漢方の魅力について

漢方理論

漢方の魅力。漢方研究会で発表

漢方太陽堂が発表報告した論文。
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漢方

2014年11月。伝統漢方研究会第11回全国大会。日本、名古屋東急ホテル

林泰太郎。福岡県、太陽堂漢薬局
福岡県福岡市、日本

緒言

西洋医学では、治りにくい病気や西洋学では諦められている病気が治るというのが漢方の魅力の一つになります。
去年の論文でお伝えしました非結核性抗酸菌症、肺MAC症も西洋学では治らない病気の一つと言われています。
今回の論文では、漢方では治すことが出来る病気についてお伝えできたらと思います。

症例1

薬歴6559、30代女性
レイノー病と診断された女性より相談を受けました。

レイノー現象とは、手や足の指先の小さな動脈の血流不足が発作的に発生し、冷感や皮膚色の変化が現れることを指します。

基礎疾患が不明な場合をレイノー病と呼びます。レイノー病は、40歳以前の若年女子に多発する傾向にあると言われています。この患者さんは、基礎疾患に黒皮症とシェーグレーン症候群がありました。

元々は、自己免疫疾患より症状が出ているものと思われます。レイノー病が悪化してしまっている為、指の壊疽まで起こってしまっていました。

2013年12月10日
右手小指。脾、陰、マイナス0.1、4プラス、補中益気湯加人参。初糸練功
足先の冷え、レイノー症状。大腸、陰、マイナス0.5、5プラス、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
当帰四逆加呉茱萸生姜湯を煎じ薬で満量。補中益気湯加人参の粉薬を3分の2量で治療を開始しました。
2014年1月7日
右手小指。脾、陰、1.7、4プラス、補中益気湯加人参
左足薬指。脾、陰、0.8、3プラス、補中益気湯加人参
足先の冷え、レイノー症状。大腸、陰、1.5、5プラス、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
冷えは変わりないが色は、少し変わってきているとの事。見た感じとしては血流が大分改善していました。
2014年2月4日
右手小指。脾、陰、2.9、4プラス、補中益気湯加人参
左足薬指。脾、陰、1.6、3プラス、補中益気湯加人参
足先の冷え、レイノー症状。大腸、陰、3.2、5プラス、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
冷えも大分改善してきているとの事。左足以外は、大分壊死も改善してきているとの事でした。
見た目も黒い部分がなくなり皮膚が盛り上がってきていました。
2014年5月13日
右手小指。脾、陰、5.1、2プラス、補中益気湯加人参
左足薬指。脾、陰、4.6、2プラス、補中益気湯加人参
足先の冷え、レイノー症状。大腸、陰、5.2、2プラス、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
大分暖かくなってきている事もあり冷えは、良くなっているとの事。
病院で一番驚かれたのが、強皮症の部分が進行していないのがびっくりされると言っていた。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、強皮症にも使うことのある処方なのでその為かはわからないが症状の改善が見られていました。
2014年7月8日
右手小指。脾、陰、7.1、プラス3、補中益気湯加人参
左足薬指。脾、陰、5.7、2プラス、補中益気湯加人参
足先の冷え、レイノー症状。大腸、陰、6.3、2プラス、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
最終的な薬方

  • 当帰四逆生姜湯加熱附子0.5呉茱萸1.2黄耆2.1人参3.0紅花1.1桃仁4.0
  • 補中益気湯20分の11加炙甘草0.4防風1.8人参3.2露蜂房0.3

残念ながら漢方太陽堂にきた時より壊死が大分進んでいた足の薬指は、治す事が出来ず取れてしまったとの事。しかし、手の指は良くなり壊死の部分は改善しました。
膠原病が元にあり、レイノー病が悪化してしまった患者さんであるが少しずつ冷えも良くなり血色も改善してきました。
救えなかった指があるが、病院での治療に限界を感じていた時に漢方太陽堂に来られました。
痛みは消えていないが漢方太陽堂に来られた事で治らないと思われた病気が改善していく事で希望が持てたとおっしゃっていました。
漢方の魅力は、治せないと思われた病気が改善していく事で患者さんに希望を与える事も魅力の一つです。

症例2

5年ほど前より慢性腎不全により悩まれている男性より相談を受けました。
腎臓の働きは、老廃物や水分などを排泄し、尿をつくるための臓器になります。
他に、血液の浄化、老廃物や毒素の排泄、体内の水分量や電解質の調節、ホルモンの分泌なども行っています。
腎臓病で透析などをされている方は、血液に毒素がたまる為、血液の毒素を取る為に透析をします。
腎臓病の種類には、慢性腎炎、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、多発性のう胞腎、ネフローゼ症候群といった病気があります。
腎臓病の主な症状として、たんぱく尿、血尿、むくみ浮腫、高血圧、尿量の変化などがみられます。腎臓病が著しく進行すると、尿毒症という深刻な状況になります。

腎臓の一般的な検査には、尿たんぱく定性検査、尿潜血定性検査やクレアチニンCr、尿素窒素BUNなどが指標に上げられます。
特にクレアチニンの数値が重要視されます。
クレアチニンとは、アミノ酸の一種であるクレアチンがエネルギーを放出する時に作られる代謝産物です。
健康であれば、血液中のクレアチニンは腎臓の糸球体でろ過され、尿細管ではほとんど再吸収されずに尿中に排出されます。
腎臓の機能が障害されていると、尿中に排泄される量が減少し、結果として血液中に溜まります。
クレアチニン値は、腎臓の機能の低下とともに値が高くなってきます。
基準値は、だいたい男性で0.6から1.1mg/dl、女性で0.4から0.7mg/dlです。患者さんの症状などによって異なりますが、血清クレアチニン値が8.0mg/dl以上となると透析導入が検討されます。
病院では、腎臓に関しては治療方法がなくこれ以上進行しないように最低限のタンパク質に制限されている。
ここが、東洋医学とは違う点となり東洋医学では治る事を前提に治療をしていく。
腎臓に関しては、東洋学でも治療が難しい分野になるがクレアチニンが透析手前5から6にいかなければある程度のたんぱく質をとって頂き糸球体を作る手助けにする。
この時は、脂の少ないイカや白身の魚を中心に摂って頂くと毒素も少なく糸球体を作る手助けになります。
初回相談時、クレアチニンが4.59。病院よりもう少し上がったら透析をすると言われていました。
元々不摂生がちでしたが、慢性腎不全と言われてから摂生するようになったと言っていました。
血圧も高く一時期、最高血圧が170まで上がった事もあったとの事でした。
2013年9月17日
腎臓、陰、0.3、5プラス、八物降下湯、初糸練功
腎臓、陰、0.3、5プラス、小柴胡湯去生姜
この患者さんは、血圧が一時期高かった事もあり八物降下湯の証も確認しました。
腎臓では、基本的に使われる処方が柴胡剤になる為、小柴胡湯にて治療を開始した。
2013年11月16日
腎臓、陰、3.1、5プラス、八物降下湯
腎臓、陰、3.3、5プラス、小柴胡湯去生姜
体調自体は悪くなく、合数も順調に改善していたがクレアチニンが高くなってしまい4.69まで上がってしまいました。八物降下湯に切り替え治療方針を変える事にしました。
2013年12月14日
腎臓、陰、3.6、5プラス、八物降下湯
腎臓、陰、4.0、5プラス、小柴胡湯去生姜
合数も4合を越えてクレアチニン4.34に。クレアチニンも下がりご本人も喜ばれていました。
2014年5月21日
腎臓、陰、7.8、1プラス、八物降下湯
腎臓、陰、8.3、プラス2、小柴胡湯去生姜
合数も7合を越えてクレアチニン4.02に。大分改善を見せていました。
治療をする事で、クレアチニンの数値が大分改善してきました。
基本、地黄剤は腎負担がかかり腎不全の方には柴胡剤を使う事が多いです。
この方は、柴胡剤よりも地黄剤が合っていた為クレアチニンも下がってきているものと思われます。
最初に問診したときには、食べ物らしい食べ物を摂っていないとおっしゃっていました。
しかし、今は魚やイカも食べられると食事の制限が少なくなった事に喜んでいました。
レイノー病の方同様に、治る事はないといわれている病気が改善しています。

終わりに

自分は、元々調剤薬局で働かせて頂きました。
1日に400名ほどの患者様がくるような大きな調剤薬局でした。
総合の病院の前の門前薬局ですので、難治性の患者さんも多数いらっしゃいました。
当初、自分は今携わっている病気が治るとは夢にも思わなかったです。
そんな中病気が治るという素晴らしさに感動しました。
薬を手放し普通に生活できるようになるという事は素晴らしい事です。
今回は、2例という少ない例でしたが今後漢方薬の魅力をもっと大勢にお伝えできたらと思います。

参考資料

木下順一朗著。古方これだけ覚えれば絶対だ。伝統漢方研究会

使用した薬剤。

症例1で使用した生薬、エキス剤
補中益気湯、株式会社長倉製薬
人参末
当帰四逆加呉茱萸生姜湯。当帰、桂皮、木通、各3、細辛、甘草各2、大棗5、呉茱萸2、乾生姜1
例2で使用した生薬
小柴胡湯。柴胡7、半夏5、乾生姜1、黄芩、大棗、人参各3、甘草2
七物降下湯。当帰、川芎、芍薬、熟地黄各3、黄耆3、釣藤4、黄柏2