アトピー性皮膚炎

湿疹

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎には、家族的にアレルギーの素因があります。患者さん本人が喘息を持っていたり、家族内に喘息や蕁麻疹を持っていることが多いです。

遺伝的な要素が高いアトピー性皮膚炎ですが、同じ親から生まれた兄弟でも症状が出る子と出ない子がいます。兄弟のDNAは一緒です。漢方でも遺伝子は変えられません。

漢方での体質改善は、ホメオスタシス、生体恒常性が関係していると思われます。皮膚炎が出る子を皮膚炎の出ない子と同じような体質、状態に戻すことです。

アレルギーサイクル

アトピー性皮膚炎が自然に収まる事が有ります。その代わり次は、喘息になったり、花粉症になったりすることが有ります。これはアレルギーサイクルと言われる現象です。体質は変わらず、出現する症状が変化しているだけで、治ったわけではありません。

アトピー性皮膚炎の環境

アトピー性皮膚炎の原因には遺伝的な要素も有りますが、生体内環境と生体外環境に左右され症状が出ます。生体内では今までの食生活や生活様式により出来上がった体質的傾向です。生体外は、現在または今から症状を引き起こす様々な外的要因です。

生体内環境を整えるには、アトピー性皮膚炎の原因のアレルギー体質を改善するために、食養生を中心とした養生、漢方での体質改善が必要となります。特に腸内細菌叢は重要です。

生体外環境に関しては、出来るだけアレルゲンを調べ除く事です。アトピー性皮膚炎には様々な原因が考えられます。黄砂の時期に特に酷くなる患者さんや、アパート室内の黒カビを除いたら改善された患者さん、自己免疫が関係していると思われる人もいらっしゃいました。小麦のグルテン、牛乳のカゼインが影響している場合も多いと考えています。

アトピー性皮膚炎の好発部位

アトピー性皮膚炎の好発部位は、肘内側、膝裏側、項、手、顔面などに多く発症します。皮膚は乾燥性で魚鱗状の痂皮が見られます。乳幼児では、顔面、頭部に湿潤、びらん、痂皮を伴い、次第に身体下部へ広がっていく傾向にあります。

アトピー性皮膚炎を漢方で治す

アトピー性皮膚炎は、漢方で体質改善を。

時代で異なるアトピー性皮膚炎の治療環境

アトピー性皮膚炎は、西洋医学ではステロイドやビタミン剤、抗ヒスタミン剤で症状を抑える対処療法が主となり難治な疾患の一つです。

私が漢方を始めた1970年代は、漢方薬でアトピー性皮膚炎が治る人が非常に多かったです。最近、ステロイド剤が頻用されるに従い漢方薬でも治りにくい方が増えてきました。

漢方でも難しい疾患ではありますが、西洋医学の治療より根治する確率がはるかに高く、また漢方薬で治すと再発しないのも大きな特徴になります。

漢方の証の診断

漢方の証、治療法を決めるのに、東洋医学では様々な診断基準が有ります。病因である気血水、病位である三陰三陽、虚実、寒熱、燥湿、升降、収散、臓腑配当などです。

アトピー性皮膚炎の場合、私ども古方派が重要視する三陰三陽は、殆ど役に立ちません。また寒熱、収散、升降などの診断基準も殆ど役に立ちません。この病では寒熱は熱、温、収散は散、升降は升を呈する病態が元々多いからです。

最も診断しやすいのは、燥湿です。病因の気血水を判断し、燥湿の程度を判断し、虚実の程度を決めます。その後に臓腑配当を行い処方、治療法を決定していきます。

アトピー性皮膚炎と漢方薬

  • 漢方では、乳幼児の胎毒が原因のアトピー性皮膚炎には胎毒を取る漢方薬。例として治頭瘡一方
  • 分泌物が多いアトピー性皮膚炎に風湿を取る漢方薬。例として消風散
  • 中国からの黄砂、PM2.5、特に春先の時期に酷くなるアトピー性皮膚炎に利水作用の強い漢方薬。例として越婢加朮附湯
  • 乾燥が強ければ、解毒証体質の漢方薬。例として温清飲、荊芥連翹湯

以上の他にも、数十種類の漢方薬を使い分け、アトピー性皮膚炎を内面から治療して行きます。

食事で身体は出来ています。アトピー性皮膚炎を外面から完治させることは不可能です。患者さんごとに異なる食養生をご指導し、漢方と食養生で一緒に治していきます。

また漢方の世界では、昔より「妊娠中に甘い物を採りすぎると、赤ちゃんがアトピー性皮膚炎に成りやすい。」と言われています。

仮性アレルゲン

アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の場合、症状が出ている時に食べると原因物質ではないのに、症状が悪化する食材が有ります。それを仮性アレルゲンと言います。

春の時期は、ナス科のトマト、唐辛子、ピーマン、パプリカ、じゃがいも等に気を付けます。夏から秋はウリ科のキュウリ、スイカ、カボチャ、メロン等に気を付けます。特に皮の部分は成分が濃く症状が酷くなる人が多いです。

様々な食材

仮性アレルゲンには、ヒスタミン類似物質を含む食材や、セロトニン、コリン、ノイリン、チラミン、ヒスチジン、レクチン、アセチルコリン、トりブタミン、サリチル酸類等を含む仮性アレルゲンがあります。

他にも砂糖の摂り過ぎは、腸内細菌叢を乱します。また一般的に身体に良いと言われる不飽和脂肪酸の摂取が多いと炎症物質が過剰に産生されます。

体質に合わす漢方処方

伝統漢方古方派を中心とした一般的薬方をご紹介。

十味敗毒散

皮膚病で最も有名な処方です。荊防敗毒散を元に日本の華岡青洲が創った処方です。この漢方医は、江戸時代に最初に乳がんの手術をされた事でも有名です。

十味敗毒散は、アトピー性皮膚炎でやや湿の場合に使用します。一見すると痂皮が出来て乾燥して見えますが、肘の内側や膝の裏側などが酷い場合に使用します。

また化膿傾向があれば連翹を加味、熱性を帯びていれば石膏を加味すると良く効きます。

越婢加朮湯

皮膚病の中で最も湿、汁が多いタイプに使用する処方です。分泌物が多く痂皮を形成している場合が多いです。

黄砂やPM2.5の影響を受けやすい方が、多く見受けられます。

消風散

この処方も湿に使用する薬剤です。越婢加朮湯証ほどでは有りませんが、分泌物が多く痂皮を形成します。また乳頭から汁が出て痂皮形成をされている方も多いです。

分泌物は完全な透明ではなく、やや濁りがあるか黄色がかっています。汁が出るアトピー性皮膚炎は消風散証と言われる位、多用される処方です。

温清飲

乾燥したアトピー性皮膚炎に使用する代表的処方です。

この処方の加味方が柴胡清肝湯です。更に加味を追加し皮膚病に特化したのが荊芥連翹湯です。いづれも後世派の一貫堂医学由来の処方です。解毒症体質、肝臓が悪いのではなく、弱く身体の代謝物を解毒できず、それにより皮膚疾患が生じる体質に使用します。

柴胡清肝湯は小児に使用し、青年期以降は荊芥連翹湯を使用することに成っています。しかし、臨床的には拘る必要は有りません。

3方剤とも燥の状態に適応となります。肘の内側などにも症状が出ますが、汗の溜まらない箇所や体幹にも症状が出ている方が多いです。冬場の乾燥した時期に悪化する人も多いです。

一貫堂医学の解毒症体質は、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯の3処方が中心となります。

アトピー性皮膚炎の漢方改善例から

太陽堂漢薬局の患者さんの症例をご紹介

アトピー性皮膚炎。大分良いので漢方薬をやめようかなと思いました

女性27歳

症状は大分良いので漢方薬を止めようかなと思いましたが、止めようと思うと悪くなるので続けます。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

状態が良いようで良かったですね。

本来は症状が消失し10合になった状態が続いた時点で漢方薬を減らす段階かと思われます。油ものは控えめにされて緑色の濃い野菜を多く摂って下さいね。

調子いいです

女性34歳

アトピーは調子いいです。生理の方は相変わらずサイクルが遅いかな。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

アトピー性皮膚炎の調子が宜しいようで良かったですね。

これから湿度が高くなってきますと症状が悪化しやすくなります。汗をかいたらシャワーで流すか、タオルでごしごし擦らず叩くように拭き取って下さい。

婦人科の方は、全体に7合を越してきますとより安定してくると思います。

引き続き漢方薬を続けて下さいね。

アトピー性皮膚炎。お蔭様でとても快適です

女性34歳

アトピーの方は、右手の中指と小指に残っていますが、ほとんど痒みもなくカサカサしてる程度です。ヒザ裏は全く痒みがありません。まれに汗をかいた後とかにブツブツと出ますがしばらくすると消えます。

お蔭様でとても快適です。本当に有難うございます。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

詳しく現在の状態を書いて頂いて有難うございます。状態はかなり良いようですね。もう一息といった状態の様です。漢方薬の分量を見直して今回ご提案しております。

引き続き、緑色の濃い野菜を多く摂り、脂物や菓子類は控えていきましょうね。

お陰様で順調でとても良好です

女性38歳

暑い日が続きますがお陰様で順調でとても良好です。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

引き続き調子が良いようですね。その後、頑張って煎じ薬をお飲みでしょうか。出来ればこちらも毎日欠かさずお続け下さいね。その方が早く漢方薬を卒業出来ますよ。

今はお化粧が出来ます

女性32歳

漢方薬を飲んで1ヶ月経ちました。あれからステロイドの塗り薬は1回しか塗っていませんが、顔は特に劇的に改善しています。以前は、顔が痛くてお化粧が出来ませんでしたが今はお化粧が出来ます。

漢方薬を飲むととてもおしっこが良く出ます。手は炊事をするので、まだアトピーが出ますが、それでも随分綺麗になりました。

たまに蕁麻疹が手や首のところに出来ます。ヘルペスも今までは治るのに2週間かかっていましたが、漢方薬を飲み始めてから1週間で治りました。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

1ヶ月間で、とても綺麗に改善されましたね。私達もとても嬉しく思います。今のスピードを考えるとアトピー性皮膚炎は綺麗に良くなりますよ。

体質改善が進み出しましたらお顔のシミが薄くなってくると思います。引き続きご養生下さいね。

先月より良くなっていると思いますよ

男性29歳

今月は先月より多少良くなっていると思います。ジュクジュクは時々症状が出ることがあります。痒みは上半身に症状がありますが、先月よりは良くなっていると思います。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

1ヶ月ごとに少しずつ良くなってきているようですね。頑張ってご養生されていらっしゃる成果ではないでしょうか。

今の患部の状態を拝見したいので、よろしければ、お時間ある時にお写真をお送り下さいね。よろしくお願い致します。

アトピー性皮膚炎による色素沈着も薄くなってきました

女性26歳

痒みは治まっています。色素沈着も薄くなってきた様な感じです。最近気になる事は、便秘気味だったり顔の吹き出物です。

太陽堂漢薬局から患者さんへ

痒みが治まり良かったですね。

お盆を過ぎると湿度が徐々に下がり出します。その頃から急速に改善して行きますよ。

甘い物やアルコールの摂り過ぎにお気をつけ、お野菜を沢山召し上がって下さいね。

落ち着いてきました

女性2歳

前回の漢方薬を頂いてから、落ち着いてきました。

太陽堂漢薬局からコメント

お顔のジュクジュクがようやく引いてきましたね。良かったです。

アトピー性皮膚炎は、東洋医学的には水毒が原因と思われます。今お飲みの漢方薬は、強力に水毒を捌きます。

分泌物の多い湿疹の他、腰痛や初期腎炎等にも用います。いずれにしても原因となる所を改善しますよ。

まだ気を許せませんが、このまま順調に改善する事を祈ってます。

漢方で、良くなっているのが目に見えて分かります

女性16歳

食事制限を始めて、良くなっているのが目に見えて分かります。また気分がすごく楽になって来ました。

肌の調子は、顎の下と頬から顎にかけて、首に少し出ています。膿が出ていますが、全体的に顔の赤みが減ったと思います。

太陽堂漢薬局からコメント

食事制限をして、目に見えて改善してきているようなので本当に良かったです。

前回お伝えしました食品は、今はまだ摂取しない方が良いと思われます。しばらくして蕁麻疹の症状が改善し糸練功の合数も上がってきましたら、摂取したらいけない食品が減ってきますよ。それまでは我慢して下さいね。

ステロイドの塗り薬も随分減ってきました

女性39歳

お肌の調子はとても良いです。最近はステロイドの塗り薬も随分減ってきました。

アレルギーの漢方薬を飲んでいるからか、食べ物で酷くなるという事は、ここ1ヶ月起こっていません。

仕事のストレスが、かかった時に急に痒くなりますが、しばらくすると治まっています。

太陽堂漢薬局からコメント

お肌の状態がとても綺麗になってきましたね。アレルギーで酷くなる事も無くとても順調だと思います。

アレルギーの粉薬は1日2回へ減らしました。1回量が多くなりますが、頑張ってお飲み下さいね。

アトピー性皮膚炎の治療が終わりましたら、婦人科の方に取り組んで行きましょうね。

アトピー性皮膚炎の皮膚もどんどん綺麗に

男性50歳

非常に改善しています。引っ掻くことも本当に減りました。皮膚もどんどん綺麗になっています。

太陽堂漢薬局からコメント

漢方治療で二つの山があります。二つ目の山を越えたところです。もうこれ以降は、以前の様に酷くなることは少ないです。

今まで頑張って来られましたが、もう少しお付き合い下さい。最後まで一緒に治し切りましょうね。

ひっかき傷も少なくなっています

女性7歳

一時期よりアトピーの症状は落ち着いています。痒みも以前と比べると無いです。ひっかき傷も少なくなっています。

太陽堂漢薬局からコメント

こんにちは。前回より症状が落ち着いてきているようで安心致しました。

皮膚を掻く状態は、再び症状を引き起こす原因になります。炎症の5段階は、刺激が加わると発赤から腫脹へ、次に痂皮形成から落屑、最後に治癒となります。腫脹段階と痂皮形成段階で痒みが起こります。その時掻いてしまうと、再びスタート段階の発赤に戻ってしまいますので、出来る限り掻かずにお過ごし下さいね。

汗により刺激が発生しますので、汗を掻いた時は出来る限り小まめに汗を拭き取って下さいね。痒みが和らいでいる時は、刺激にならないようにハンカチ、タオル等を当てて拭き取るようにされると、更に刺激にならずに済みますよ。

お病気に対して

アトピー性皮膚炎は体質的な素因が原因です。外用薬や症状を一時的に抑える薬では治るのを待っているだけになります。

いつ治るのか、治らないのかも分かりません。漢方薬での体質改善が必要な疾患になります。