
日本漢方の古方派を中心とした漢方薬・処方をご紹介します。
一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例・処方薬味・適応疾患・使用目標・漢方の証・方意をご紹介。
補中冶湿湯(ホチュウジシツトウ)-済生方-
処方薬味
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適応疾患
浮腫、水腫、腎炎、ネフローゼ症候群、腹水
漢方の証・方意
- 病位・虚実;少陽病、虚証
麻黄加朮湯・麻黄加苓朮湯(マオウカジュツトウ・マオウカリョウジュツトウ)-金匱要略-をご紹介
処方薬味
麻黄加苓朮湯は麻黄加朮湯に茯苓を加えたものです。
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適応疾患
関節炎、慢性関節リウマチ、一酸化炭素中毒、腎炎、ネフローゼ症候群、慢性副鼻腔炎
漢方の証・方意
- 病位・虚実;太陽病、実証
- 十二臓腑配当;心・胃・膀胱
- 方意;表の水毒:身煩疼・四肢疼痛・頭痛
麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)-傷寒論-をご紹介
改善例
病名 歯痛
金冠をかぶせた奥歯が痛み出し、歯医者に行く時間が惜しかった。脈は沈んでやや遅、当時は無理な生活を続けていたので、体も過労気味だった。
そこで麻黄附子細辛湯と甘草麻黄附子湯の合方をのんでみたところ、2日位で歯痛がすっかり治ったのでそのまま歯の治療をほおっておいた。
1年以上経って、またその歯が痛み歯科医で金冠をはずしてみると、歯がすっかり腐っていた。「もっと早く来ればこんなにならず、この歯も使えたのに」と言われ漢方薬だけで痛みを止めて失敗したと思った。
処方薬味
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適応疾患
虚弱者や老人の過労の際の感冒・流感・気管支炎・肺炎・気管支喘息・悪寒・微熱(脈沈細・全体倦怠・無気力・嗜臥)、アレルギー性鼻炎、花粉症、蓄膿症、三叉神経痛、肋間神経痛などの神経痛、歯痛
使用目標
身体が虚弱で、悪寒ばかりで熱感がなく、微熱・倦怠・無気力などの症状があり、身体や手足が痛む方に用います。
蒼白な顏をして寒そうにし、元気がなくて横になっている方に用います。手足が冷え・咳・咽痛・頭部冷痛などを訴える方が多いです。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;少陰病と太陽病の併病、虚証
- 十二臓腑配当;腎
- 方意;寒証による背悪寒・顏色不良。肺の水毒による咳嗽・呼吸困難・稀薄な喀痰、虚証による疲労倦怠・無気力。表の寒証による頭痛 ・咽頭痛、表の水毒による身疼痛・関節痛・神経痛。全身の水毒
麻黄湯(マオウトウ)-傷寒論・金匱要略-をご紹介
改善例
病名 風邪
いつも風邪をひいても軽くてすみ、肩がこって喉が痛む程度で、葛根湯を飲むとすぐ治る方が、今回は寒気がして熱感が起こり、脈が浮で力があったけれども、腰が酷く痛んだ。葛根湯を飲んでも尿利ばかり起こって熱も下がらず、腰痛も治らなかった。(腰が落っこちるような感じの腰背痛で、立って歩くのも苦痛、眠ることもできなかった)
葛根湯を飲んでも効果がないので、麻黄湯に変えてみた。すると少し発汗し、2時間ほどぐっすり眠り、目が覚めたら熱がほとんど下がり、腰痛が無くなっていた。その翌日にはすっかり治ってしまった。
処方薬味
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適応疾患
感冒、流感、上気道炎、気管支炎、肺炎、関節リウマチの初期、喘息、鼻炎、小児の鼻閉、哺乳困難、小児夜尿症、難産、神経痛、眠気覚まし
使用目標
悪寒(布団をかぶっていても寒いもの)や悪風(外に出たり、隙間風が当たったりすると寒気を感じるもの)がして、発熱、頭痛があり無汗(汗が自然に出ない状態)で、喘咳(ぜいぜいという喘鳴を伴った咳で気管支粘膜の分泌物が多いと思われる)や咳嗽、腹満(胸が苦しくて一杯になったように感じるもの、咳が酷い時などにある症状)、身体痛、関節痛、腰痛がある方に用います。
通常は丈夫で頑丈な体質の方が激しい闘病反応を起こしている時に用います。したがって熱も高く、咳も激しく身体がひどく痛いという強い症状が起こっている方に多く用います。
この方剤は、胃腸の弱い、虚弱な体質の人には用いることは少ないのですが、お子さんには意外とよく用います。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;太陽病、実証
- 方意;表の寒証・表の水毒による頭痛、悪寒、発熱、身疼痛、背腰痛。表の実証としての無汗、鼻閉、分泌過少。気の上衝としてののぼせ・鼻血。肺の水毒などに用いる方剤です。
- 備考;麻黄湯は太陽病(熱病の初期)に多く用いられる薬方で、桂枝湯(ケイシトウ)の表虚証に対してこの方剤は表実証に用います。傷寒論の代表的な発表剤で、葛根湯(カッコントウ)より実証の方に用います。
麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)-傷寒論-をご紹介
処方薬味
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適応疾患
気管支喘息、喘息性気管支炎、百日咳、痔核の疼痛、乳幼児の感冒、痔痛、睾丸炎
改善例
喘咳が強く、口渇(咽の渇き)があり、あるいは自然に発汗し、熱感を訴える方、高熱が出る方に用います。この場合、悪寒することはありません。
漢方の証・方意
- 病位・虚実;少陽病、実証
- 十二臓腑配当;胃
- 方意;肺の水毒としての呼吸困難・咳嗽。熱証としての自汗・口渇・発熱に用いる方剤です。
- 備考;麻杏甘石湯の薬味構成は麻黄湯(マオウトウ)とよく似ています。しかし、麻黄湯には桂枝がありますが、本方にはそれが無くて代わりに石膏が入っています。このわずかな違いが薬方の運用に大きな差異を生じています。すなわち桂枝が表(身体の表面)を整えてその熱を去るのに対して、石膏は裏(身体の内側)の熱を冷まして口渇を治す効果があります。この方剤は、甘味があって飲みやすいのでお子様も嫌がらずお飲みいただけます。
参考文献・出典
- 漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 著
- 漢方処方 応用の実際 山田光胤 著
- 漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 著
- 漢方治療百話第1~3集 矢数道明 著
- 腹證奇覧 稲葉克文礼 和久田寅叔虎 著
- 漢方処方応用のコツ 山田光胤 著
- 薬局製剤 漢方194方の使い方 埴岡博・滝野行亮 共著
- 勿誤薬室方函口訣 長谷川弥人 著
- 漢方診療30年 大塚敬節 著
- 皇漢医学 湯本求真 著
- 黙堂柴田良治処方集 柴田良治 著
- 類聚方広義 吉益東洞 著