日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。
秦艽
リンドウ科の多年草、秦艽オオバリンドウをはじめ、チベット、雲南、四川などに分布するソケイジンギョウ、チベットリンドウなどの植物の根を用います。いずれもリンドウと同じゲンチアナ属の植物です。
気味、薬味薬性
味は苦、辛、性は平
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
胃、肝、胆
効能
リウマチなどの関節痛や筋肉痛、痺れ感などに用います。結核などの消耗性疾患にともなう発熱に用います。
適応とする体質と処方例
- 手足の痺れ感に対して用います。
- 水太りの方に顕著で、長く座っていると痺れる方や、運動麻痺、知覚異常のある方に用います。処方例。加味八仙湯
蜀漆
東南アジアやインド、中国南部に自生するユキノシタ科の常緑低木、ジョウザンアジサイの若い枝の葉を用います。根の部分は常山として有名です。
気味、薬味薬性
味は苦、辛、性は温、有毒あり
効能
抗マラリア、抗赤痢、抗アメバー作用があります。解熱作用があります。
適応とする体質と処方例
肝硬変などで腹水が溜まっているときに用います。処方例。牡蛎沢瀉湯
石膏
石膏には軟石膏と硬石膏の二種があります。軟石膏を上質としています。上品の物は束針状の結晶をなしていて、色は透明に近く、手でポロポロと砕くことができます。また、石膏の主成分は含水硫酸カルシウムです。
石膏は、またの名を白虎ともいわれています。中国では国の四方を守る神があると考え、東に青竜、西に白虎、南に朱雀、北に玄武の神があるのだと考えていました。これらは皆、色を表しており青竜は青、白虎は白、朱雀は赤、玄武は黒です。青色の薬草の麻黄を青竜、白色の薬物を石膏、大棗と使用した芫花を朱雀に、黒色の附子を玄武と関係づけました。以上のことから石膏を白虎と呼び、石膏の組み込まれている処方を白虎加人参湯と呼びます。
気味、薬味薬性
味は甘、辛、性は大寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺、胃
効能
大熱し、口が乾き舌がガサガサして息苦しい状態の腸、肺の熱を解熱します。石膏の主成分である硫酸カルシウムが利尿効果を発揮します。
適応とする体質と処方例
内臓の熱がきつく、大熱して体液などが汗に出てしまっていて、口渇や煩躁するようになっている方。処方例。白虎加人参湯
川芎
川芎は頭の苦情を楽にさせる薬で、頭に関するものとなります。中国の四川省から産するものを川芎、日本の豊後産を豊芎、山城産を京芎、山芎、城芎、丹後産を丹芎と名付けます。
川芎は不規則な塊茎で長さ5から10センチ、直径3から5センチで縦割したもので、外面は灰褐色で重なり合った結節の表面にコブ状の隆起があり、内面は湯通ししたため灰白色。灰褐色を呈し、半透明で質は硬く、特異な芳香があり、味は微に苦いです。外面が黒褐色、内面黄白色透明で気味辛烈なものほど良いとされています。
気味、薬味薬性
味は辛、性は温
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肝、胆、心包
効能
大脳に対して麻痺的な働きをし、鎮静の働きを成します。血行を盛んにし、末梢血管を拡張させ、血の道のうっ血を散らすのに用います。川芎は、温性の強壮薬で貧血性駆瘀血剤とし、鎮静、鎮痛の効があり、通例当帰と併用されることが多いです。
適応とする体質と処方例
風邪をひいたとかアレルギー反応でヒスタミン中毒を起こし、それがきつい逆上せとして表れ、頭痛、目が眩む、ふらつく、鼻が詰まる等、頭部に苦情がある場合に用います。処方例。川芎茶調散
穿山甲
哺乳類のセンザンコウのウロコを薬用にします。身体は肥大で1メートルもあり、歯がなく蟻を捕食します。蟻を捕食しているので蟻に噛まれた傷に効くと言われていますが、その他のオデキにも使用します。アルマジロに似ていますが、似て非なるものです。
気味、薬味薬性
味は鹹、性は微寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肝、胃
効能
催乳作用があります。オデキの腫れを散らし膿を排出します。
適応とする体質と処方例
催乳に用います。処方例。山甲下乳湯