- 2016年6月20日
補中冶湿湯、麻黄加朮湯、麻黄加苓朮湯、麻黄附子細辛湯、麻黄湯、麻杏甘石湯
日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、……

日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。
軽度の神経症、男性。漢方処方応用のコツより引用
数年前から下肢がだるく、疲れやすく、仕事の能率が上がらないという。やや小柄な体格だが、肉付きは中くらいで病院ではどこも悪くないと言われているとおり特別な所見はない。腹診すると前述のような腹証をしていたので、四逆散を投与した。
一ヶ月も経った頃、身体が軽く感じ、下肢のだるさは意識しなくなり疲れなくなった。その後、食事のせいか、心下部が痛んだ時は柴胡桂枝湯に変えて良くなった。その後は季節の変わり目などにやや体調が悪くなることもあるが、四逆散を飲んでいれば以前ほど苦痛でないと言って、一年以上服薬を続けている。
蓄膿症、男性。漢方処方応用の実際より引用
2年程前から鼻が悪く、最近2、3ヶ月食べ物の匂いが分からなくなったという。中肉中背で体力中等とみられた。はじめ葛根湯加辛夷川芎を1週間与えたが全然変化がみられなかった。
そこで腹直筋の攣急と季肋下にわずかながら抵抗を認めたので四逆散加辛夷川芎に転方した。これを飲むと1週間後に鼻閉が少し良いといってきた。そこで同湯を続けて服用させたところ、2ヶ月ほど経ったある日、喜んでやってきた「昨日、昼食にラーメンを食べたら、その匂いがよく分かった」というのである。その後1ヶ月ばかり服薬してやめた。
柴胡 | 枳実 | 甘草 |
芍薬 |
胆嚢炎、胆石症、胃炎、胃潰瘍、鼻炎、神経症、血の道症、感冒、流感、肺炎、急性吐瀉病、疫痢、自家中毒、虫垂炎

人参 | ![]() 白朮 | 茯苓 |
大棗 | 生姜 | 甘草 |
胃腸虚弱症、胃下垂症、胃アトニー症、胃カタル、貧血、下痢症、虚証の出血、全身衰弱、痔、夜尿症、低タンパク血症、消化不良、疲労倦怠
胃腸の消化機能が酷く衰え、その結果いろいろな症状を呈する方に用います。この時、食欲がなくて少しものを食べるとすぐ胃が張って苦しくなり、顏色が青く、やせて体重が少しも増えず、手足がだるく疲れやすく生気に乏しく、言語が力がありません。時には悪心、嘔吐、下痢、腹鳴などがあり、脈が小さく、あるいは細くて弱かったり。脈が、大きくて力がある方には用いません。

当帰 | 川芎 | 芍薬 |
地黄 |
月経異常、白帯下、子宮出血、諸貧血症
女性に多く用いられ、諸種の出血や貧血の徴候があって皮膚の枯燥の傾向があり、瘀血、生理不順、自律神経失調症などの症状がある方に用います。肝腎脾の血虚による発熱、往来寒熱、あるいは夕方の発熱、煩躁、不眠症、胸が張り脇腹が痛むなどの症状がある方に用います。

牡蠣 | 川芎 | 当帰 |
芍薬 | 紫根 | 大黄 |
忍冬 | 黄耆 | 升麻 |
甘草 |
乳癌、皮膚炎、悪性リンパ腫、黒色肉腫、原因不明の腹部腫瘍、扁平コンジローム
頑固な慢性病で虚証に陥り、貧血、疲労の傾向がある方に用います。

八物降下湯も準ずる
70歳、女性。漢方処方応用の実際より引用
半年ほど前に虫垂炎で東京のある有名な大学へ入院して手術を受けた。手術の傷は、1週間ばかりですっかり良くなったので退院しようとした矢先、片方の大腿がひどく腫れて太い丸太のようになってしまった。
病院ではいろいろ検査したが、はっきり診断がつかず、なぜかそのまま退院させられたという。患者は帰宅後、方々の医師を呼んで診てもらったが診断もつかず、足も良くならなかった。あるとき近所の婦人科医にみてもらったら、始めて閉塞性静脈炎と診断されたそうだ。患者は大変喜んで「大学病院でも分からない病気の診断をつけてくれた」といってその医師を名医だと来る人ごとに話したという。ところが病気は少しもよくならず数ヶ月間の間、寝たきりの毎日を送っていた。
こういった状況で私が診察を頼まれた。患者は、痩せて顏色が悪く、脈は弱く、腹部はへこんで、いかにも虚状を示していた。ところが最高血圧は190、最低110と亢進していた。現代医学的にも漢方的にも特徴がないので、初めは如何なる処方がよいかと迷った。結局虚証の血圧亢進に対して七物降下湯を用いた。その結果1ヶ月も経たないうちに血圧が下がり最高140、最低90程度となり、そのうえ、あれほど苦しんだ足がすっかり良くなって全く正常に復した。その人が私を名医だと言ったとは聞いていないが。
黄柏 | 当帰 | 川芎 |
芍薬 | 地黄 | 黄耆 |
![]() | 釣藤鈎![]() |
本態性高血圧症、腎高血圧、慢性腎炎、動脈硬化症
虚証ながら、胃腸の働きが良い方の血圧亢進に用います。すなわち病気が長引いて体力が低下している方、あるいは元来体力が虚弱な人で血圧が高く、息切れ、頭痛などがある方、あるいは腎不全の傾向があって、尿淡白を認める方などに用います。四物湯を服用して、食欲が減少したり、腹痛や下痢などを起こす胃腸虚弱な人には用いられません。
薬剤師。長崎大学薬学部卒業、日本薬剤師会会員、日本東洋医学会会員、東亜医学会会員、伝統漢方研究会会員。20代前半に、現代薬理学から漢方医学に入り40年以上が過ぎました。色々な流派の先生に師事し、最後は故入江正先生に師事し臨床医学を継承しています。