見た目が奇麗になってきた。漢方研究会で発表
太陽堂漢薬局が発表報告した論文。論文、改善例のご案内はこちら
アトピー性皮膚炎
2018年11月。伝統漢方研究会第15回全国大会。日本、福岡、AVAクラウンプラザホテル福岡
光井京子。福岡県、太陽堂漢薬局
諸言
アトピー性皮膚炎は、家族的にアレルギーの要因をお持ちの方が多いです。患者さん本人が喘息であったり、家族内に喘息や蕁麻疹を持っている等です。
アトピー性皮膚炎の好発部位は、肘内側、膝裏側、項、手、顔面等に多く発症します。皮膚は乾燥性で魚鱗状の痂疲が見られます。乳幼児では、顔面、頭部に湿潤、びらん、痂疲を伴い、次第に身体下部へ広がっていく傾向にあります。
西洋医学ではステロイドやビタミン剤、抗ヒスタミン剤で症状を抑える対処療法が主となり難治な疾患の一つです。今回漢方治療にてアトピー性皮膚炎の改善が確認されたので報告致します。
症例
主訴。アトピー性皮膚炎
既往症。なし
現症。19歳、1999年生。女性、身長151センチメートル、体重40キロ、舌色瘀血色、眼瞼充血、足のみ冷え性、口渇無し、水分摂取少ない、寝汗なし、食欲多いが野菜少ない、お菓子多め、小便普通でやや黄色い、便通正常、生理は順調、運動はたまにバトミントン。
病院で2017年11月にアトピー性皮膚炎と診断され、西洋薬とローションを使用。病院薬の効果を感じられず、長くステロイド剤を使用したくないとの理由で来局。
2018年4月。項部分。襟足部分から背中上部が酷く、掻きむしりの跡あり、乾燥して粉を噴いている様に見える、図1。
糸練功で確認した所、胆陽証、臓腑0.8合2プラス。加味逍遙散加荊芥地骨皮。補助剤に緑翠泉1包。適量診。3分の2量を約15パーセントUPした4分の5量で治療開始
自宅通学の学生だが、アルバイト等で食事は外食が多くスナック菓子が大好物で3食スナック菓子の時もある。まずは食生活の見直しを勧めた。食養生として緑のお野菜、ミネラルの多い海藻類を積極的に摂る事と、油物、砂糖は控えめにする事。スナック菓子を控える事。漢方薬の服用続けても食生活が乱れると改善し難い事等話した。
2018年6月。見た目が奇麗になってきたが、稀に痒みがでて掻きむしりたくなる。前より改善しているとご本人も自覚、図2。
胆陽証、経絡2.1合、臓腑2.7合2プラス。加味逍遙散加荊芥地骨皮。補助剤、緑翠泉1包
前回の食養生を再度徹底してもらい、蒸し暑くなってきたので、髪の毛をなるべく結ぶように伝えた。
図1 | 図2 |
加味逍遙散。裏熱虚証
逍遙散に山梔子、牡丹皮を加えた加味逍遙散の君薬は、当帰、芍薬、柴胡であり当帰は血を補い燥を潤し内部の痞えを散ずる温性の血虚を補う、補血剤。芍薬は血脈を和し、緩め痛みを止める緩和性鎮痛薬。当帰とともに血に働く。柴胡は胸脇苦満や往来寒熱を治す解熱健胃剤。
牡丹皮は瘀血を去る消炎性駆瘀血薬で山梔子は利水清熱。また白朮、茯苓は健胃、利尿。薄荷は清涼、発散。生姜と共に薬の吸収を良くする。
荊芥。味は辛、性は微温、帰経は肺。糸練功で確認
発散、発汗させ血行を良くする。精油の辛くて苦い成分は内臓を刺激し、良く働くようにし芳香で体内の毒素を発散させる。解熱、解毒作用。
地骨皮。味は甘、性は寒、帰経は肝、脾。糸練功で確認
訂補薬性提要「甘淡、寒、肺中の伏火を瀉し、血を涼し、虚熱を除く」と記されている。ホルモンの分泌腺を治療する力がある。
考察
漢方診療医典によると、加味逍遙散に荊芥地骨皮を各2グラムを加味すると良いとあるが、太陽堂漢薬局の過去の事例を見ると1対1ではなく1対1.5の割合が比較的多く改善している。
A | B | C | D | E、粉 | |
荊芥 | 1.6 | 1.5 | 2.0 | 2.0 | 0.33 |
地骨皮 | 2.0 | 1.5 | 3.0 | 3.0 | 3.0 |
これは私見だが、漢方診療医典が書かれた1969年から約50年経ち、当時よりも虚弱な人が増えた事。また元々加味逍遙散が虚証に使用する為、荊芥の発散の力が強すぎるため、比率が変わったのではないかと思う。
薬味の帰経確認方法。2人でする場合
荊芥
- 色体表の白を押さえて肺で合数確認。例1.0合
- 肺で反応する荊芥を手にのせると合数下がる。例0.2合
- 肺経だと確認できる
- 色体表の緑を押さえて肝で合数を確認。例1.0合
- 肝で反応しない荊芥を手にのせても合数は変わらない。例1.0合
- 肝経ではない
これを繰り返して帰経を確認出来ます。
色体表を触ることで白の場合は五色で肺の力が強まります。もしくは弱まります。一人で行う場合、色体表を指で挟むと糸練功反応ないです。輪ゴム等で肌に触れれば反応します。患者さんの文字を使って糸練功取る時も同じです。
今回使用した漢方薬、保険食品
加味逍遙散。当帰3、大和芍薬3、白朮3、北朝鮮産茯苓3、柴胡3、甘草2、牡丹皮2、上山梔子2、乾生姜1、薄荷1、荊芥1.6、地骨皮2.0
堀江生薬は堀江、高砂薬業は高砂、ウチダ和漢薬はウチダと省略しています。
参考文献
矢数道明著。漢方治療百話第二集。医道の日本社、1965
大塚敬節、矢数道明、清水藤太郎著。漢方診療医典。南山堂、1969
山田光胤著。漢方処方応用の実際。南山堂、1967
鈴木洋著。漢方のくすりの辞典。医歯薬出版株式会社、1994
木下順一朗著。古方これだけ覚えれば絶対だ。伝統漢方研究会、2008