抑肝散、理中湯、人参湯、竜胆瀉肝湯、六君子湯、立効散、五味立効散

漢方薬

日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。

抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、抑肝散加芍薬、抑肝散加芍薬黄連。保嬰撮要

処方薬味

抑肝散加陳皮半夏は抑肝散に陳皮と半夏を加えたものです。抑肝散加芍薬は抑肝散に芍薬を加えたものです。抑肝散加芍薬黄連は抑肝散に芍薬と黄連を加えたものです。

甘草甘草 白朮、蒼朮白朮 当帰当帰
川芎川芎 茯苓茯苓 釣藤鈎釣藤鈎
柴胡柴胡 陳皮陳皮 半夏半夏
芍薬芍薬 黄連黄連  

適応疾患

神経性衰弱症、ヒステリー、婦人更年期障害に発する神経症、中風、夜啼、疲労症、不眠症、四肢痿弱症、悪阻、小児の癇症、血の道症、チック、脳卒中後遺症、くる病、癲癇、夜の歯ぎしり、パーキンソン症候群

使用目標

不機嫌で怒りやすく、神経過敏で、せっかちになり、興奮してよく寝れない方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実。少陽病、虚実中間
  • 方意。肝気があがって興奮するものを抑える方剤です。
  • 備考。抑肝散に芍薬、黄連、陳皮、半夏を加えたりすることによって、その方の体質により合った漢方薬をお選びしています。

理中湯、人参湯。傷寒論

人参

改善例

病名は生唾、30代、女性。漢方処方応用の実際より引用

30代の女性、約9ヶ月前からしじゅう生唾が上がり食事をしたあと吐くことがある。喉や胸がつかえたり心下部がチリチリ痛んだり、就寝中に心臓が痛んだり、ドキッとしたりするという。大便は軟便で夜間尿に一度起きる。

患者は中肉中背で、一見したところそれほど体力が低下している様には見えない。腹部は肉付きが普通で心下部胸骨剣状突起の直下に抵抗があり、臍傍の左上に動悸の亢進を触れた。

この患者には口に唾液がたまることと、夜に小便に起きることの2点を目当てに人参湯を投与したところ1ヶ月足らずで諸症状はすっかりよくなった。

処方薬味

甘草甘草 白朮、蒼朮白朮 生姜生姜
人参人参    

適応疾患

急、慢性胃腸炎、胃アトニー症、胃下垂症、消化性潰瘍、胃拡張、悪阻、小児自家中毒症、弛緩性出血、肋間神経痛、疑似狭心症、胃腸型感冒、神経症、回虫症、よだれ生唾の多いもの、糖尿病、虚証の人の諸出血、冷え性

使用目標

元来が虚弱体質の人、あるいは衰弱により体力が低下した人の腹痛あるいは脇痛のある方に用います。血色が悪く、生気が乏しく、疲れやすく、多くは痩せた人に用います。腹痛は主に上腹部、胃部に起こり、時として、下痢、嘔吐、眩暈、頭重感なども訴えます。特徴として手足が冷え、尿が無色透明で水のように薄く、量も回数も多いというのがあげられます。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実。太陽病、虚証
  • 十二臓腑配当。脾
  • 方意。脾胃の虚証による食欲不振、心下痞硬、水様あるいは泥状下痢、喜唾。寒証による顏色不良、手足の冷え、腹部の冷感、腹痛、身体痛、シビレ。水毒による浮腫、頭重、眩暈、くしゃみ、咳嗽。血証による貧血、出血
  • 備考。人参湯は金匱要略には人参湯、傷寒論には理中丸と示されています。金匱要略、傷寒論ともに昔から中国に伝わるの古典本です。理中は中焦すなわち胃の働きを整えるという意味です。消化器のうち、ことに胃の機能が低下し、栄養の吸収が悪く、新陳代謝が低下した方に用いて、消化機能を助け、身体の諸機能を回復させる働きがあります。

竜胆瀉肝湯。薛氏十六種

竜胆

改善例

病名トリコモナス、37歳、女性

35歳女性。約7ヶ月前から帯下と掻痒があり、注射の効果もなく1ヶ月前から膀胱炎も併発、頻尿、血尿、排尿痛があり治らない。肩がこり、下腹痛で眠れない。

背が高く、中背の婦人で冷えはない。腹壁の緊張がよく、腹直筋臍の上で動悸が触れる。実証で瘀血と判断、排尿痛、帯下を目標に竜胆瀉肝湯を投与。1週間後、膀胱炎症状は消失。帯下も減少。やや頻尿だけが残っていた。

2ヶ月服用し、一時休止。ちょうど2ヶ月目に来院、最近帯下が再発、掻痒がひどいという。婦人科での診断がトリコモナス。トリコモナスの上にブドウ球菌が混合感染していたのだった。治療は漢方の服用だけ行った。処方は竜胆瀉肝湯加夏枯草2。

1週間後、急に具合が良くなった。その後漸次快方へ向かい、3ヵ月後トリコモナスがマイナスとなった。

処方薬味

甘草甘草 車前子車前子 澤瀉澤瀉
木通木通 地黄地黄 竜胆竜胆
山梔子山梔子 当帰当帰 黄芩黄芩

適応疾患

急性あるいは亜急性淋疾、尿道炎、膀胱炎、帯下、陰部痒痛、バルトリン腺炎、子宮内膜炎、下疳、横痃、睾丸炎、陰部湿疹、陰部潰瘍、トリコモナス、鼠径リンパ腺炎

使用目標

下腹部臓器、陰部の熱感、充血、疼痛、腫脹のある実証の方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実。少陽病、実証
  • 十二臓腑配当。肝
  • 方意。下焦の熱証、下焦の湿証による小便渋難、排尿痛、残尿感、充血、発赤、化膿傾向
  • 備考。竜胆瀉肝湯は、実証の方に用います。もし、虚証で体力が衰え、冷え性のものや貧血症のものには清心蓮子飲を用います。

六君子湯。万病回春

人参

処方薬味

甘草甘草 白朮、蒼朮白朮 生姜-乾姜生姜
人参人参 茯苓茯苓 陳皮陳皮
大棗大棗 半夏半夏  

適応疾患

急性、慢性胃腸炎、胃弱症、病後の食欲不振、嘔吐、慢性腹膜炎、悪阻、小児虚弱者の感冒、神経衰弱、胃癌、胃、止血後の十二指腸潰瘍、胃アトニー、胃下垂症、手術後の胃腸障害、慢性消耗性疾患、慢性腎炎

使用目標

体質が虚弱で、皮膚や筋肉の緊張がなく、多くはやせ方の貧血症で、いわゆる無力性体質の方で心下部、胃部が痞え、食欲不振、体重減少、下痢、胸焼け、嘔吐、胃液分泌過多などを訴える方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実。太陰病、虚証
  • 十二臓腑配当。心包、脾
  • 方意。脾胃の虚証、脾胃の水毒による胃腸虚弱、食欲不振、上腹部振水音、悪心、嘔吐
  • 備考。六君子湯は、気虚して胃腸の消化吸収機能低下し、貧血して体力衰弱したものを治す四君子湯に、胃内停水を除く二陳湯が組み合わさったものと考えることができます。そのため四君子湯証よりも水毒に対する効果が高いようです。当薬局では、卵管閉塞の症状の方に多用されています。本方の合うタイプの人は甘み、砂糖を好む傾向が多いのですが、甘みと果物を制限するほうが治療効果が良いようです。

立効散、五味立効散。衆方規矩

升麻

処方薬味

細辛細辛 升麻升麻 甘草甘草
防風防風 竜胆竜胆  

適応疾患

抜歯後の疼痛、歯痛

使用目標

歯痛、抜歯後の疼痛が甚だしく一般の鎮痛剤も効果がないときに用いて速効があります。