日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。
二朮湯。万病回春
処方薬味
白芷 | 蒼朮 | 生姜 |
天南星 | 茯苓 | 香附子 |
半夏 | 威霊仙 | 羗活 |
黄芩 | 甘草 | 陳皮 |
適応疾患
肩甲関節周囲炎。四十肩、五十肩、頸肩腕症候群、上腕神経痛
使用目標
水毒による上腕、肩から手までの前腕痛のある方に用います。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病から太陰病
- 十二臓腑配当。虚実中間、不明
- 方意。上焦の水毒による肩関節痛、上腕痛のある方、時に脾胃の虚証の伴う方に用います。
- 備考。二朮湯の証の方は、胃内停水の有る方も無い方もいらっしゃいますが、甚だしく虚してはいらっしゃいません。手足の冷えが強い方には附子を加えると効果的です。
二陳湯。和剤局方
処方薬味
甘草 | 生姜 | 半夏 |
陳皮 | 茯苓 |
適応疾患
胃下垂症、慢性胃炎、常習頭痛、神経症、過飲食、二日酔い
使用目標
胃内停水による悪心、嘔吐および水飲、水毒による諸病に用います。心下部に振水音を認め、悪心、嘔吐、めまい、心悸亢進、胃部不快感などを訴える方に最適です。水飲による症状は千差万別ですが、偏頭痛、脇痛、心下痛、胸下痛、下肢腫痛、喘咳、咳嗽、全身倦怠などが多いです。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病、虚証
- 十二臓腑配当。胃
- 方意。脾胃の水毒。強い悪心、嘔吐、上腹部振水音、心下痞。水毒の動揺、心悸亢進、めまい、頭痛。肺の水毒、咳嗽、喀痰
- 備考。胃内停水の代表処方です。小青竜湯や平胃散と合方することが多いです。
女神散。浅田家方
改善例
寝たきり。女性。漢方処方応用の実際より引用
大してやつれていなかったが、10年も前から殆ど寝たきりで自分用の時以外は起き出さないと言っていた。訴えは、頭痛とめまいで、その付近の名のある医師にみんな診てもらったが治らなかったと言うことであった。
患者は中肉中背で少し色黒のほうだった。この時に女神散を投与すると3ヶ月位で患者は寝床を上げ、ぼつぼつ仕事を始めたという。
処方薬味
甘草 | 白朮 | 川芎 |
香附子 | 丁香 | 桂皮 |
木香 | 人参 | 檳榔子 |
黄芩 | 大黄 | 黄連 |
当帰 |
適応疾患
自律神経失調症、更年期障害、産後の神経症、月経困難、胃腸神経症、不眠、月経不順
使用目標
体質的特徴はあまりなく、体力中位かやや強い女子に用いることが多いです。瘀血の徴候もはっきりしないが大抵は月経異常があります。
産後、流産の後、人工中絶後などによく起こる精神症状に有効な場合が多いです。ある一定の精神症状を、頑固に固執してあまり変化を見せず、1つか2つの訴えをいつまでも続ける傾向があります。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病、虚実中間からやや実証
- 方意。気の上焦、上焦の熱証による精神症状。顔面紅潮、ほてり、眩暈、立ちくらみ、感情不安定、不安感。瘀血、月経異常、産前産後の障害
- 備考、鑑別。女神散の症状は上焦中心で一定。加味逍遙散は不定愁訴、逍遙性。女神散は、生理前後に神経症が悪化する傾向にあります。
人参湯。傷寒論
別名。理中湯
改善例
病名は生唾。30代、女性。漢方処方応用の実際より引用
30代の女性、約9ヶ月前からしじゅう生唾が上がり食事をしたあと吐くことがある。喉や胸がつかえたり心下部がチリチリ痛んだり、就寝中に心臓が痛んだり、ドキッとしたりするという。大便は軟便で夜間尿に一度起きる。患者は中肉中背で、一見したところそれほど体力が低下している様には見えない。腹部は肉付きが普通で心下部胸骨剣状突起の直下に抵抗があり、臍傍の左上に動悸の亢進を触れた。
この患者には口に唾液がたまることと、夜に小便に起きることの2点を目当てに人参湯を投与したところ1ヶ月足らずで諸症状はすっかりよくなった。
処方薬味
甘草 | 白朮 | 生姜 |
人参 |
適応疾患
急、慢性胃腸炎、胃アトニー症、胃下垂症、消化性潰瘍、胃拡張、悪阻、小児自家中毒症、弛緩性出血、肋間神経痛、疑似狭心症、胃腸型感冒、神経症、回虫症、よだれ生唾の多いもの、糖尿病、虚証の人の諸出血、冷え性
使用目標
元来が虚弱体質の人、あるいは衰弱により体力が低下した人の腹痛あるいは脇痛のある方に用います。血色が悪く、生気が乏しく、疲れやすく、多くは痩せた人に用います。腹痛は主に上腹部、胃部に起こり、時として、下痢、嘔吐、眩暈、頭重感なども訴えます。特徴として手足が冷え、尿が無色透明で水のように薄く、量も回数も多いというのがあげられます。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。太陽病、虚証
- 十二臓腑配当。脾
- 方意。脾胃の虚証による食欲不振、心下痞硬、水様あるいは泥状下痢、喜唾。寒証による顏色不良、手足の冷え、腹部の冷感、腹痛、身体痛、シビレ。水毒による浮腫、頭重、眩暈、くしゃみ、咳嗽。血証による貧血、出血
- 備考。人参湯は金匱要略には人参湯、傷寒論には理中丸と示されています。金匱要略、傷寒論ともに昔から中国に伝わるの古典本です。理中は中焦すなわち胃の働きを整えるという意味です。消化器のうち、ことに胃の機能が低下し、栄養の吸収が悪く、新陳代謝が低下した方に用いて、消化機能を助け、身体の諸機能を回復させる働きがあります。
人参当芍散
処方薬味
甘草 | 白朮 | 当帰 |
芍薬 | 茯苓 | 桂皮 |
澤瀉 | 人参 | 川芎 |
適応疾患
冷え性、妊娠時中の諸種の障害、例えば浮腫、習慣性流産、早期破水、痔疾、腹痛、膀胱炎、腰痛、生理不順、月経困難症、その他の婦人科的疾患、慢性腎炎、半身不随症、心臓弁膜症、脚気、凍傷、帯下、めまい、女性の虚弱体質
漢方の証、方意
- 病位、虚実。太陰病、虚証
- 十二臓腑配当。肝
- 備考。当帰芍薬散の加減方です。