食養生の食材の応用を病へ2

漢方コラム

2020年11月17日

便通の食養生

便通は悩む方が多い疾患です。便秘と下痢は真逆の病態として捉えます。胆汁の流れが悪くて起きる脂溶性便、細菌性の下痢は体質的な下痢とは異なります。

便秘は実証となり、瀉法にて便を出します。便秘は升の状態になり、降にて腸の蠕動運動を促進し、便を降ろします。便秘は収の状態ですので、散により固い便を軟らかくします。

逆に、下痢は虚証となり、補法により失われた体力を補います。便が降りる下痢は降であり、升により下方向に降り易い便を上方に留めます。下痢は散の状態ですので、収により柔らかい便を固めます。

便通は東洋医学の補瀉、収散、升降の概念が分かりやすい病態です。

便通の食材

便秘に良い食材は、瀉、降、散です。

紫蘇、胡椒、昆布、スイカ、せり、茄子、ホウレン草、梨、薄い緑茶、バナナは涼、瀉ですなど。

下痢に良い食材は、補、升、収です。

ヤマイモ、リンゴ、栗、胡桃、ウナギ、蒲陶など。

二日酔い

お酒を飲み過ぎた時の二日酔い、辛いですね。二日酔いにも色々なタイプが有ります。吐き気がする人、浮腫みやすくなる人、様々です。お酒の二日酔いの予防をする食養生です。

お酒に強く、飲んでも顔が赤くならない人、翌日にお酒が残る人

  • 顔が赤くならないのは涼、寒の状態。それに対し温の食養生をします。温によりアルコールの代謝を促進をします。
  • 翌日までアルコールが残る状態は収。それに対し散の食養生をします。散によりアルコール、アルデヒドの代謝排泄を早めます。
  • 温、散の食材。辛い、或いは香りがする食材が多いです。ニンニク、紫蘇、ミカン、胡椒、生姜、ニラ、ネギ、玉ねぎ、パイナップルなど。

お酒に弱く、飲んだら顏が赤くなる人、顏が火照り、のぼせる人

  • 顔が赤くなるので温、熱の状態。涼の食材にて冷やします。
  • 火照りやのぼせは升の状態。降の食材にて下げます。
  • 涼、降の食材。海藻、菊花、スイカ、ハトムギ、セリ、トマト、ホウレン草、ハチミツ、牛乳、メロン、梨、緑茶など

二日酔いでなくても、普段から顔が火照ったり、のぼせやすい人は涼、降の食材を多めに摂ると良いでしょう。

二日酔い予防

お酒で浮腫みやすい人、ムカツキ吐き気がある人の予防食養生です。

浮腫みやすい人

  • 浮腫むのは湿の状態。燥の食材にて身体から水分を抜きます。
  • 燥の食材は、ニンニク、紫蘇、胡椒、生姜、ニラなど

ムカツキ、吐き気がある人

  • 吐き気やムカツキは温の状態。涼の食材にて冷やします。
  • 吐き気やムカツキは収の状態。散の食材にて発散します。
  • 涼、散の食材は、大根、海藻、菊花、スイカ、メロン、セリ、ハトムギ、茄子、ホウレン草、アスパラガス、蟹、バナナ、梨、緑茶など。

ちなみに大根葉は温、生大根は涼から平、大根を煮れば温になります。お酒の二日酔いでなくても、普段から浮腫みやすい人は、燥の食材を摂るように心掛けます。

食養生に厳密は不要

東洋医学の食養生の五気の寒熱、燥湿、収散、升降の使い方が少しづつイメージ出来てきたと思います。大事な事は厳密にしない事です。

日頃から食材を見た時に、寒熱は、燥湿は、収散は、升降はと考えます。考える癖を付けるとイメージが創られてきます。燥の食材でも強弱が有ります。大事な事は厳密にしない事です。

低血圧の食養生は高血圧の食養生の逆です。冷え症の人は、温の食材と身体から水分を抜く燥の食材が合います。「水は寒なり」です。

肥満と食養生

痩せたい。食べても肥らない人、羨ましいです。当たり前ですが、食べたカロリーが多く、それより消費したカロリーが少ないと肥ります。食事のカロリーを減らすのは

  1. 糖質、炭水化物を制限する。糖をエネルギーに変換するインシュリンは朝方が多く、夜は少なくなります。朝食で糖質、炭水化物を摂り、夜は炭水化物を控えます。夕食です、夜食ではありません。特に夜8時以降は出来るだけ控えます。
  2. 糖質、炭水化物と油脂を同時に摂らない。
  3. ビタミン、野菜、ミネラル、海藻、頭ごと食べられる小魚などの海産物を摂りながら、低脂肪、高タンパクにします。

消費カロリーを増やすのは

  1. 基礎代謝を上げるために、筋肉を付ける。3ヶ月以上の期間を要します。
  2. 基礎代謝を上げるために、水泳などの20分以上の運動や半身浴も有効です。当日から代謝が上がります。
  3. 便秘を防ぎ、排便を促す。

肥満の食養生は温、燥、散

東洋医学の食養生では

  1. 身体の基礎代謝を上げる温の食材
  2. 浮腫みを取る燥の食材
  3. 温と燥の働きを高める散の食材
    を摂ります。

例えば、牛肉は散ではなく収の働きが強いです。鶏肉は平、散でも収でもないです。鶏肉より牛肉の方が肥りやすい食材です。牛肉を食べる時は散の香辛料を使い、出来るだけ肥りにくくするのが大事です。

アレルギー

アレルギー疾患で悩まれる方は多いです。花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎、湿疹、結膜炎などです。

アレルギーには散

漢方ではアレルギーの場合、散、発散の治療や食養生をします。海産物による食中毒、蕁麻疹では香蘇散が有名です。構成薬味を見ると香附子、蘇葉、紫蘇の葉、陳皮、ミカンの皮を干した生薬と発散の漢方薬味が多いです。

橘皮大黄芒硝湯という漢方薬も有ります。魚介類や肉類、豆類、野菜等でも食中毒や慢性の蕁麻疹に使用します。これも橘皮、ミカン科の皮を干した生薬が主剤となります。このように漢方ではアレルギーに散の働きがある生薬を多用します。

食養生でアレルギーに対し散の働きがある食材は、発散作用のある紫蘇。利尿作用のあるウリ科のキュウリ、スイカ。消炎作用のある苦み、アクのある菊花、セリ、茄子、緑茶。消化酵素の多い大根、パイナップル。滋潤作用の梨。ミネラルの多い昆布、ワカメなどです。

他に高麗人参には異種タンパクに対するアナフィラキシー、皮膚反応を抑える働きがあります。また霊芝はヒスタミン、アセチルコリンに拮抗します。アーユルヴェーダ医学で使用する鬱金なども有効です。他に葉緑素、食物繊維、乳酸菌などの発酵食品、カルシウムなどもアレルギー体質の改善に有効です。