脂漏性湿疹。かけ橋掲載分
太陽堂漢薬局の患者さんに、毎月お配りしています。
脂漏性湿疹で頭部と鼻横に発赤
1957年生、男性
頭部の湿疹でお悩みの男性から相談を受けた。患部をみると発赤し、また鼻の横も赤くなっている。患部の箇所、湿疹の状態から、脂漏性湿疹と思われた。
脂漏性湿疹は、皮脂の分泌異常によって皮膚が変化し、発赤や掻痒を訴える皮膚疾患である。特徴として、頭部、髪の毛の生え際、鼻の横に好発する。また、酷くなると頭部からフケが出るようになる。
東洋医学では、解毒証と言われる体質になり、解毒証体質の改善を行う。食事を聞くと毎晩ビールで晩酌し脂物を食べるとの事である。糸練功で確認すると、皮膚病の反応穴と脾の臓陽証0合4プラスとが一致した。証は温清飲加連翹証と判断。
薬方は解毒証体質を目標に葉緑素製剤、そして脂質代謝を早める目的で選薬した。解毒証体質は、肝臓の解毒機能が弱まっている状態を捉えている。先天的、生まれながらに解毒能力が弱い体質もあれば、食べ物の影響、主に甘いものの摂り過ぎで、後天的に解毒能力が弱まった結果の体質もある。
解毒証体質は
- 手掌に汗をかきやすい
- フケが出やすい
- 首や股関節などリンパ部にコリコリしている部分がある
- 色黒
などを踏まえて証の判断をする。1と4の両方がある場合、生まれながらの解毒証体質の可能性がある。然し、1だけの場合、解毒証体質とは言い切れない。
1ヵ月後、糸練功の結果は6合に急上昇している。症状はやや良い位で目立った変化は無い。
2ヵ月後、8合。3ヵ月後、9合に成っている。鼻の横の発赤は目立たなくなったが、頭部の湿疹は相変わらずある様である。
4ヵ月後、10合プラス1。頭部湿疹は一進一退である。食事でお酒と脂物を同時に食べるのを注意して頂く。
漢方治療開始から1年後、糸練功の合数は10合プラスマイナスまで改善された。然し3ヵ月後、9.5合に下がってきた。合数悪化には何か原因がある。解毒証体質は、甘い物の他に油ものやアルコールの影響を受けやすい。食養生に気をつけ、2年間の漢方治療を行い治療終了となった。
湿疹。髪染めで顏がカブレたご婦人
1937年生、女性
髪染めで顔がカブレたご婦人から相談を受けた。髪染めで赤味の発疹が現れ、目が真っ赤になった。4ケ月間、皮膚科に通院したが良くならないとの事。糸練功にて、上気が原因と思われる桂枝加桂湯証を確認した。
漢方薬服用開始から1ヶ月後、頬の赤味が少し取れる。3ヶ月後には赤味はすっかり取れてきた。2、3ヶ月後には漢方治療を終了出来るかと思っていた矢先、右頬に赤味が出てきた。血熱の甲字湯加黄芩紅花証を確認した。上気を改善する漢方薬に血熱改善剤を加えた。体質改善は順調に進み、5ヶ月後にはお化粧をしても異状なく過ごせるようになられた。春の季節を迎えた頃、右頬の赤味が悪化した。暖かさを増す春先は、気温の上昇、陽気の上昇で血熱も上気どちらも酷くなる。食養生では、野菜、海藻類が熱を冷ます。食事内容も指導しご養生頂いた。
日中、農作業をしていると赤味の出る時もあったが、次第に出なくなった。毎日、元気に畑でお仕事が出来ると喜ばれていた。暖かい日は、顔が火照る。上気の発散には、発汗が良い。よく身体を動かし、たくさん発汗をすることをお勧めした。その後、再発防止の体質改善に力をつける為、漢方薬を減量し、可能な限り長くお続け頂いた。
挙式を控えた婦人の湿疹
1980年生、女性
結婚が決まり、挙式を控えた婦人から相談を受けた。背中の湿疹が酷く、痒みもある。綺麗な肌でウエディングドレスを着たい。冬場に酷くなるとの事だった。問診と望診では、東洋医学で言う血熱の湿疹で、加味逍遙散証という少陽病の体質と思われた。
少陽病の体質改善は、発表、発汗、発散して血熱を冷ます。漢方薬の内服は煎じ薬、散剤、エキス剤、丸剤など様々な剤形があるが、少陽病の発表剤は煎じ薬よりも散剤を用いたほうがより効果的である。散剤にて漢方薬を投薬した。この薬方は湿疹だけでなくシミやくすみを取る力にも優れている。1ヵ月後、改善スピードを速める為に生薬の外用薬も追加した。加味逍遙散証の食養生は、甘いものもそうだが、何よりも油ものが良くない。油ものを控えるようお伝えした。
漢方薬を飲み始めて3ヵ月後、肌の調子がとても良くなってきた。それから1ヵ月後、湿疹が落ち着いた綺麗な肌の状態で無事挙式を迎える事が出来た。
漢方で体質改善した場合、湿疹が再発することは非常に少なくなる。色素沈着も改善するので跡も残らず綺麗になる。挙式後、漢方薬の服用期間が空いた時期もあったが、体質改善を終えるまで出来るだけ切らさず続けるようお話した。続けた甲斐あり、治療開始から1年3ヵ月後、治療を終える事が出来た。
不安感をお持ちの脂漏性湿疹の女性
70歳代、女性
自律神経失調症と脂漏性湿疹がある女性の方から相談を受けた。脂漏性湿疹は、1年前から顔に症状が出てきて、化粧をしても隠れないくらいの湿疹と赤みがあり、痒みは無いようだ。自律神経失調症は、3年前より自覚症状が出ており、近所の集まりなどあると憂鬱になり、外に出るのも億劫だと言う。また、いつも気分が落ち込み、動悸などもあるそうだ。
脂漏性湿疹の証として、胃の腑、陽証、四物湯合黄連解毒湯証。自律神経失調症の証として、大腸の腑、陰証、茯苓飲合半夏厚朴湯。生体内環境の証として、大腸の腑、陰証、茯苓飲合半夏厚朴湯を確認した。
漢方薬を服用して2ヵ月が経った頃、脂漏性湿疹の状態に変化が出てきた。化粧をすれば、少し隠れるくらいに症状が治まってきたと言う。3ヵ月後には、もう見た目には分からないくらい症状が無くなって、肌が綺麗になっていた。自律神経失調症の方は、少しずつ眠れるようになってきたが、やはり調子が良くない日々が続いている。
脂漏性湿疹の治療を中心としてきたが、皮膚の状態が今よりも更に安定してきたら、自律神経失調症が改善するように、生体内環境の証に取り組んで行きたいと考えている。
目の周りの赤い湿疹でお困りの女性
1977年生、女性
目の周りが真っ赤に腫れた、細身で色白の女性が来店された。春から赤みがあり、秋口になって悪化。今は両目の周りと首、胸の上部に乾燥があり、痒み、赤みが痛々しい。涙もしみてしまう。生理は安定しておらず、手先足先に冷えがあり、2年前にも目の赤み症状が出たとの事。
糸練功では肝の陽証。0.1合に加味逍遙散証、0.4合に十味敗毒散証を認めた。煎じ薬、粉剤にてお出しした。
1ヵ月後、漢方を飲み始めた頃は目の辺りがすごく乾燥し酷かったが、その後症状は落ち着き、便通も改善。十味敗毒散証0.7合、加味逍遙散証1.9合まで改善。
2ヵ月後、まぶたの赤みは少し濃い目のピンクのアイシャドーにしか見えない状態まで改善。首の症状は出たり引いたりしている。風毒、真菌と思われる証に対し、外用を首に塗布して頂いた。
4ヵ月後、瞼の赤みは左のみ。右瞼の症状は殆ど改善された。首には見た目の症状はない。加味逍遙散証が5.1合まで改善されたためと思われる。十味敗毒散証の改善が今ひとつであるため、増量、外用も塗布し、経過をみて行く事にした。
現在も継続治療中であるが、婦人病や自律神経疾患に広く使われる加味逍遥散加味方が、目周辺の赤みのある湿疹に著効のあった一例である。