日本漢方の古方派を中心とした漢方薬・処方をご紹介します。

一般の方から専門家まで馴染めるよう、症例・処方薬味・適応疾患・使用目標・漢方の証・方意をご紹介。

柴胡清肝湯・柴胡清肝散(サイコセイカントウ・サイコセイカンサン)-寿世保元-

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-栝楼仁・栝楼実栝楼仁 生薬-桔梗桔梗
生薬-芍薬芍薬 生薬-牛蒡・牛蒡子牛蒡子 生薬-薄荷薄荷
生薬-連翹連翹 生薬-黄連黄連 生薬-柴胡柴胡
生薬-黄芩黄芩 生薬-地黄地黄 生薬-川芎川芎
生薬-黄柏黄柏 生薬-山査子山査子 生薬-当帰当帰

適応疾患

小児腺病体質の改善薬、肺門リンパ腺腫、頸部リンパ腺腫、慢性扁桃炎、咽喉炎、アデノイド、皮膚病、微熱、麻疹後の不調和、疳症、肋膜炎、神経症、頭部諸瘡

使用目標

頸部リンパ腺炎で発熱頭痛し、なかなか化膿しない方に用います。肝火の頭痛、特に偏頭痛に効果を示します。こういう頭痛は上逆強く、耳のほうへの痛みが連なるものが多いです。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、虚実中間
  • 十二臓腑配当;肝
  • 方意;上焦の熱証による上腹部知覚過敏・皮膚浅黒色・上焦の化膿傾向。上焦の熱証による感情不安定・多怒などの精神症状。
  • 備考;柴胡清肝湯証の小児が成長すると荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)証になることが少なくないです。柴胡清肝湯は上焦の熱証を治し、竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)は下焦の熱証を治します。

柴胡疎肝湯・柴胡疎肝散(サイコソカントウ・サイコソカンサン)-一貫堂-をご紹介

生薬-柴胡

症例

右鎖骨腫瘍/女性-漢方処方・応用の実際より引用-

患者は明治20年生まれの老女性、昭和37年の秋頃、往診を頼まれて診に行った。右の鎖骨に腫瘍ができて、1年前に手術をしたが再発して大きくなったという。痛みがひどくて痛み止めにグレランなどを始終に飲んでいるので胃が悪くなり食欲がなくて痩せる一方でもう駄目だと自分で感じていたという。

近所の医者にかかって痛み止めの注射を局所にされたところ、よけい痛みが酷くなったという。身体は大きい方だが大分痩せていて栄養が衰えている。しかし、とりたてた処見もない。そこで半夏瀉心湯エキスに山豆根末を加えて与えたところすっかり元気になった。

そのうちもう一度手術するといってある大病院に入院したところ腫瘍が鎖骨の処で取ることができない。放っておいても死にはしないからといわれて帰されてしまった。

痛みはまた激しくなったが、その治療もしてくれなかったので、家へ帰ってからは昼も夜も苦しんでいた。

再び私が頼まれて往診した時には、家の中でようやく起きて何かしていたが、痛みが非常に酷いようだった。また山豆根末と半夏瀉心湯エキスを与えたが少しも効かない。ただ胃腸の具合が少し良くなった。

そこで十全大補湯に加工附子末と山豆根末を加えて与えたが、身体の調子はいいが、痛みはいっこうに止まらないという。よく聞いてみると胸の上の方の痛みでそれが背中へ抜けて痛むという。

前の薬は5月から8月まで用いたが効果がないので、ここで思いきって柴胡疎肝湯を5日分与えてみた。すると2日目に痛みがパッタリ取れてしまったといって、喜んでやってきた。そして漢方薬はこんなに早く効くんですかと驚いていた。

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-山梔子山梔子 生薬-香附子香附子
生薬-芍薬芍薬 生薬-橘皮橘皮 生薬-川芎川芎
生薬-陳皮陳皮 生薬-生姜生姜 生薬-柴胡柴胡

適応疾患

肋間神経痛、腫瘍などによる痛み、脾攣曲症

使用目標

四逆散(シギャクサン)の症で、肝気が胸脇に詰まり痛みを覚え、突き上がる感じがして頭痛や肩背がこわばる方に用います。胸や側胸部の痛みで、現代医学的に処置に困るような場合にも用います。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、実証
  • 方意;胸脇の熱証:胸脇苦満・口苦・肩背強急。気滞・胸脇の熱証:手足の冷え、手掌汗、神経過敏などの精神症。脾胃の熱証:腹中痛。肝気の上昇:肝気が胸脇がつまる、頭痛や肩背がこわばる。
  • 備考;柴胡疎肝湯は四逆散の加味方です。柴胡疎肝散は柴胡疎肝湯に山梔子と乾姜を加えたものです。柴胡疎肝湯より古血の症状が強いものに用います。

柴芍六君子湯(サイシャクリックンシトウ)-本朝経験-をご紹介

生薬-白朮・蒼朮

症例

48歳・男性-漢方処方・応用の実際より引用-

約1年前から下痢が続いていた。発病当初、レントゲン検査その他によって十二指腸潰瘍と診断されて治療を受けていた。その後、背中に鈍痛がおき、かつ心下部が張って食欲が全くなくなってしまった。最近、ある国立病院では急性膵臓炎と診断されたということであった。

体格中等、肉付きや痩せ型、冷え症で顏色が蒼くてさえない。血圧142~90mmg、理学的診断上著変を認めない。脈はやや小にして緩、あまり特徴がない。腹診すると腹壁薄く、胸骨剣状突起の直ぐ下に抵抗と圧痛があり心下部に浸水音を認める。そして両側の腹直筋が拘攣し、ことに右側腹直筋の上部で抵抗が著しくかつ圧痛を認めた。また左側腹直筋は臍の近くに圧痛がある。背中では第8胸椎の左側に圧痛点があり、両側の志室にも圧痛が著名であった。

そこで漢方を考えてみた。胸脇苦満を目当てにすれば柴胡桂枝湯が良さそうである。しかし心下部の浸水音によれば六君子湯が使いたいような腹である。いずれをとるか考えてみると患者は柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)証より虚して体力が低下しているが、六君子湯にしては胸脇苦満と腹直筋の拘攣が余計である。結局両方を兼ねたような柴芍六君子湯を与えることにした。

柴芍六君子湯を1日服用しただけで背部の鈍痛が明らかに軽快し、1週間後には痛みがほとんど消失し下痢が治った。3週間飲んで患者は一時休薬したが、約2ヵ月後に上腹部と夜間の頻尿を訴えて再び来院した。腹診するとまた、心下部の浸水音が出ていた。そこで人参湯を与えると、1週間で症状は回復した。その後再び、柴芍六君子湯の服用を続けさせると、3ヶ月ばかりたった頃には体重も増し、これまでに無かったほど元気になった。

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-白朮・蒼朮白朮 生薬-生姜生姜
生薬-芍薬芍薬 中国39-生薬-茯苓茯苓 生薬-陳皮陳皮
中国42-生薬-大棗大棗 生薬-人参人参 生薬-柴胡柴胡
生薬-半夏半夏     

適応疾患

胃炎、胃下垂症、胃アトニー、慢性肝炎、慢性胆嚢炎、胆嚢ディスキネジー、慢性膵炎、神経症

使用目標

体力の比較的低下した人が腹力がやや弱く、心下痞硬あるいは心下部腹水音を認め、かつ胸脇苦満および軽度の腹直筋緊張を伴う場合で、胃症状や肝機能症状を呈している方に用います。

漢方の証・方意

  • 十二臓腑配当;脾
  • 備考;六君子湯(リックンシトウ)に柴胡・芍薬を加えます。

柴朴湯(サイボクトウ)-経験方-をご紹介

生薬-厚朴

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-厚朴厚朴 生薬-生姜生姜
生薬-半夏半夏 中国39-生薬-茯苓茯苓 生薬-蘇葉蘇葉
中国42-生薬-大棗大棗 生薬-人参人参 生薬-柴胡柴胡
生薬-黄芩黄芩    

適応疾患

気管支炎、気管支喘息、百日咳、ノイローゼ、不安神経症、ヒステリー

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、虚実中間よりやや虚証
  • 十二臓腑配当;胆・大腸・小腸
  • 方意;胸脇の熱証:口苦、口粘、胸脇苦満。上焦の気滞・気滞による精神症状:咽中炙臠、感情不安定、疲労倦怠。
  • 備考;柴朴湯は小柴胡湯(ショウサイコトウ)と 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)を合方したものです。

柴苓湯(サイレイトウ)-得效方-をご紹介

中国39-生薬-茯苓

症例

慢性腎炎/男性32歳-漢方処方・応用の実際より引用-

1年前、腎炎になり8ヶ月某病院に入院したが、尿のタンパクと赤血球がなくならず時々吐き気が起こるという。肩が凝って時々腰背部が痛むという。

患者は中肉中背で顏色が蒼白く色つやが悪い。脈は沈んで弱い。腹部は全体の緊張がやや悪く右の季肋下に軽い抵抗がある。また右の腹直筋は肋骨の直下から臍下まで攣急していた。

この患者には五苓散を用いたいと思ったが、胸脇苦満があるので小柴胡湯と五苓散の合方である柴苓湯を投与した。またこれに腎炎に良いといわれる連銭草を加えた。4週間後、全身の調子がよくなり、尿のタンパクが痕跡程度に減少した。

しかしそれから2週間後には再び(+)となった。更に2週間後(±)になった。以来尿タンパクは(±)~痕跡程度に消長し、5ヶ月後には、いったん(-)となった。しかし、その後は再び(±)あるいは痕跡、あるいは(-)と消長したが、約1年後、ようやく陰性となった。全身状態もまったく健康だといって廃薬した。

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-人参人参 生薬-生姜生姜
生薬-半夏半夏 中国39-生薬-茯苓茯苓 生薬-桂皮桂皮
中国42-生薬-大棗大棗 生薬-白朮・蒼朮白朮 生薬-柴胡柴胡
生薬-黄芩黄芩 生薬-澤瀉澤瀉 生薬-猪苓猪苓

適応疾患

吐き気、食欲不振、喉の渇き、排尿が少ない等の諸症、水瀉性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、浮腫み

使用目標

喉の渇きがあって尿利が減少する場合で、或いは嘔吐、下痢、頭痛、腹痛、浮腫等のいずれかを伴う方に用います。この時に熱が出る急性病もあり、熱のない慢性病もあります。暑気あたりで熱が出て頭痛がしたり、身体が痛んだりして喉が渇いて水を飲みたがる方にも用います。

心悸亢進や腹部の動脉の拍数が亢進し、よだれを吐いたり眩暈がする方で痩せた人に多く用いられます。これに加え胸脇苦満がある方が多いです。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、慢性腎炎
  • 十二臓腑配当;胆
  • 方意;小柴胡湯(ショウサイコトウ)証の胸脇の熱証による胸脇苦満・口苦・口粘。五苓散(ゴレイサン)証の水証による煩渇・尿不利・下痢傾向。
  • 備考;小柴胡湯と五苓散の合方です。

参考文献・出典

  1. 漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 著
  2. 漢方処方 応用の実際 山田光胤 著
  3. 漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 著
  4. 漢方治療百話第1~3集 矢数道明 著
  5. 腹證奇覧 稲葉克文礼 和久田寅叔虎 著
  6. 漢方処方応用のコツ 山田光胤 著
  7. 薬局製剤 漢方194方の使い方 埴岡博・滝野行亮 共著
  8. 勿誤薬室方函口訣 長谷川弥人 著
  9. 漢方診療30年 大塚敬節 著
  10. 皇漢医学 湯本求真 著
  11. 黙堂柴田良治処方集 柴田良治 著
  12. 類聚方広義 吉益東洞 著

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