各種血栓症を含む瘀血疾患に対する駆瘀血製剤の効果

その他の病気

瘀血で駆瘀血製剤。国際学会で発表

漢方太陽堂が発表報告した論文。
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瘀血

1998年9月中医薬交流和現代、中医臨床国際会議。中国、長春中医薬大学

木下順一朗
福岡県福岡市、日本

諸言

瘀血とは基本的には循環障害を指す。具体的には血流停滞、血小板、血球の凝集閉塞、狭窄、血管外への出血、血管透過性増大、血液粘度の増大、血液凝固能の増大、血管壁の抵抗性増大、各種炎症性の鬱血や水腫等が考えられている。
一方、駆瘀血製剤は灯盞花、丹参、紅花、郁金等の瘀血に有効な薬味に拠って処方が構成されている。今回、駆瘀血製剤が有効であった瘀血例について報告する。

対象並びに方法

瘀血で駆瘀血製剤を服用した例の内訳は次の通りである。
下肢血栓症6例、上肢血栓症2例、脳梗塞2例、心筋梗塞1例、痔核2例、交通事故後遺症2例、肝硬変2例、無月経4例の21例である。全例西洋薬を服用又は西洋医学的治療をしていたが改善されなかったり、効果の明確でなかった例である。

四診により瘀血を確認後投与し、投与前後の自覚症状の改善と他覚的改善を基に効果判定を行った。また21例のうち、9例は田七人参を併用した。

例1。46歳、男性、会社員

主訴。痔核、腰痛
既往歴。特記すべきことなし。
現病歴。20代より痔が悪く病院や薬局等で座薬と軟膏を処方されていた。その度には改善していたが、今回は痛みが激しく出血もする爲、根本的に治したいということで1998年2月10日来局相談となった。
現症。身長163センチ、体重61キロ、足に軽い血管腫、回転性目眩、興奮時両手振戦、神経性食道狭窄、交感神経興奮によると思われる両手掌発汗がある。舌は薄い白苔がありやや乾燥している。
治療経過。痔核に対し駆瘀血製剤、出血に対し田七人参末、1日量3グラム、神経症に対し漢方抗ストレス剤を投与した。

2月24日。痔核よりの出血なし、痛みも軽快。

3月24日。痔核の痛みは軽くなったが、お酒を飲み過ぎた次の日に痛みがあるとのこと。

4月22日。痛み、出血全く消失。

5月22日。お酒を飲み過ぎても痛みは起こらないとのこと。同時に両手振戦、食道狭窄、手掌発汗も消失、腰痛も消失。以降、経過は良好である。

例2。40歳、女性、看護婦

主訴。交通事故後遺症
既往歴。特記すべきことなし。
現病歴。1996年12月、交通事故により鞭打ち症候群となる。事故後入院していたが退院後も症状が取れない為、職場復帰が出来ず自宅療養中である。西洋医学的病院で精神安定剤による治療を受けていた。漢方治療を希望し1997年11月13日来局相談となった。
現症。身長155センチ、体重56キロ、事故直後より不眠と36.8度ら37度位の原因不明の微熱が続いている。左胸痛、背中全体の痛み、左上腕の腫脹、咽喉の閉塞感がある。顏色は赤みがあり眼瞼は充血してる。よく上気し、大便は2日に1回やや硬い。舌色は深紅色で舌苔は無く、舌の乾湿は中間、舌下静脈の怒張がみられる。
治療経過。瘀血が認められる為、駆瘀血製剤と田七人参を投与。微熱に対しては補中益気湯加白参、不眠に対しては桂枝加竜骨牡蠣湯を投与。

11月27日。身体痛はやや軽くなるが、不眠の改善は見られない。微熱が無く気分の良い日があるとのこと。

12月24日。微熱は殆ど無く、眠れる日が出てきたとのこと。

翌年1月21日。微熱、身体痛、不眠なし。安定剤の服用を中止し、職場復帰をしたとのこと。

以降、経過は良好である

例3。58歳、女性、主婦

主訴。脳梗塞後の後遺症
既往歴。扁桃腺摘出、胆嚢炎により胆嚢摘出、子宮後屈
現病歴。1995年5月脳梗塞発症、脳外科病院に入院。退院後より抗凝血剤パナルジン服用。脳梗塞後より目眩、吐き気、頭痛が発作的に起こる。耳鼻科でも治療したが改善は見られなかった。
1997年3月15日漢方治療を希望し来局。
現症。身長155センチ、体重53キロ、最高血圧110、最低血圧50、不眠があり睡眠誘導体を1年半程前より常用している。眼瞼結膜は白く貧血の疑いがあり、口渇があり冷水を多飲、小便は1日5、6回。便秘がちである。舌には僅かに苔があり乾湿中間、舌下静脈の怒張がある。以前は暑がりであったが脳梗塞後、足の冷えがひどい。
治療経過。瘀血が認められるため、駆瘀血製剤。貧血と不眠、目眩を目標に四物湯合苓桂朮甘湯を投与。

3月29日。少し眠れるようになってきたとのこと。

6月4日。不眠は殆ど消失。発作もなく気分も良好。

7月12日。不眠はなく睡眠誘導体の服用も中止したとのこと。

9月20日。少し頭痛がするとの訴えあり。以前のような吐き気や目眩はないとのこと。現在の処方に呉茱萸湯を追加。

10月23日。症状は全て消失。以後、経過は良好であり、再発防止に山査子末を服用中である。

結果

1ヶ月以内に症状の消失した著効例3例、2ヶ月以上の服用により症状の消失、改善をした有効例16例。効果不明、無効例3例であった。特に発症後間もない上下肢血栓症、事故後遺症、痔核は何れも1ヶ月以内に症状の改善、消失が見られた。

考按並びに結論

駆瘀血製剤の抗凝血作用はすでに報告例があり、今回の結果もこれに追随するものとなった。また、駆瘀血製剤の服用により生理の出血量が増加する等多少の出血傾向がみられた例があった。

これらの例はすべて田七人参を併用することにより出血傾向は消失した。また、田七人参を併用する事により駆瘀血製剤の薬力が増したと思われる例が幾つか見受けられた。これは、田七人参の止血、去瘀の薬理作用による物と思われる。

これらの結果により駆瘀血製剤は広範囲の瘀血に対し有効と思われる。下肢血栓症、事故後後遺症等は現在有用な内服薬等が少ないので、駆瘀血製剤はもっと適用されてよい処方と考えられる。

駆瘀血製剤は、灯盞花、丹參、紅花、郁金等の配合製剤

漢方抗ストレス剤は、大棗、忘憂草、センソウ花、ネムの花、牡蠣末、ウコギ、甘草、百合、蓮実等の配合製剤