逆流性食道炎は漢方治療。漢方研究会で発表
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逆流性食道炎。
2008年11月。伝統漢方研究会第5回全国大会。日本、二日市温泉大丸別荘
金沖良子、太陽堂漢薬局。福岡県福岡市、日本
諸言
逆流性食道炎とは胃から分泌される胃酸が、食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し傷つけることで起こる炎症を言います。逆流性食道炎は、食べ物や胃酸が逆流しないように閉まっているはずの噴門が何らかの原因で開くことにより、胃の内容物が食道に逆流して胸焼けなどの症状を起こす。逆流性食道炎の患者数は食生活の欧米化などで日本でも増えているようです。
症例1。54歳女性、体重47キログラム、身長160センチメートル
主訴。胃が重たく、痞える感じがある。食事が摂れない。安定剤をもらっていてそれを飲まないと落ち着かない。安定剤を飲んでいる時は良い。2006年7月に胃腸科に行き、胃の透視検査の結果、逆流性食道炎の薬をもらってしばらく症状は落ち着いていたが、また悪くなり胃カメラの検査をしたが異常はなく自律神経だろうということで安定剤をもらって服用しています。
来局時所見。現時点では、病院ではどうしょうもない、逆流性食道炎はよくならないと言われ通院を止め太陽堂漢薬局に来局された。
治療経過
- 胃の不快感。臓腑病、脾、陽証0.3合3プラス。安中散加茯苓
- 逆流性食道炎。臓腑病、小腸、陽証2.2合3プラス。生姜瀉心湯
- 五志の憂。臓腑病、大腸、陽証0.1合プラス。半夏厚朴湯
漢方薬は安中散加茯苓、半夏厚朴湯を投薬、生姜瀉心湯の代わりに、食前食後などムカつきのある時など生姜をすって水で溶いて飲むように指示。
6ヵ月後
- 胃の不快感。臓腑病、脾、陽証4.1合プラス。安中散加茯苓
- 逆流性食道炎。臓腑病、小腸、陽証6.2合プラス3。生姜瀉心湯
- 五志の憂。臓腑病、大腸、陽証4.8合プラス3。半夏厚朴湯
一進一退を繰り返していましたが、食欲も出てきて、あまり気にしなくて何でも食べれられるようになった。
12ヵ月後
- 胃の不快感。臓腑病、脾、陽証8.4合プラス2。A、安中散加茯苓、Z
- 逆流性食道炎。臓腑病、小腸、陽証9.1合プラス1。B、生姜瀉心湯Aから安中散加茯苓
- 五志の憂。臓腑病、大腸、陽証9.1合プラス1。S、半夏厚朴湯
- 窮仙穴。臓腑病、肺、陽証0.1合4プラス。Z、半夏厚朴湯加黄芩柴胡
生体内環境を確認し、安中散加茯苓と半夏厚朴湯加黄芩柴胡に変更。
13ヵ月後
- 胃の不快感。臓腑病、脾、陽証9.5合プラス1。A、安中散加茯苓
- 逆流性食道炎。臓腑病、小腸、陽証9.6合プラス1。B、生姜瀉心湯
- 五志の憂。臓腑病、大腸、陽証9.7合プラス1。S、半夏厚朴湯
- 窮仙穴。臓腑病、肺、陽証4.1合1プラス。Z、半夏厚朴湯加黄芩柴胡
漢方薬を変えて、今までと違うスッツキリ感があり、調子はいたって良い。生体内環境改善のため来局されておられる。
症例2。55歳女性、体重48.5キログラム、身長152センチメートル
主訴。逆流性食道炎、更年期障害、初期のリウマチ
来局時所見。喉の渇き、違和感、時々胃の痛み、起床時に時々指のこわばり、のぼせ、手足の冷え、痺れの症状がある。現時点では病院には通院されていない。
治療経過。
- 逆流性食道炎。臓腑病、胃、陽証0.5合3プラス。生姜瀉心湯
- 更年期障害。臓腑病、大腸、陽証1合3プラス。加味逍遙散
- リウマチ。臓腑病、脾、陽証0.3合3プラス。竜仙合麻杏薏甘湯
骨仙、加味逍遙散、半夏瀉心湯。骨仙を投与。
12ヵ月後
- 逆流性食道炎。臓腑病、胃、陽証7.7合プラス3。生姜瀉心湯
- 更年期障害。臓腑病、大腸、陽証8.1合プラス2。加味逍遙散
- リウマチ。臓腑病、脾、陽証6.8合1プラス。竜仙合麻杏薏甘湯、骨仙
胃の調子はよく、気分も楽になってきた。
20ヵ月後
- 逆流性食道炎。臓腑病、胃、陽証9.3合プラス2。生姜瀉心湯
- 更年期障害。臓腑病、大腸、陽症9.8合プラス1。加味逍遙散
- リウマチ。臓腑病、脾、陽証9.8合プラス1。竜仙合麻杏薏甘湯、骨仙
夏バテも無く精を出して草取りされているとのこと。
考察
逆流性食道炎は胸焼け、嘔吐症として従来捉えていた病態の中の一つだと思われます。逆流性食道炎の証は半夏瀉心湯に生姜を加えた生姜瀉心湯証だと思われます。安中散証の病態は神経性胃炎です。平胃散証の病態は食滞です。逆流性食道炎と胸焼けの症状は同じですが、病態が異なります。
長い間原因のわからない頑固な咳で苦しんでおられた方、原因不明の胸痛で苦しんでおられた方なども、検査の結果が逆流性食道炎と分かり漢方薬治療に取り組んだところ、嘘のように症状が改善された例もあります。
また五志の憂の治療も合わせて取り組んだほうが改善が速く感じられます。西洋医学で症状を緩和しても改善が難しいと思われる分野で、逆流性食道炎は漢方治療の得意分野の一つといえます。