日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。
燈心草、灯心草
燈心草は、水田や湿地に自生するイグサ科の全草あるいはその髄を用います。日本でも燈心草と呼びますが、古くからイあるいはイ草と呼ばれ、その茎は畳表や花むしろの材料として利用されてきました。室町時代から栽培されるようになり、特に江戸時代以後に瀬戸地方で盛んに栽培されていました。
イ草の髄は白くて弾力性があり、それをとってロウソクや灯明の芯に用いていました。そのため灯心草と呼ばれ江戸時代には生活の必需品でした。薬材としては、この髄を乾燥したものが市場に出回っています。
気味、薬味薬性
味は甘、淡、性は寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
心、小腸
効能
膀胱炎などによる排尿障害、浮腫み、不眠、心煩、小児の夜鳴きなどに用います。イグサ自体を噛み砕いて傷などの止血に用います。
適応とする体質と処方例
気鬱のため胸膈が不快で、食事をしようと食べ物に向かうと、ため息をついて食欲が出ない方、憂愁憤怒などの情動変化により、気が欝滞した人が食欲不振、やせ衰え、眩暈、胸騒ぎ、咳嗽などを起こしたり、或いは取り越し苦労の多い人が色々な長患いをする時などに用います。処方例。分心気飲
土鼈甲
スッポンはスッポン科及びシナスッポンの背及び腹の甲羅を用います。装飾用のベッコウ細工に用いるものはウミガメ科のタイマイの甲羅になります。薬用として用いるスッポンには亀甲紋はありません。現在は甲を使用しますが昔は頭、肉、脂、血を薬用にしていました。
気味、薬味薬性
味は鹹、性は寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肝、脾、腎
効能
肺結核の初期、マラリア等による肝脾腫や腹部腫瘤、小児のひきつけ等に用います。
子宮筋腫に対して、駆瘀血剤に薏苡仁や土鼈甲を加味します。
適応とする体質と処方例
肺結核及び類似症で、胸部に所見がありながら激しい症状を現さず、微熱の取れないものに使用します。処方例。秦艽別甲湯
冬虫夏草
中国の四川、貴州、雲南、チベットなどに生産します。蛾の幼虫に生えたフユムシナツクサタケと呼ばれる菌類で、特にコウモリガ科の幼虫に寄生します。幼虫の体内に入った菌は、菌糸を伸ばし成長し、やがて体内を完全に占領し、更に細い子実体を出してキノコが発生します。
冬には虫の姿で、夏に変じて草になると信じられていたため、冬虫夏草の名があります。古来、ウドンゲと共に吉祥のしるしとして知られていました。
気味、薬味薬性
味は甘、性は温
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺、腎
効能
抗菌作用があります。気管支拡張作用があります。
適応とする体質と処方例
虚弱体質の改善に人参、鹿茸などと配合して用います。処方例。金蝉花
忍冬
忍冬は別名、耐寒ともいいます。どちらも冬に対して耐え忍ぶと言うことを意味するもので、スイカズラの葉と茎を乾燥したものです。スイカズラの葉が冬でも枯れず冬を耐え忍ぶことから、こう言われるようになりました。十月頃に採集して陰干しにします。
気味、薬味薬性
味は甘、性は寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺、心、脾、胃
効能
化膿症、アレルギー症の緩和及び解毒を行います。忍冬を乾燥したものを煎じて服用するも良いです。生の忍冬を、そのまますり潰しても使用できます。