当帰建中湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰四逆湯、当帰芍薬散

漢方薬

日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。
一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。

当帰建中湯。金匱要略

改善例

腹膜炎
女性。漢方処方応用の実際より引用

患者は32歳の女性。約8ヶ月前、人工流産の手術を受け、その後腹膜炎になり、帯下、血塊が下がり右腹が痛み、発熱が続いて入院していた。

現在は腹部が膨満し、圧重感があり、寒い目に遭うと症状が激しくなる。ことに右下腹部が重苦しく圧痛が著名で右の腰から下肢にかけて冷える。熱はほとんど平熱になったが頭が重く疲れやすく動悸があり、安眠ができない。食欲は普通で大便は4、5日に1回、月経は少し遅れるが毎月ある。

治療として加味逍遙散を1週間服用したが変化がなく、当帰芍薬散にすると反って小便が詰まる感じを訴え、八味丸にすると小便の詰まるのは良くなったが他の症状が良くない。そこで当帰建中湯に変えたら4週間で全治した。

処方薬味

甘草甘草 生姜生姜 膠飴膠飴
芍薬芍薬 当帰当帰 桂皮桂皮
大棗大棗    

適応疾患

月経痛、下腹部痛、腰痛

使用目標

貧血や冷え性がある方に用います。腹が急に激しく痛み、脈が渋り弦の方に用います。この痛みは引きつれるような痛みが多いです。

体力のない虚弱な人が、熱病にかかった初期、2、3日目ごろ、心悸亢進、動悸して身体が苦しい方に用います。

身体が虚弱で疲れやすく、腹壁の筋肉が薄く腹直筋のみが拘攣し、あるいは腹が痛んだり動悸、鼻血、夢精、手足のだるさ、手足の煩熱感、咽喉や口の乾燥、尿の量や回数が増えるなどの症状を訴えられる方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    太陰病、虚証
  • 十二臓腑配当
    肝、脾
  • 方意
    血虚。貧血、冷え性
    身体全体の虚証。疲労倦怠、顏色不良、四肢倦重、身体疼痛
    各臓器の虚証。心悸亢進、腹痛、精力減退
    虚証。手足の冷え、咽乾
    微熱血虚。鼻血、貧血
  • 備考
    小建中湯に当帰が入った薬方です。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯。傷寒論

呉茱萸

処方薬味

細辛細辛 甘草甘草 生姜生姜
芍薬芍薬 当帰当帰 桂皮桂皮
大棗大棗 木通木通 呉茱萸呉茱萸

適応疾患

凍傷、腸の疝痛、慢性腹膜炎、子宮脱、開腹手術後の癒着から来る腹痛その他の疼痛、下腹部を中心にして腰部、下肢などに波及する疼痛、レイノー病

使用目標

手足が冷えて腹が張って痛んだり、或いは腹鳴して下痢したり、或いは腰痛、頭痛、帯下、生理不順などがある方に用います。腹部軟弱で緊張感が無く、ガスが溜まって虚満を呈し、或いは表面のみが緊張して腹直筋が拘攣する方に用います。当帰四逆湯証より久しく体内が冷えている方に用います。

当帰四逆湯。傷寒論

細辛

改善例

脱疽
女性。漢方処方応用の実際より引用

患者さんは足の脱疽で目標は、足の冷えることと脈の細微であったことと足背動脈の触知し難くなったことであった。これが当帰四逆湯で著効を得た。

処方薬味

細辛細辛 木通木通 当帰当帰
芍薬芍薬 甘草甘草 桂皮桂皮
大棗大棗    

適応疾患

凍瘡、腰痛、バージャー病、レイノー病、冷えによる腹痛、慢性腹膜炎、子宮脱、婦人科疾患の腹痛

使用目標

手足が冷えて、腹が張って痛んだり、或いは腹鳴して下痢したり、或いは腰痛、頭痛、帯下、月経困難などがある方に用います。脈は細くて弱く触れ難いものが多く、腹部は軟弱で緊張感がなく、或いはガスがたまって虚満を呈し、或いは表面のみが緊張して腹直筋が拘攣する方に用います。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    太陰病、虚証
  • 方意
    寒証。手足厥寒、腹満、下痢
    寒証による疼痛。下腹部痛、腰痛、四肢痛。虚証、疲労倦怠、脱力

当帰芍薬散。金匱要略

白朮、蒼朮

処方薬味

当帰当帰 白朮、蒼朮白朮 川芎川芎
芍薬芍薬 茯苓茯苓 澤瀉澤瀉

適応疾患

冷え性、妊娠時中の諸種の障害、習慣性流産、早期破水、腹痛、生理不順、その他の婦人科的疾患、女性の虚弱体質

使用目標

痩せ型で貧血気味の婦人、手足や足腰が冷え、脈も腹部も緊張が弱く頭重感、頭痛、眩暈、肩凝り、動悸、耳鳴り、腰痛などを訴え疲れやすく月経困難や月経不順があるかたに用いる方剤です。

漢方の証、方意

  • 病位、虚実
    太陰病、虚証
  • 十二臓腑配当
  • 方意
    血虚、瘀血による貧血、手足の冷え、小腹硬満、月経異常。水毒による上腹部の振水音、筋肉痛、関節痛、尿利不利、浮腫傾向。虚証による無気力、疲労倦怠。しばしば瘀血、水毒による眩暈、頭重、感情不安定、麻痺、不随運動などの精神神経症状に用いる方剤です。
  • 備考
    昔から当芍美人という言葉がある位で、色白やせ方なで肩で、冷え性の虚弱タイプに用います。