
日本漢方の古方派を中心とした漢方薬・処方をご紹介します。
一般の方から専門家まで馴染めるよう、治療歴・処方薬味・適応疾患・使用目標・漢方の証・方意をご紹介。
香芎湯(コウキュウトウ)-儒門-
処方薬味
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
適応疾患
婦人の頭痛、偏頭痛
漢方の証・方意
- 病位・虚実;実証
香蘇散(コウソサン)-和剤局方-をご紹介
治療歴
風邪/中年女性 -漢方処方・応用のコツより引用
ある中年女性。胃が弱くて食事がよく摂れず、太りたいけれども太れず、体力が無くてすぐ疲れ、家事も満足に出来ないと言って来店。痩せて顏色が悪く、手足が冷たく、腹部に胃内停水を認めた。この患者に四君子湯 加附子を用いて次第に元気になった。
すると初秋の頃、「風邪を引いたから何か薬を下さい」と使いの人をよこした。そこで、香蘇散を3日分ほど持たせて帰した。数日後、患者自身で来院し「お陰で、あの薬を飲んだら2日ほどで風邪が治りました。いつもは新薬を飲んでも治らず、かえって胃を悪くして、いつまでも長引くのですが、今回はすぐ気持ちよくなりました。」と喜んで報告した。
その少し後、この患者は何年ぶりかで温泉へ行く気になったが、風邪を引くと困るからと言って、四君子湯と香蘇散をたくさん持って出かけていった。後で聞いたところ「山の温泉で案の定風邪を引いたけれども、香蘇散を飲んだら、僅かに汗が出てすぐに治ったので、安心して長居してしまった」とのことだった。
処方薬味
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
適応疾患
感冒の軽症、胃腸型の流行性感冒、魚中毒、蕁麻疹 、月経困難症 、神経衰弱、 ヒステリー、腹痛
使用目標
感冒などの熱が出る時。胃腸虚弱な人の風邪、発熱の初期、葛根湯や 麻黄湯では強すぎで、桂枝湯では胸にもたれるという人が、頭重、頭痛、悪寒、食欲不振を訴えて、熱が出かかったり、風邪気味だという時に用います。
太陽病にあたる時期です。どちらかというと虚証の方が多いのですが、平素虚証の患者で、日ごろ虚弱で神経質、気分が憂うつで胃が弱く、食欲不振、精神不安、頭痛がある方に用いるようです。
また、魚肉中毒による発疹の場合にも用いられます。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;太陰病 虚実中間から虚証
- 十二臓腑配当;心・肺・腎
- 方意;気滞による精神症状としての抑うつ気分・感情不安定などや、脾胃の虚証としての食欲不振・心下痞・胃腸虚弱。表の寒証としての頭痛・悪寒・発熱
- 備考;胃の弱い方に用いる薬方です。
牛黄清心元(ゴオウセイシンゲン)-東医宝鑑-をご紹介
処方薬味
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
適応疾患
動悸 、手足の痺れ、肩凝り、逆上せ、眩暈 、頭重感、高血圧異常 、脳血管障害 、癲癇 、精神疲労、耳鳴り
使用目標
昔から血液循環器系用薬として使われてきた薬です。血圧異常や精神・肉体疲労、脳卒中後遺症予防などに広く使われています。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;陽明病、大量。少陽病、中量。実証~やや虚証
- 十二臓腑配当;肝・心
- 方意;疎肝剤、駆オ血剤、人参剤などと似た働きをします。
- 備考;25種の生薬の粉末を蜂蜜で練って金箔で包んだ丸剤です。
牛車腎気丸・加味腎気円(ゴシャジンキガン・カミジンキエン)-済生方-をご紹介
治療歴
53歳男性。-漢方処方・応用の実際より引用
48歳頃から排尿にかかる時間が長くなってきた。53歳の頃には残尿感も感じるようになり、夜トイレに起きる回数が3回以上と多くなった。
泌尿器科では前立腺肥大と診断される。夜間頻尿でぐっすり眠れない為か疲れやすく性欲も減退している。手足の痺れもあり、夕方になると足が浮腫む。
胃腸は丈夫なので牛車腎気丸を処方。1週間ほど服用したところ、夜間排尿が1回に減少。この結果、夜ぐっすり眠れるようになり日中元気に仕事に取り組めるようになった。頻尿が改善しても前立腺肥大そのものが解消したわけではないので漢方の服用を続けながら前立腺の状態に注意していくことにした。
処方薬味
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
適応疾患
下肢痛、腰痛、痺れ、老人のかすみ目、排尿困難、浮腫み、頻尿
使用目標
下肢の痛み、腰痛、下肢の浮腫などに重点が置かれています。老人の腰痛、特に男性に良いようです。尿利の減少、蛋白尿に重点を置いて若い女性に本方を使い、扁桃腺炎後の腎炎、産後の腎炎にも応用できます。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;太陰病 虚証
- 十二臓腑配当;腎
- 方意;腎の虚証による尿不利、蛋白尿、燥証による口渇。兎糞状便秘、水毒による下肢の浮腫、手足の冷え。気の上衝による頭痛、逆上せ、心悸亢進、息切れ。血証による出血貧血
- 備考;八味丸(ハチミガン) に牛膝 、車前子 を加えたものです。症状として八味丸証には、口渇、尿不利、頻尿があるが、牛車腎気丸証は尿不利のみです(原文には『腎虚で腰重く脚が腫れ小便不利するのを治す』とあります)。附子の適応症は「陰証であること」。体型は細くて痩せているか、反対に水太りのブヨブヨしている人。舌は濡れているか、少なくとも舌苔はないことを確認する。
杞菊地黄丸(コギクジオウガン)-医級-をご紹介
処方薬味
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
適応疾患
中心性網膜炎、視神経萎縮、球後視神経炎、白内障
使用目標
目がかすむ、まぶしい、目の乾燥感や痛み、視力減退、頭痛 、頭のふらつきなどの症状が顕著に見られる方に用います。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;太陰病 虚証
- 十二臓腑配当;腎・肝
- 備考;六味丸(ロクミガン)に菊花 、枸杞子 を加えたものです。
参考文献・出典
- 漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 著
- 漢方処方 応用の実際 山田光胤 著
- 漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 著
- 漢方治療百話第1~3集 矢数道明 著
- 腹證奇覧 稲葉克文礼 和久田寅叔虎 著
- 漢方処方応用のコツ 山田光胤 著
- 薬局製剤 漢方194方の使い方 埴岡博・滝野行亮 共著
- 勿誤薬室方函口訣 長谷川弥人 著
- 漢方診療30年 大塚敬節 著
- 皇漢医学 湯本求真 著
- 黙堂柴田良治処方集 柴田良治 著
- 類聚方広義 吉益東洞 著