蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹(じんましん)について

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚の血管運動神経の障害です。突然に限局性の赤い浮腫が出来、痒みが激しくなります。そして時間の経過と共に消失していきます。消失すると痕跡も残りません。
誘因として、蚤や蚊等の虫の刺し傷、色々な植物との接触、温度差、肌着、洗剤、薬剤などの外因の刺激でも起こります。
また内因として、海老、蟹、貝類、マグロ、サバ等の海産物。肉類等のタンパク質・脂類。竹の子、キノコやアクの強い食物等でも原因となります。
胃腸障害・内臓疾患などが原因の場合もあります。また神経質な人の神経性蕁麻疹も有ります。
実際の原因は特定出来ることもあれば、西洋医学的に原因が分からない事も多いです。
一般的に、アレルギー性と非アレルギー性の神経性等があります。

蕁麻疹(じんましん)の発生

蕁麻疹(じんましん)の発生する仕組みを見て行きましょう。

  1. 上記原因の外因又は内因の刺激が身体に加わります。
  2. 刺激により、皮膚の真皮にある肥満細胞(マスト細胞)からヒスタミンが放出されます。
  3. このヒスタミンにより、毛細血管が拡張します。拡張した毛細血管が表皮から透けて見え、蕁麻疹(じんましん)の赤み(紅班)となります。
  4. 同時に血管拡張により血管壁に隙間が生じ、血管の透過性が高まります。血管壁の隙間から血漿が血管外に漏れ、腫れ(浮腫)ができます。
  5. この赤み(紅班)と腫れ(浮腫)が蕁麻疹(じんましん)です。通常は数十分から数時間で自然に消失します。
  6. 痒みが生じますので、その部分をかくと、更にヒスタミンが遊離され酷くなっていきます。

蕁麻疹(じんましん)の種類

急性蕁麻疹
食べ物や室内環境のダニ・カビ。外部からの刺激によるアレルギーが原因の場合が多く、1ヶ月以内に消失する場合も多いです。

慢性蕁麻疹
数ヶ月~数年に亘り繰り返されます。アレルギーの他にストレスなども原因として考えられますが、西洋医学的に原因が分からない場合が多いです。

コリン性蕁麻疹
お風呂や運動、ストレスなどで発汗し、交換神経でアセチルコリンが分泌されます。発汗刺激により生じる細かい粟粒のような膨疹とチクチクしたような痛みを伴う場合が多いです。

人工蕁麻疹
機械的刺激で生じます。指や鉛筆でこすったりすると発生します。地図状とも言われます。女性の方が腕にハンドバックを提げていると、腕にハンドバックの形で出来たり、また下着等での圧迫部分にも生じます。

日光性
日光が当たった部分に発生します。食べ物やお薬が原因の場合もあります。緑の野菜が熱により茶色く変色した色素なども原因の一つと言われています。
人工蕁麻疹や日光性と同様に機械的刺激として、寒冷や冷たい水などに触れて起きる「寒冷性」。逆に熱い温度刺激により生じる「温熱性」等があります。

接触性
何らかのアレルギーを有する物に触れ起きます。PM2.5、ハゼ負け、草負け等もこれらに属します。牛乳が触れた部分に出来る牛乳アレルギーもあります。

血管性浮腫
まぶたや口唇等に蕁麻疹(じんましん)が出来ると、浮腫が真皮上層から真皮下層まで及びます。そのため境界線がハッキリしない硬い浮腫みとして腫れてしまいます。

東洋医学では

漢方では蕁麻疹(じんましん)が、水毒の薬味や柴胡剤で改善する方が多いです。東洋医学的には水毒が原因の場合が多いと考えられます。血毒の場合でも水毒が原因として混在していることが多いです。
しかし日光性やコリン性では、血毒との関係が強く出てきます。
慢性化すると一進一退を繰り返し、苦しんでいる患者さんが多い疾患です。煎じ薬で治療すると、比較的に早く改善する方が大部分ですが、時には頑強に東洋医学の治療に抵抗し手こずる場合もあります。
食中毒性の場合、香蘇散や橘皮大黄芒硝湯で良くなる人が多いです。 また、食中毒を引き金にアレルギー体質になった時、数年後でも香蘇散や橘皮大黄芒硝湯で効果があります。

漢方での蕁麻疹(じんましん)の瞑眩(めんけん)反応

瞑眩反応と思われる症例がありますので、ご紹介します。「漢方の臨床」11巻10号に掲載
患者は28歳の太った婦人。本年3月上旬から兎の毛を使って玩具を作る工場にアルバイトに通いだしてから、間もなく身体中に蕁麻疹が発生するようになり、掻痒が甚だしくて苦しい。某大学皮膚科や、近所の専門医の治療を受けているが、全く効がない。
起床時口中が粘つき、便秘の傾向がある。脈は弦。舌には乾燥した白黄苔が中等度。腹は膨満していて、腹力は中等度よりやや実。心下部と右肋骨弓下とに中等度の抵抗と圧痛とがある。以上の自覚症状から大柴胡湯証と診断。
1週間後に来院して告げるには「2日目に全身に今までになく酷い蕁麻疹が出て、すごく苦しみました。きっと薬が効く前兆だろうと思って、続けて飲んだところ、翌日からは綺麗さっぱりと出なくなりました。おかげで楽になりました」と。

対応する漢方処方

伝統医学である日本漢方古方派を中心とした代表的な処方をご紹介します。

香蘇散

海産物等で蕁麻疹(じんましん)が出た方に使用します。魚類、貝類、蟹や海老等が原因の場合、まず香蘇散を考えます。同薬方の合う方は、精神的に沈みがちで、胃腸の弱いタイプの方が多いです。

柴胡桂枝湯

上半身に汗をかき易く、漢方では「少陽病」や「太陽少陽の合病」に柴胡桂枝湯は使用されます。ミネラルを含む薬味と同時服用すると効果が高くなることがあります。

温清飲

少陽の虚実中間証で、痒みが強く、皮膚は乾燥し荒れ易い人、色黒な方が多いです。温清飲は漢方では解毒証体質に使用します。血毒になります。

升麻葛根湯

升麻葛根湯は、頭痛を伴ったり、急性期には悪寒や発熱を伴ったりする方に合います。太陽病から少陽病位に用います。

桂枝麻黄各半湯

上半身が少し火照り、目の周囲や頬がピンク色の方は、桂麻各半湯を代表とする温病タイプの方が多いです。慢性時は痒みのみの症状を訴え、急性時では発赤と痒みを訴える方が多いです。

茵陳蒿湯

おしっこが黄色がちで、黄疸が出たり、肝機能に問題がある人が多いです。茵陳蒿湯は実証に使用し、症状も激しいです。茵蔯五苓散は中間証に同じ目標で使用します。茵陳蒿湯の方が症状が激しく、茵蔯五苓散はやや症状が軽い傾向にあります。

橘皮大黄芒硝湯

少陽の実証です。食当たりに対応します。慢性化していても便秘がちで、最初が食当たりが原因なら、橘皮大黄芒硝湯が良く効きます。
橘皮大黄芒硝湯は本来、魚介類や肉類などで急性の食中毒を起こし、腹痛などが出た時の食当たりの治療薬です。
しかし過去に食中毒のために蕁麻疹(じんましん)を起こした事がある人が、その後数年に亘り再発する人にもよく効きます。また食中毒の経験の無い人にもよく効きます。
幅広く効く処方なので、色々な漢方薬を試しても効果の無い時は、一度橘皮大黄芒硝湯を試して見る価値があります。

桂枝茯苓丸

生理不順や生理痛が有ったり、左下腹部に痛みやしこりが有ったりする方で、のぼせ易く、足先が冷える方に桂枝茯苓丸を使用します。
少陽の実証で、肩こり、のぼせの傾向があり、女性で生理不順や生理痛等の月経障害がある人、少腹急結(お臍の左斜め下1~2横指あたりに抵抗と圧痛がある)のある方によく効きます。

小柴胡湯

便秘がなく、首や肩がこる人で、ミネラル性の漢薬と併用するとコリン性にもよく効きます。小柴胡湯を代表とする柴胡剤が使われます。他に大柴胡湯や柴胡桂枝乾姜湯等も使われます。どの柴胡剤もミネラルを含む漢方薬味と同時服用すると効果が高くなる傾向があります。

十味敗毒湯

体力があり、化膿症体質で、赤みの強い隆起した人が多いです。十味敗毒湯を使用すると化膿症体質も同時に改善されます。連翹や石膏等と同時に服用すると効果があがります。

当帰飲子

春先に御年配の方が、日光等で刺激を受け起きる日光性皮膚炎に使用します。見た目には異常がなく、痒みは非常に強いです。
当帰飲子は、同時に冬場に発症し夏場に改善する老人性掻痒症にも使用されます。食養生で上質のアミノ酸とミネラルを補充すると改善が早いです。

葛根湯

太陽病の実証で、肩こりや頭痛があり、汗をかきにくい方によく効くことがあります。急性期に限らず、慢性期にも多用します。
葛根湯は陽明病の漢薬の方意と合わすとよく効きます。食物アレルギーでは、主に肉類・卵等の陸生の食べ物が原因の場合が多いです。食物中の油の代謝に問題がある人が多く、慢性の場合は、動物性の脂に限らず植物性の油も減らした方が治り易いです。

消風散

非常に痒みが強く充血もしています。消風散証の人は皮膚の白い方が多く、同薬方にて体質改善をすると餅肌になる方が多いです。
消風散を飲んでいると、肝臓の解毒機能も回復するのか、お酒に強くなる人がいます。

苓桂朮甘湯

立ちくらみや眩暈(めまい)、メニエール病を有する方は、苓桂朮甘湯が合うことが多いです。のぼせ、動悸の傾向があり小便の出が少ない人の寒冷性に使用されます。

越婢加朮湯・越婢加苓朮湯・越婢加朮附湯

太陽病の虚実中間証です。越婢湯は実証ですが、茯苓や蒼朮・白朮を入れると虚実中間証になります。口渇、発汗の傾向があって、足が冷え易い人によく効きます。
PM2.5が原因と思われる接触性にも効果があるようです。

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