薏苡仁、竜眼肉、竜骨、竜胆、竜脳、良姜

漢方生薬

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

薏苡仁

ハトムギの果実の果皮、種皮を取ったものと言われていますが、果皮と実の付いた物が良いと言われています。食用と薬用があります。日本で薬用として使用されている薏苡仁はモチ型です。東南アジアで食用とされている物は大粒のものが多いです。

種皮を除かないものはハトムギと言い、飲料原料としても多量に使われています。民間薬としてのハトムギは、ゲンノショウコ、ドクダミに続き有名で、現在では漢方薬として各処方に用いられるよりも、民間薬として単味で使用される量の方が多いようです。

薏苡仁と数珠玉とが間違われることが良くあります。数珠玉は形が薏苡仁より丸みを帯びていて、外皮は薏苡仁より一層、硬く昔は数珠玉をハトムギと称して売られたことがあったようです。

気味、薬味薬性

味は甘、淡、性は微寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

脾、胃、肺

効能

  1. 伝染性の表面滑沢半球様のもののイボに良いようです。
  2. 胃腸を健やかにし利水させ、神経痛などに効きます。
  3. 肺および胃腸系のポリープ、腫瘍などに用い、それらの解消をはかります。
  4. 瘀血を解毒し、血液を活性化して、肌を潤しシミを薄くします。
  5. 末梢毛管拡張作用、抗ウイルス作用も報告されています。

適応とする体質と処方例

  • 冷え込みやストレスから、神経痛やリウマチ痛をおこしている方、体内に非生理水分があって、これが原因になってアレルギー反応による中毒症状をおこしている方に用います。処方例。麻杏薏甘湯
  • 皮膚、筋肉の水分代謝障害から起こる疼痛に用います。処方例。薏苡仁湯

竜眼肉

竜眼肉

熱帯地方に産するリュウガンの果実です。殻と核仁との間の黒き肉のあるところを使います。酒に浸して乳鉢にて砕いて使用します。丸薬を造るにはそのまま使い、煎じ薬にて使用する場合は少し炙って使用します。販売品中、大粒を虎眼、中粒を竜眼、小粒を人眼、最小粒を鬼眼と言います。竜眼中の核仁を取ったところ、普通に使う物を桂円肉と言っています。

気味、薬味薬性

味は甘、性は温

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

心、脾

効能

気を使い過ぎたり体力が無くなって、血行が悪くなって栄養不良となったりしている方の胃が一人前に働けるようにします。その他、上記のような滋養強壮によって心臓も働けるようにします。

適応とする体質と処方例

思い過ごしが元で、心臓や消化器を損ねて精神不安症や、下血をしたりし、消化器の働きを元の健康な状態に帰したい時に用います。処方例。帰脾湯

竜骨

龍骨

竜骨は、古代の象、犀、鹿、猪、牛の遺骸が長く地層中に埋没して、骨格、牙、歯、角などが脆い物質となって化石になった物を言います。化石と言ってしまうと岩石のように思ってしまいますが、上記の動物のミイラのもっと乾燥して変化した物と考えるべき物です。竜骨の有効成分は、ミネラルのみならずミイラの変化産物のアミノ酸類に有るかもしれないということです。色の白い竜骨は一番良く、これに次いで黄色、黒い色は良くないようです。また、舌で舐めて粘るものは良いと言われています。

気味、薬味薬性

味は甘、渋、性は平

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

心、肝、腎

効能

心臓の苦情や肝気の昂ぶりに効くと思われます。性的神経症の初期によく効きます。

適応とする体質と処方例

遺精や早漏等を、たびたび発する性的神経衰弱の初期。更に疲れ過ぎてイライラしたり、少しの事でイラツイタリする方に用います。処方例。桂枝加竜骨牡蠣湯

竜胆

竜胆

リンドウの根、または根茎の乾燥した物です。リンドウの葉は、イヌホウズキの葉に似ているしリンドウの根は、硬く胆のようであるので竜胆と言われました。淡黄褐色を呈して長いヒゲ根が沢山付いて、よく揃ったものが良い。または、なるべく肥大し柔軟なものを良品とします。竜胆は苦味健胃薬として、家庭薬原料としても繁用されています。

気味、薬味薬性

味は苦、性は寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、胆

効能

肝臓や胆の異常亢進を鎮めます。腎臓、膀胱の殺菌消炎作用として働きます。

適応とする体質と処方例

  • 尿道や子宮と膣部の炎症、つまり急性の尿道炎や膀胱炎、帯下、陰部掻痒、淋病などの各種炎症や、菌からの中毒症状を起こしている方に用います。処方例。竜胆瀉肝湯
  • 日頃、お酒をよく飲み、瘀血のある方の上下肢痛、あるいは半身痛があるものに用います。処方例。疎経活血湯

竜脳

竜脳

熱帯アジアに分布するフタバガキ科の常緑樹、リュウノウジュの樹脂を加工した物を用います。幹や枝の切り口や揉んだ葉には、樟脳に似た強い芳香があり、ときに幹の割れ目の中に自然に結晶が出来ていることがあります。これを竜脳と呼んでいます。

気味、薬味薬性

味は辛、苦、性は微寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

心、肺、脾

効能

鎮痛効果があります。視力をよくします。意識障害などの気つけとして用います。

適応とする体質と処方例

高血圧に伴う動悸、手足の痺れ、肩の凝り、逆上せ、耳鳴り眩暈、頭重感のある方に用います。処方例。牛黄清心元

良姜

良姜

高良姜の根茎を薬用にしたものです。

気味、薬味薬性

味は辛、性は熱

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

脾、胃

効能

胃の働きを盛んにして、冷えからくる痛みを鎮める。

適応とする体質と処方例

  • 胃が冷たく感じて痛みがある。虚弱になっている怠けた胃の働きを活発に温めます。
  • 生姜と同じ働きで、生姜より働きが強いです。生姜の辛温に対して、良姜は辛熱となります。