腹水

肝炎

肝臓と腹水

腹水は、肝硬変以外に癌やその他のご病気でも見られます。

肝硬変では、門脈圧が亢進すると肝臓に行くはずの血液が逆流します。その結果、肝臓や腸から体液が溢れ、浮腫みが生じ腹水が貯留します。

また肝臓で合成されるアルブミンは血液中の浸透圧を保つ働きがあります。肝硬変が進み肝不全の状態になると、アルブミンの合成が出来なくなります。血管内のアルブミンが不足すると血液の浸透圧を維持できずに、血管内の体液が漏れて浮腫みや腹水が酷くなります。
メッサの頭と言われる静脈の拡張を示すこともあります。

腹水にはアルブミンが含まれるため、血液中のアルブミンの不足が更に加速し進行します。

腹水の症状

少量の腹水では症状はありません。また検査でも見つからないこともあります。増えてくると腹部は膨満します。

腹水により内臓を圧迫し始めます。胃を圧迫すると食欲が落ちます。肺が圧迫されると息切れ等の症状が出てきます。

腹水の漢方治療

西洋医学的治療で腹水

西洋医学では、お腹に針を入れ腹水穿刺や利尿薬を中心とした対処療法となります。

漢方治療

漢方の古方派では、肝硬変の腹水には昔から特効薬的に使われる漢方薬があります。特にB型肝炎が原因の場合は著効例が多い薬方です。

この漢方薬で腹水が減少すると、同じ薬方を飲み続けると肝硬変自体も改善し肝機能も正常化する人が多いです。

またC型肝炎やアルコール性の場合は先の薬方では効果のない方もいます。漢方太陽堂には、先の薬方で効果のない方には別な治療法を用意しています。
肝硬変や腹水でお困りの方はご相談ください。

腹水に使用する漢方薬

腹水は腹腔内にうっ血性の浸出液が溜まった状態です。
肝硬変、心臓、肺の病気や身体衰弱、癌などから来ることがあります。
また腎炎やネフローゼによる浮腫の一つとしても現れます。

肝硬変等の場合は、門脈圧亢進による血流障害の結果として腹水が貯留します。

柴芍六君子湯

浅田宗伯の勿誤薬室方函には「四逆散の証にて胃虚を兼ねるものを治す」とあります。「後世方いわゆる肝実脾虚に用う」とあります。
これは柴胡剤を用いたい腹部上部に炎症や熱がある患者さんで、消化機能が衰えた脾虚の患者さんを目標とする意味になります。
肝が実しすぎると相剋の脾が虚する」です。

補中冶湿湯

病気が永びき、衰弱し虚証を示す方の腹水に用います。

桂姜棗草黄辛附湯

脾腫が主症状であるパンチ氏病の腹水に使用し改善したとの報告があります。

分消湯の腹水

実証で口渇の少ないタイプで体力があり、体位を変えても腹水の腹形が変化しない、腹壁に力があるタイプの実証に使用します。使用頻度は高い処方です。
分消湯の方意は半夏厚朴湯3分の2量に五苓散9分の8量を合方しても出来ます。

分心気飲

精神的にうつ気分で取り越し苦労の多いタイプ、食欲がなく虚証の腹水に使用します。

苓甘姜味辛夏仁湯

虚証に用います。鼻炎で有名な漢方薬です。本来は虚証の水毒を捌く漢方薬です。
本来の使用法に従い、鼻炎以外に腎炎にも使用し腹水にも使用します。

大青竜湯

苓甘姜味辛夏仁湯は、表証なく、裏に水毒がある。虚証タイプに用います。
大青竜湯は、表証があり、裏に熱があり水毒を伴う。実証タイプに用います。非常に強実証ですので患者さんの虚実を判断しないと使えません。

五苓散

口渇と尿利減少を目標に腎炎、ネフローゼ他の腹水に用います。数々の合方があります。

五苓散合人参湯

肝硬変、特にB型肝炎の方の腹水に著効を示すことが多い処方です。
人参は水を呼ぶ」と言われ潤の働きがあります。単独で使うと水分の貯留が酷くなる可能性があります。必ず燥の働きが強い五苓散と合方します。

比率を変える五苓散合人参湯

五苓散と人参湯の比率は患者さんの虚実により変えます。
実証では人参湯合五苓散で五苓散量を多くし、虚証では五苓散合人参湯で人参湯を多めにします。

茵蔯五苓散

黄疸がある人の腹水に用います。尿利減少と口渇が目標となります。

胃苓湯

平胃散と五苓散の合方例です。
腹水があり、口渇を訴え、わりと元気がまだある、実証から中間証に用います。

細辛

腹水には伝統療法があります。
川魚の鯉を使った方法や生薬末の細辛を使った方法があります。
ここでは苓甘姜味辛夏仁湯や桂姜棗草黄辛附湯の構成薬味の細辛を使った方法をご紹介します。

細辛末を臍に

細辛を末にします。寝る前にお臍に細辛末を詰めます。こぼれない様にリント布などを張ります。これで一晩で腹水が抜ける事があります。糸練功が出来る方は施術前に効果判定が出来ます。細辛は刺激が強いので連続するとカブレる事が有ります。お気を付けください。

漢方太陽堂では細辛末を使い子宮がんの方の腹水を抜いたことがあります。

他に民間薬として最も利尿作用が強いのは南蛮毛です。南蛮毛はトウモロコシの実の上の金色の毛です。漢方治療百話を書かれた矢数道明先生が南方で使われた記録があります。
ご参考までに。

腹水の漢方改善例から

漢方太陽堂の患者さんの症例をご紹介

少なくなってきた腹水

男性76歳
お蔭様で、腹水は大分柔らかく少なくなってきました。見た目にも元気になってきました。

漢方太陽堂から患者さんへ

こんにちは。腹水が減ってきたようですね。良かったですね。合数の状態としましては、まだ油断対敵です。漢方薬、頑張ってお飲み下さいね。