意
    著しい虚証、脾胃の虚証による疲労倦怠、顏色不良、食欲不振、息切れ。虚証による不眠、感情不安定などの精神症状。熱証による発熱、疲労
  • 備考
    補中益気湯は名前の示す通り、東洋医学的に脾胃を指す中を補い気、元気、エネルギーを益すお薬です。小柴胡湯証よりも虚証の方に用います。