癲癇(てんかん)に対する漢方薬の効果

その他の精神神経症

意識障害を伴うけいれん。漢方研究会で発表

太陽堂漢薬局が発表報告した論文。論文、改善例のご案内はこちら

癲癇(てんかん)

2008年11月、伝統漢方研究会第5回全国大会。日本、二日市温泉大丸別荘

島田敬一。福岡県、太陽堂漢薬局

諸言

癲癇とは、大脳の神経細胞の過剰な興奮によって発作を繰り返す病態の事を言い、現在わが国の患者数は60万人を超えると言われています。

発作の主な種類には、意識障害を伴うけいれんを起こす大発作、眠るように意識を失う小発作などがあり、発作を起こす原因は様々でテレビの画面から発せられる点滅する光などの軽度な刺激でも引き金になります。また発作は突然に起こる事が多く予測は難しいと考えられています。

西洋医学的な治療としては、抗癲癇薬による発作の予防、抑制が中心となり、作用機序は、神経細胞の興奮の抑制、興奮性神経伝達系の神経細胞グルタミン酸ニューロンの抑制、抑制性神経伝達系の神経細胞GABAニューロンの興奮、のいずれかになります。これによって発作抑制がみられるものは60から80パーセントと言われていますが、この場合でも薬は飲み続けていかなければならず根本的な治療方法は見つかっておりません。

また現在、東洋医学的な主な治療方法としては甘麦大棗湯と五苓散が良く使われています。今回は大発作について述べていきます。

症例1。17才女性、身長158センチメートル、体重46キログラム

主訴。癲癇の大発作。現病歴。2006年3月、初めての大発作を起こし来局。その1年10ヵ月後、2回目の大発作。

治療経過。2008年2月
  • 発作の症状。臓腑病、胆、陽証、9.9合、プラス1、柴胡桂枝湯加芍薬、Z
  • 発作の症状。臓腑病、心、陽証、7.6合、プラス2、牛黄清心元、Z
  • 発作の症状。臓腑病、腎、陰証、9.0合、プラス1、ヴァイタルゲン
  • 発作の症状。臓腑病、膀胱、陽証、9.3合、プラス2、五苓散、Z
  • 発作の症状。臓腑病、大腸、陰証、8.1合、プラス2、甘麦大棗湯、Z
  • 窮仙穴の反応。臓腑病、胆、陽証、0.7合、4プラス、Z五苓散合柴胡桂枝湯加芍薬

窮仙穴の反応として、五苓散合柴胡桂枝湯加芍薬証を確認。五苓散合柴胡桂枝湯加芍薬、牛黄清心元、甘麦大棗湯、ヴァイタルゲンを服用。その後、牛黄清心元は頓服としています。

2008年6月
  • 発作の症状。臓腑病、胆、陽証、9.9合、プラスマイナス1、D柴胡桂枝湯加芍薬、Z2
  • 発作の症状。臓腑病、心、陽証、9.8合、プラスマイナス、B牛黄清心元、Z1
  • 発作の症状。臓腑病、腎、陰証、10合、プラスマイナス、Cヴァイタルゲン、Z1
  • 発作の症状。臓腑病、膀胱、陽証、10合、プラスマイナス1、Z1五苓散
  • 発作の症状。臓腑病、大腸、陰証、9.2合、プラス2、A甘麦大棗湯、Z2
  • 窮仙穴の反応。臓腑病、胆、陽証、8.8合、プラス2、Z2五苓散加黄連合柴胡桂枝湯加芍薬

窮仙穴の反応としての証に黄連を加味する。

五苓散加黄連合柴胡桂枝湯加芍薬、甘麦大棗湯の2種のみ服用。漢方薬も減り、現在は元気に学校に行っておられるとの事でご家族の方も喜んでおられています。

症例2。30才男性、身長177センチメートル、体重83キログラム

主訴。癲癇の大発作

現病歴。19歳の夏に発病。病院のお薬は飲みたくないと2005年7月初来局。以来抗癲癇薬は飲んでいない。

治療経過。2008年2月
  • 発作の症状。臓腑病、胆、陽証、9.6合、プラス1、D柴胡桂枝湯加芍薬、Z
  • 発作の症状。臓腑病、心包、陽証、9.0合、プラス3、B牛黄清心元、Z
  • 発作の症状。臓腑病、腎、陰証、9.2合、プラス1、Cヴァイタルゲン
  • 発作の症状。臓腑病、大腸、陰証、9.5合、プラス3、A甘麦大棗湯、Z
  • 窮仙穴の反応。臓腑病、胆、陽証、0.1合、4プラス、Z柴胡桂枝湯加芍薬合五苓散

窮仙穴の反応として、柴胡桂枝湯加芍薬合五苓散証を確認。柴胡桂枝湯加芍薬合五苓散、牛黄清心元、ヴァイタルゲン、甘麦大棗湯を服用。

2008年6月
  • 発作の症状。臓腑病、胆、陽証、10合、プラスマイナス、D柴胡桂枝湯加芍薬、Z
  • 発作の症状。臓腑病、心包、陽証、10合、プラスマイナス、B牛黄清心元、Z
  • 発作の症状。臓腑病、腎、陰証、9.9合、プラスマイナス、Cヴァイタルゲン、Z
  • 発作の症状。臓腑病、大腸、陰証、9.9合、プラスマイナス、A甘麦大棗湯、Z
  • 窮仙穴の反応。臓腑病、胆、陽証、6.6合、2プラス、Z柴胡桂枝湯加芍薬合五苓散加黄連

窮仙穴の反応の証に黄連を加味。現在は仕事を始めようかと検討中との事です。柴胡桂枝湯加芍薬合五苓散加黄連、牛黄清心元、ヴァイタルゲンの3種のみ服用。再発防止、体質改善にも期待ができます。

結果、考察

現在、伝統漢方研究会では4つの反応点を発見しておりそれぞれに対して4つの処方で対応して症状の改善がみられていました。しかし、今回新たに発見された生体内環境の証を用いて標本治療を行えば本来必要であった処方の数も少なくなり患者さんの負担も軽減し、さらなる改善も期待できます。

また、五苓散に関しても現在言われている西洋医学的な利尿作用だけではなく腎証との関係が深い事から体内のミネラルを動かしてそれに伴い体内の水分が移動している作用もあると考えられます。

今回使用した漢方薬
  • 柴胡桂枝湯加芍薬。柴胡5半夏4広南桂皮3黄芩2白人参2芍薬2から6乾生姜1大棗2甘草1.5
  • 五苓散加黄連。沢寫6猪苓4.5茯苓4.5白朮4.5黄連0.5から1.5
  • 甘麦大棗湯。甘草5大棗6小麦20
  • 牛黄清心元、日本製薬
  • ヴァイタルゲン、日本制がん研究所