肋間神経痛

身体の痛み

肋間神経とは

肋間神経痛は、背中から出て胸腹部に分布する末梢神経の痛みです。

肋間とは、肋骨と肋骨の間という意味です。背中の胸髄から出た12対の胸神経の前肢です。上部7対は肋骨に沿い胸骨に向かい、下部5対は前下方に向かって走行し腹部に分布します。ここに痛みが起こるのが肋間神経痛です。

肋間神経痛は、神経そのものを痛めて起こる場合と、脊髄を痛めてその影響から起こる場合もあります。背骨のゆがみ、不自然な姿勢、骨折や亀裂、帯状疱疹やヘルペス、その他内臓疾患など原因は様々です。

肋間神経痛の現代医学による治療

現代医学による肋間神経痛の治療法をご紹介していきます。それは他の痛みと同様、基本的に対処療法が主となり、根本的な解結には至っていないのが現状です。

安静

肋間神経痛などでも、痛みが激しい時は少しユッタリとした服を着て無理をせず過ごすのが大切です。

薬物療法

肋間神経痛は、薬物療法が主流となります。しかし、これらは対処療法に留まっています。基本的には消炎鎮痛剤を用います。他には湿布剤や抗うつ薬などがあります。

物理療法

肋間神経痛が以上の方法で効果があまり得られない場合、ブロック注射やレーザー治療、低周波治療などが多く行われています。しかし、こちらも根本治療には至っていません。

肋間神経痛の漢方治療

肋間神経痛は、漢方では気毒、水毒の治療をすると改善する方が非常に多いです。また漢方治療をすると再発もしにくくなります。

漢方治療をすると、一般的に効果が早く現れ再発しにくい疾患の一つです。罹患期間により治療期間が長い方もいらっしゃいますが、肋間神経痛は漢方の得意分野の一つです。

レントゲンでの異常が無く、様々な治療をしたが改善しない肋間神経痛の患者さん。糸練功で診ると胸椎に異常があり、胸椎の治療をすると速やかに改善する患者さんもいます。レントゲンで認識出来ない胸椎の異常がある時もあります。

太陽堂漢薬局では糸練功による音素診という診断方法があります。胸椎のどこに問題があるのか調べる事が出来ます。ご相談ください。

一般的な肋間神経痛の漢方薬をご紹介します

小陥胸湯

虚証で水毒がある人に用います。心下痞硬と言う鳩尾に軽い痞えのある方が多いです。漢方では結胸の薬方になります。結胸は肋骨や胸の部分の痛みや詰まりの原因となり、胸痛に効果があります。

小陥胸湯は黄連、半夏、栝楼仁から構成されています。処方中の黄連には消炎作用があり、炎症や精神不安に用いられます。半夏には水毒を除く働きがあります。また栝楼仁は鎮静、鎮痛の効果があります。

肋間神経痛の繁用薬方です。

柴陥湯

小陥胸湯と小柴胡湯の合方です。

小陥胸湯よりやや実証で胸の詰まり感等は更に強くなります。小陥胸湯と同様に脇痛や胸水に使用します。

柴胡桂枝湯

小柴胡湯と桂枝湯の合方で、小柴胡湯より表証に用います。寄って肋間神経痛等の脇痛や腹痛、筋肉の痛み等に使用します。

柴胡桂枝湯に芍薬を追加することにより、痛みに対する効果が増し使用することが多いです。またスポーツ障害等の筋肉や神経の痛みにも使用されます。柴胡桂枝湯加芍薬も繁用薬です。

エキス剤では小柴胡湯と桂枝加芍薬湯を合方すれば、柴胡桂枝湯加芍薬と同じ方意になります。

芍薬甘草湯加附子

肋間神経痛の痛みが激しい時に使用します。

痛みと言えば、芍薬甘草湯です。芍薬と甘草の2味で構成され、急迫性の筋肉の攣急や神経痛に使用します。

永く罹患した痛みは陰証と成っていることがあります。その場合には附子又は加工附子を加えると更に効果があります。

清湿化痰湯

水毒が原因の肋間神経痛に使用します。本方の目標は「背が1ヵ所、寒冷を覚える」となっていますが、それに拘らず痛みがあちこちに移動するものに用います。

水毒が原因の全身の痛みに使用する処方です。筋肉痛、関節痛、胸背の痛み、咳による胸の痛みなど、或いは運動麻痺や知覚麻痺にも使用されます。

処方中に陳皮、半夏、朮、茯苓があります。胃内停水が原因の水毒です。水ぶくれ、水太り型の人の痛み、肋間神経痛に使用されます。

人参湯

虚弱体質の人、或いは衰弱により体力が低下した人の腹痛、胸痛に用いる処方です。血色が悪く生気が乏しく、痩せた人が多いです。冷えがあるため尿量が多く回数も多いです。尿色も無色透明の事が多いタイプの肋間神経痛に用います。

人参湯の腹証には2種類あります。一つは軟弱無力です。もう一つは腹壁がベニヤ板の様に薄く硬い場合です。このベニヤ板の様に硬い腹証の胸痛、肋間神経痛に人参湯を用います。

柴胡疎肝湯

胸部に炎症や腫瘍があり、それに併発する肋間神経痛に用います。柴胡疎肝湯は四逆散の変方ですが、四逆散と同様に腹部は全体的にに緊張しています。

四逆散の柴胡、枳実、芍薬、甘草に香附子、青皮を加える事により気塊を取る枳実だけではなく発表作用も加わります。浅田方函口訣には「四逆散の加味方ゆえ、胸痛だけでなく、四逆散の証で肝気が胸脇につまり、痛みを覚え或いは衝逆し頭痛や肩背が強張る物」と記載されています。