じんましんについて
じんましんは、皮膚の血管運動神経の障害です。突然に限局性の赤い浮腫が出来、痒みが激しくなります。そして自然に数分から数時間で時間の経過と共に消失していきます。消失すると痕跡も残りません。
しかし繰り返したり、症状が酷い場合は漢方治療の適用となります。
原因
じんましんの原因は、外因として蚤や蚊、ダニ等の虫の刺し傷、色々な植物との接触、肌着、洗剤、薬剤、花粉やPN2.5、ハウスダスト、急激な気温差、機械的な皮膚への刺激など様々です。
また内因として、口から入れた腐敗したタンパク質や脂質、食物中のアク、色素等。海老、蟹、貝類、マグロ、サバ等の海産物。肉類等のタンパク質。竹の子、キノコやアクの強い食物等でもアレルゲンとして原因となります。
胃腸障害、内臓疾患などが原因の場合もあります。神経質な人の神経性蕁麻疹も有ります。また免疫に何らかの問題があるのではと思われる場合もあります。
実際の原因は特定出来ることもあれば、西洋医学的に原因が分からない事も多いです。一般的に、アレルギー性と非アレルギー性の神経性等があります。
その他に、アレルギーが出ている時だけ悪化する仮性アレルゲンが有ります。様々な成分と種類が有ります。特に秋から春まではナス科、春から秋まではウリ科に注意します。太陽堂漢薬局では患者さん一人一人の仮性アレルゲンも見つけ食養生を指導します。
じんましんの発生
発赤と腫脹、痒みのじんましんは皮膚の血管運動神経障害です。発生する仕組みを見て行きましょう。
- 上記原因の抗原や外因又は内因の刺激が身体に加わります。
- 刺激により皮膚の真皮にある肥満細胞であるマスト細胞からヒスタミンが放出されます。
- このヒスタミンにより、毛細血管が拡張します。拡張した毛細血管が表皮から透けて見え、じんましんの赤み、紅班となります。
- 同時に血管拡張により血管壁に隙間が生じ、血管の透過性が高まります。血管壁の隙間から血漿が血管外に漏れ、腫れ、浮腫ができます。
- この赤み、紅班と腫れ、浮腫がじんましんです。通常は数十分から数時間で自然に消失します。
- この過程により赤く腫れた痒い病状になります。痒いからと掻くと、また新たな刺激が生まれ、ヒスタミンが更に遊離され症状は更に酷くなり悪循環となります。
じんましんの種類
じんましんには様々な種類があります。急性、慢性、コリン性、日光性、寒冷、接触性、人工等などです。症状の出方や原因によって分類されます。
急性じんましん
食べ物や室内環境のダニ、カビ。外部からの刺激によるアレルギーが原因の場合が多く、1ヶ月以内に消失する場合も多いです。
慢性じんましん
数ヶ月から数年に亘り繰り返されます。アレルギーの他にストレスなども原因として考えられますが、西洋医学的に原因が分からない場合が多いです。
コリン性じんましん
お風呂や運動、ストレスなどで発汗し、交換神経でアセチルコリンが分泌されます。発汗刺激により生じる細かい粟粒のような膨疹とチクチクしたような痛みを伴う場合が多いです。
人工じんましん
機械的刺激で生じます。指や鉛筆でこすったりすると発生します。地図状蕁麻疹とも言われます。女性の方が腕にハンドバックを提げていると、腕にハンドバックの形で出来たり、また下着等での圧迫部分にも生じます。
日光性
日光が当たった部分に発生します。食べ物やお薬が原因の場合もあります。緑の野菜が熱により茶色く変色した色素なども原因の一つと言われています。
人工じんましんや日光性と同様に機械的刺激として、寒冷や冷たい水などに触れて起きる寒冷性。逆に熱い温度刺激により生じる温熱性等があります。
接触性
何らかのアレルギーを有する物に触れ、起きます。PM2.5、ハゼ負け、草負け等もこれらに属します。牛乳が触れた部分に出来る牛乳アレルギーもあります。
血管性浮腫
まぶたや口唇等にじんましんが出来ると、浮腫が真皮上層から真皮下層まで及びます。そのため境界線がハッキリしない硬い浮腫みとして腫れてしまいます。
アレルギー反応が目や口中、喉、気道などの粘膜で発生すると、血管性浮腫は硬い浮腫となります。気道などで発生すると呼吸ができずに命の危険に晒される事もあります。
東洋医学では
漢方の様々な診断基準の中でじんましんは、全ての病態を陰陽の強さにより、6病位に分ける三陰三陽を用いると鑑別しやすい皮膚病です。
三陰三陽
出現箇所が上焦、鳩尾から上に多い事、発生学的な内胚葉ではなく外胚葉部分に症状が出る事を考えれば、太陽病位から少陽病位が多い疾患と考えられます。
病位を体表と身体の深い部分、裏で分ける分類の表裏では、表から半表半裏になります。
虚実
また目で見る診断の望診により虚実の判断をします。実証は赤味が強く隆起が高く大きいです。逆に虚証は赤味が弱く隆起が低く小さい傾向にあります。
じんましんの場合、この三陰三陽と虚実で患者さんごとの処方が決定されます。
太陽堂漢薬局では、糸練功にてアレルギーの反応穴を見つけています。足の少陽胆経、頷厭から数センチの箇所です。専門家の方は臨床に応用下さい。
気血水と柴胡剤
じんましんは水毒の薬味や柴胡剤で改善する方が多いです。東洋医学的には水毒が原因の場合が多いと考えられます。血毒の場合でも水毒が原因として混在していることが多いです。しかし日光性やコリン性では、血毒との関係が強く出てきます。
慢性化すると一進一退を繰り返し、苦しんでいる患者さんが多い疾患です。煎じ薬で治療すると比較的に早く改善する方が大部分ですが、時には頑強に東洋医学の治療に抵抗し手こずる場合もあります。
食中毒性
食中毒性の場合、香蘇散や橘皮大黄芒硝湯で良くなる人が多いです。また食中毒を引き金にアレルギー体質になった時、数年後でも香蘇散や橘皮大黄芒硝湯で効果があります。
漢方でのじんましんの瞑眩反応
瞑眩反応と思われる改善例がありますので、ご紹介します。漢方の臨床11巻10号に掲載しています。
患者は28歳の太った婦人。本年3月上旬から兎の毛を使って玩具を作る工場にアルバイトに通いだしてから、間もなく身体中にじんましんが発生するようになり、掻痒が甚だしくて苦しい。某大学皮膚科や、近所の専門医の治療を受けているが、全く効がない。
起床時口中が粘つき、便秘の傾向がある。脈は弦。舌には乾燥した白黄苔が中等度。腹は膨満していて、腹力は中等度よりやや実。心下部と右肋骨弓下とに中等度の抵抗と圧痛とがある。以上の自覚症状から大柴胡湯証と診断。
1週間後に来院して告げるには「2日目に全身に今までになく酷いじんましんが出て、すごく苦しみました。きっと薬が効く前兆だろうと思って、続けて飲んだところ、翌日からは綺麗さっぱりと出なくなりました。おかげで楽になりました」と。
対応する漢方処方
伝統医学である日本漢方古方派を中心とした代表的な処方をご紹介します。
香蘇散
海産物でじんましんが生じた時にファーストチョイスとして選ばれる処方です。魚類以外にも蟹や貝類、海老、その他の魚介類全般です。
太陽病位の虚証の漢方薬です。薬味中の蘇葉は紫蘇です。青紫蘇は雑種が多く効果が薄く、薬用では紫を使います。また紫蘇の中の精油成分が重要ですので、エキス剤では十分な効果は期待できません。煎じ薬か、2000年前からの伝統製法による散剤に効果があります。
魚介類で食中毒を起こした経験のある人の慢性じんましんにも効果があります。同薬方の合う方は、精神的に沈みがちで胃腸の弱いタイプの方が多いです。
柴胡桂枝湯
上半身に汗をかき易く、漢方では少陽病や太陽少陽の合病に柴胡桂枝湯は使用されます。ミネラルを含む薬味と同時服用すると効果が高くなることがあります。
温清飲
少陽の虚実中間証で、痒みが強く、皮膚は乾燥し荒れ易い人、色黒な方が多いです。温清飲は漢方では解毒証体質に使用します。血毒になります。
升麻葛根湯
升麻葛根湯は、頭痛を伴ったり、急性期には悪寒や発熱を伴ったりする方に合います。太陽病から少陽病位に用います。
桂麻三兄弟
桂麻各半湯、桂枝二越婢一湯、桂枝二麻黄一湯の3種類の漢方薬を桂麻三兄弟と言います。
身体の内側に熱が籠った病態の温病の太陽病位から少陽病位に使われる代表的な処方です。熱が上焦に上がるため上半身が火照り、顔、特に目の周囲や頬に少しピンクがかった赤味があります。
この上焦の熱がじんましんとして発現する事が有ります。慢性時は痒みのみの症状を訴え、急性時では発赤と痒みを訴える方が多いです。
茵陳蒿湯
おしっこが黄色がちで、黄疸が出たり肝機能に問題がある人が多いです。茵陳蒿湯は実証に使用し症状も激しいです。
茵蔯五苓散は中間証に同じ目標で使用します。茵陳蒿湯の方が症状が激しく、茵蔯五苓散はやや症状が軽い傾向にあります。
橘皮大黄芒硝湯
少陽病位の実証向けです。
魚介類や肉類、豆類、野菜等でも食中毒、食あたりなら橘皮大黄芒硝湯がよく効きます。食中毒の経験のある方なら慢性の場合でも便秘がちの人は適応となります。
橘皮大黄芒硝湯は本来、急性の食中毒を起こし腹痛などが出た時の食当たりの治療薬です。しかし過去に食中毒のためにじんましんを起こした事がある人が、その後数年に亘り再発する人にもよく効きます。
また食中毒の経験の無い人にもよく効きます。幅広く効く処方なので、色々な漢方薬を試しても効果の無い時は一度橘皮大黄芒硝湯を試してみる価値があります。
桂枝茯苓丸
生理不順や生理痛が有ったり、左下腹部に痛みやしこりが有ったりする方で、のぼせ易く、足先が冷える方に桂枝茯苓丸を使用します。
少陽の実証で、肩こり、のぼせの傾向があり、女性で生理不順や生理痛等の月経障害がある人、お臍の左斜め下1から2横指あたりに抵抗と圧痛がある少腹急結のある方によく効きます。
小柴胡湯
便秘がなく首や肩がこる人で、ミネラル性の漢薬と併用するとコリン性にもよく効きます。
小柴胡湯を代表とする柴胡剤が使われます。他に大柴胡湯や柴胡桂枝乾姜湯等も使われます。どの柴胡剤もミネラルを含む漢方薬味と同時服用すると効果が高くなる傾向があります。
十味敗毒湯
体力があり、化膿症体質で、赤みの強い隆起した人が多いです。十味敗毒湯を使用すると化膿症体質も同時に改善されます。連翹や石膏等と同時に服用すると効果があがります。
当帰飲子
春先紫外線が強くなった時期に御年配の方が、日光等で刺激を受け起きる日光性皮膚炎に使用します。見た目には異常が少なく、痒みは非常に強いです。
肌に潤いを付ける海産物やバラ科の果物、ハチミツ等を摂ると再発し難くなります。また火を通し過ぎた野菜や高菜付けなど、緑の野菜が茶色く変色した色素や化学薬品が原因の場合もあります。
当帰飲子は、同時に冬場に発症し夏場に改善する老人性掻痒症にも使用されます。牡蠣肉や食養生では上質のアミノ酸とミネラルを補充すると改善が早いです。
葛根湯
太陽病位の実証向けの漢方薬です。肩こりや頭痛があり、汗をかきにくい方によく効くことがあります。急性期に限らず、慢性期にも多用します。
原処方のままでは効果が見られません。治療には太陽堂漢薬局独自のノウハウを2つ応用します。葛根湯は陽明病の漢薬の方意と合わすとよく効きます。
食物アレルギーでは、主に肉類、卵等の陸生の食べ物が原因の場合が多いです。食物中の油の代謝に問題がある人が多く、慢性の場合は、動物性の脂に限らず植物性の油も減らした方が治り易いです。
急性、慢性に囚われず、非常に多くのじんましんに効きます。また即効性があり再発もしません。
消風散
非常に痒みが強く充血もしています。消風散証の人は皮膚の白い方が多く、同薬方にて体質改善をすると餅肌になる方が多いです。
一般的に浸出液が多く、厚い痂皮を形成をするタイプの湿疹やアトピー性皮膚炎に使用する処方です。しかし浸出液が無い事もあり、お風呂上りやお布団で温まると酷くなるじんましんにも使用します。消炎性のある黄連、黄芩を中心とした処方の瀉心湯や黄連剤の入った処方と合方すると効果が上がります。
浸出液が無い場合は当帰飲子証に似ています。
肝臓の解毒機能が改善するのか、消風散を服用するとお酒が強くなります。また瀉心湯や黄連剤も肝機能を改善することを考えれば、アレルギー原因物質の解毒を助けているのかもしれません。
苓桂朮甘湯
立ちくらみや眩暈、メニエール病を有する方は、苓桂朮甘湯が合うことが多いです。のぼせ、動悸の傾向があり小便の出が少ない人の寒冷性に使用されます。
越婢加朮湯、越婢加苓朮湯、越婢加朮附湯
太陽病の虚実中間証です。越婢湯は実証ですが、茯苓や蒼朮、白朮を入れると虚実中間証になります。口渇や発汗の傾向があって、足が冷え易い人によく効きます。
PM2.5が原因と思われる接触性にも効果があるようです。
太陽堂漢薬局の改善例
じんましんを太陽堂漢薬局で治療された改善例をご紹介します。漢方の不思議な力を信じて。一緒に取り組みましょう。
今週は殆ど出なくなりました
男性39歳
先週までは、夜中にじんましんが出てましたが、今週は殆ど出なくなりました。出る場所は、腰周り、太ももです。
食べ物は、注意されてるのは食べてないです。
太陽堂漢薬局からコメント
今週は出なかったのですね。良かったですね。
糸練功の合数も順調に上がっていましたよ。きちんと養生なさっているのですね。有難うございます。体質の改善が進んで行くと、食べられる物も増えてきますからね。
色んな物が食べれるようになって嬉しい
女性36歳
以前のように頻繁に出なくなってきました。
食べ物もだいぶ色んな物が食べれるようになって嬉しいです。じんましんなのか乾燥肌なのか、以前とはちょっと異なる痒みがあります。
太陽堂漢薬局からコメント
こんにちは。出る頻度が減ってきたようですね。食べられる物も増えてきて嬉しいですね。
前回、ミネラル豊富な生薬のアクで痒みが出ていたと思われます。今回よりミネラル豊富な生薬を抜き、アレルギーを抑える働きのある生薬を加えました。その他の薬味も調整してあります。痒みが酷くなった時はご連絡下さいね。
全く出ていません
女性33歳
じんましんは全く出ていません。食べ物の種類は無制限に食べている訳ではありませんが、以前より制限するのをだいぶ緩めています。
手の指は、洗いものをする時に洗剤がつくと痒くなる時がたまにありますが、その他はとても落ち着いています。
太陽堂漢薬局からコメント
じんましんは、落ち着いているようですね。本当に良かったですね。
もう暫くしましたら、漢方薬も30日分ずつお出し出来るようになりますよ。
全くじんましんが出なくなりました
男性25歳
毎日、毎晩のように出ていたじんましんが、全く出なくなりました。
太陽堂漢薬局からコメント
今日は糸錬功でプラスマイナスに成っていました。
おそらく2か月ほどで体質改善も終わると思われます。体質改善が終わると再発はしにくくなります。
今後も健康と再発防止で、食養生として海産物でミネラルを摂ると良いです。特に昆布、ヒジキ。同時に白砂糖などの甘い物を減らし、緑の葉野菜や日本茶を多く摂ってくださいね。
お病気に対して
粘膜にじんましんが出来ると、固い血管性浮腫を生じ症状が酷くなります。気道で起きると呼吸ができないため命に関わります。漢方の得意分野です。体質改善をすると抗ヒスタミン剤を飲む必要もなくなります。