日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。

初めての方から専門家まで参考になるよう、気味・帰経・効能・適応とする体質と処方例・民間療法をご紹介。

辛夷(シンイ)

辛夷はコブシ、またはタムシバの蕾を乾燥させたものです。

コブシの蕾は、手を握ったコブシのようなのでこの名を得ました。

辛夷は、辛味があるので辛の字を得、その形は芽が出たような形であるので辛夷となりました。

気味・薬味薬性

味は辛、性は平

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺・胃

効能

肺の微熱を取り去り同時に鼻の塞がりを取るので鼻の諸病(風邪などによる鼻水・くしゃみ・鼻づまり・蓄膿症)鼻閉を解消します。

消化を盛んにします。

発汗作用により、風寒(風邪と寒邪が結合した状態)を除き、主に感冒による頭痛・頭重に用います。

適応とする体質と処方例

  • 相当のきつい蓄膿症に使用できます。ただし、体質の弱い方には利用できません。処方例:辛夷清肺湯(シンセイハイトウ)
  • 葛根湯証の鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎に用います(※体力の弱い人には他の処方を考える)。処方例:葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)

神麹(シンギク)をご紹介

生薬-神麹

神麹の神はカミ、麹はコウジのことです。

本草綱目には「昔、酒を造った後のかすより神麹を造ったが、諸神の聚会の日(神様を祭る日)に造ったので神の名を得た」とあります。

中国には六つの神様があってそれを連想して造ったので六神の神の名を得たと言われています。神麹は神に関するコウジという意味になります。

神麹は五月五日、六月六日に白い小麦粉、カワラニンジン、カワラヨモギの搾汁、野蓼の搾汁、蒼耳の汁、赤小豆末、杏仁泥を使用し、煉って餅伏とし、器内に麻葉をのせて覆い、餅が黄変した時に取り出し、日当たりで乾燥し、古い物の方がよいので貯蔵後使います。

気味・薬味薬性

味は辛・甘、性は温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾・胃

効能

アトニーの消化器に元気をつけ胃の働きを盛んにし消化をよくし、腸を整えて腹水音や下痢腹のないようにします。

適応とする体質と処方例

  • 高血圧にともなう動悸 、手足の痺れ、肩のこり、逆上せ、耳鳴り 、めまい、頭重感のある方に用います。処方例:牛黄清心元(ゴオウセイシンゲン)

紫苑(シオン)をご紹介

生薬-紫苑

朝鮮半島から中国北部、モンゴル、シベリアにかけて分布するキク科の多年草の紫苑を用います。

中国では軟紫苑と言います。これに対してキク科のオタカラコウなどの根を硬紫苑あるいは山紫苑と言っています。

紫苑は日本にも古くから伝えられ、平安時代にすでに観賞用に植えられており、また九州や中国地方では野生化しています。

一般に、中国では薬用として日本では観賞用として栽培されています。秋に藤紫色の花が咲き、また根が紫色がかっているため紫苑といいます。

気味・薬味薬性

味は辛・苦、性は温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

効能

止咳、去痰の効能があります。

咳嗽や喘息 、血痰に用います。

適応とする体質と処方例

  • 感冒、気管支炎などで、涼燥の表証を呈する方に用います。
  • 慢性気管支炎、気管支拡張などで、痰のある湿った咳嗽をする方にも用います。処方例:杏蘇散(キョウソサン)

紫根(シコン)をご紹介

生薬-紫根

紫草(シソウ・ムラサキ)の根を薬用にします。採集した時、水洗いすれば色素が若干逃げるので、水洗いせず直ちに日光にさらしてカビが生えぬように湿気に触れさせずに貯蔵します。

使用する場合は、砂があることに注意し、生薬は肥大のものが良いようですが、栽培品の根は大きく色が薄いので良くないようです。

太く長く肥大し茎を残さず、泥砂が付着せず、紫色を呈し色が濃く、芯の木部が少ないものを良品とします。

野生品と栽培品がありますが、栽培品は色が薄いようです。

気味・薬味薬性

味は甘・鹹、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

心・肝

効能

皮膚創面の新生や肉芽発生に効があるようです。

紫根を煎じて服用すると大便、小便がよく出るようになります。

適応とする体質と処方例

  • 外傷に塗布すると止血鎮痛の効があり、火傷などに塗ると痛みがすぐに止まります。処方例:紫雲膏(シウンコウ)

備考

  • 日本では硬紫根が薬用として使用されてきましたが、軟紫根も類似の効用を持つナフトキノン類を十分に含んでいることわかりました。
  • 硬紫根や軟紫根に含まれるナフトキノン誘導体は、共に紫色色素です。
  • 太陽堂漢薬局では、成分的に似ていても伝統的な硬紫根しか使用しません。
  • ムラサキの根は、奈良時代ごろより紫色染料として用いられ、特に江戸時代には江戸紫として賞用されました。

真珠(シンジュ)をご紹介

生薬-真珠

海水に住んでいる真珠貝(アコヤガイ)または淡水に住んでいる(カラスガイ)に小さい微生物または砂粒等が殻内に隙間から入ってきた時、その外套膜に刺激を受けて自分の保護のために貝殻内面の光輝ある物質と同様の真珠質を分泌して、これを被膜してできたものが真珠です。

もし中心核が貝殻内に付着している時は、珠として生じずに貝殻内にイボ状に発生します。これを真珠母と言いますが薬用には真珠同様に使用します。

真珠の大きさ形、色沢等によって装飾品に合格しないものが薬用となります。

気味・薬味薬性

味は甘・鹹、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肝・心

効能

上部の充血や口腔内粘膜の炎症などを鎮めます。

自律神経の亢進を鎮めます。

参考文献・出典

  1. 漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 訳・著
  2. 近代漢方薬ハンドブック(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ) 高橋良忠 著
  3. 漢方のくすりの事典 鈴木洋 著
  4. 薬徴 吉益東洞 著
  5. 中薬大辞典 小学館
  6. 薬草カラー図鑑1~3 主婦の友社
  7. 平成薬証論 渡邊武 著
  8. 本草綱目 李時珍 著
  9. 医心方 食養篇 丹波康頼 著
  10. 中国の薬用菌類 劉波 著
  11. 薬草の詩 鹿児島県薬剤師会
  12. 和漢薬の良否鑑別法及び調整方 一色直太郎 著

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