香附子、牛膝、呉茱萸、牛蒡、牛蒡子、黒胡麻、五味子

漢方生薬

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。
初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

香附子

香附子には、シペレン、シペロルなどの約1パーセント含有の精油が入っているので、香ばしい匂いがするので香附子と言われています。

精油が有効成分で、その香りが気の薬と言われています。気とは気分のうっとおしい状態や、のぼせ上がっている状態で、香附子は各所の臓器が働きすぎたり、鈍ったりしている機能亢進、衰退を調える働きがあります。

気味、薬味薬性

味は辛微苦甘、性は平

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、三焦

効能

気を調え鬱を解消します。月経を調え止痛します。
香附子は血の道の薬といって、吐血、下血、血尿、子宮出血、生理不順に使用されていますが、駆瘀血剤ではありません。

殆どの病気は気の病から起こり、そのために血が乱れ、血の道の病状が出現します。香附子は機能の乱れを治め、必然的に血の病も治まります。
香附子は女性の聖薬と言われるため香附子と血の道を結び付けたがるが、女性に気の乱れが生じやすいため、気の薬である香附子と血の道の薬とを併用するためです。当帰、地黄と併用します。

胃が悪くて気分が悪い時は人参、白朮と併用します。胃の悪い人が、胃が原因で様々な苦情を呈する時は生姜と併用します。腹がなる時は厚朴、半夏と併用します。心臓の気の乱れに山梔子、黄連と併用します。アレルギーで気分の悪い時は紫蘇と併用します。

適応とする体質と処方例

  • 頭痛、頭の逆上せ
  • 胃の働きが鈍り、消化不良でいつも食物が胃に溜まって胸焼けがするもの
  • 神経が興奮して、痙攣して痛みのあるもの

民間療法

  • 気管支喘息に5グラム、生理不順に10グラムを内服で。ハマスゲの根塊を、2から2合半の水で半量に煮詰め、毎食前に服用。

牛膝

牛膝はイノコヅチの根を乾燥したもので、イノコヅチの茎は牛の膝に似た節があるので牛膝の名を得ました。

イノコヅチは方々の山野に自生していますが、節が大きく茎が紫色で根が太くて長く、柔軟性があり、潤いのあるものほど効力があり、節が細く茎が青色で根の短いものは、なるべく避けたほうが良いとされています。

気味、薬味薬性

味は苦、酸、性は平

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、腎

効能

牛膝は、酒で修治した製牛膝を用います。
関節痛、打撲、神経痛、生理痛などの痛みを治す働きがあります。
応用として月経困難症や排尿障害、歯肉炎の治療薬となります。
子宮収縮を増強する働きがありますので、妊婦には禁忌です。

適応とする体質と処方例

牛車腎気丸、折衝飲、芎帰調血飲第一加減、疎経活血湯

呉茱萸

呉茱萸

呉茱萸は、呉の国に産するものを良しとするところから呉の名が付きました。
呉茱萸の果実を薬用に使いますが、果実になるべく軸のつかないものが良いとされています。
漢薬の選品に当って昔から六陳の説があります。六陳とは狼毒、呉茱萸、半夏、陳皮、枳実、麻黄の六種は陳旧品が良いとされています。

そこで呉茱萸は採取してもすぐ使わずに、1年ほど経過したものを使用したり、熱湯で数回洗って苦い汁を取ってから使用したりします。あまり放っておくと辛味成分も無くなってしまうので、やはり1年位置いておくのが良いと言えます。

現在では三重、奈良、福岡の諸県で栽培されております。

気味、薬味薬性

味は辛、苦、性は大熱、小毒あり

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、脾、胃、腎

効能

虚寒による腹痛、脇痛、疝痛、嘔吐、頭痛、生理痛に頻用します。
多量に使用すると、喉の乾燥感が生じます。
民間では浴料として知られています。
呉茱萸の根は、回虫などの駆虫薬に用いられています。

適応とする体質と処方例

  • 胃アトニーで非生理的水分があり、胸が張って苦しく嘔吐、腹痛などの症状があり手足が冷える方に用います。
    処方例。当帰四逆加呉茱萸生姜湯
  • みぞおちが膨満して手足が冷える頭痛、吐き気、しゃっくりに用いられます。
    処方例。呉茱萸湯
  • 皮膚全体が枯燥ぎみで、口唇が乾燥し、手掌も乾燥して熱っぽいのに用います。
    処方例。温経湯

牛蒡、牛蒡子

牛蒡

もともと日本にはゴボウの野生種はありませんでした。千数百年前に中国から渡来し日本で改良されて作物化しました。ゴボウの根は、日本独特の野菜で日本人以外は殆ど食べることがありません。
ヨーロッパの方では、新葉をサラダに入れて食べたりします。
種子には脂肪油の他、リグナン系苦味配糖体のアルクチンが含まれ、利尿作用や抗真菌作用等が知られています。

気味、薬味薬性

味は辛、苦、性は寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肺、胃

効能

扁桃炎や咳嗽、皮膚の化膿を鎮めます。
種は乾癬などの皮膚病に効きます。

適応とする体質と処方例

湿潤性の赤みのある湿疹や掻痒のある方に用います。
処方例。消風散

民間療法

  • 腫れ物、喉の痛み、浮腫みに内服。種子を粉末にして1日量8グラムを3回に分服。
  • 漢方では種子を悪実と呼び、腫れ物の薬にしています。煎汁をさかずき一杯飲めば、腫れ物の一つの口、二杯で二つの口が開いて治ると言い、疝気、中風の妙薬とも言われています。

黒胡麻

黒胡麻

アフリカ大陸が原産とされ、世界各地で栽培されています。
胡麻は1年草で、成熟種子つまり食用にされる胡麻の乾燥したものを薬用として用います。

現在では中国が世界一の産地国となっており、中国では胡麻といわず芝麻あるいは脂麻と言います。
日本では奈良時代に栽培され食用や薬用、灯火用に使用されました。

胡麻は種子の色によって黒色の黒胡麻、白色の白胡麻、黄色の黄胡麻などがあり薬用には黒胡麻が用いられます。

気味、薬味薬性

味は甘、性は平

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肺、脾、肝、腎

効能

潤燥滑腸作用で、硬い便の便秘の方の通便をします。
栄養成分が豊富なため肝、腎の栄養となります。

適応とする体質と処方例

老人性掻痒症などに用います。
処方例。消風散

五味子

五味子

チョウセンゴミシの成熟した果実を乾燥した色が黒い物で別名、北五味子とも言われています。
これに良く似たもの、また代用薬としてビナンカズラの色が赤い果実を使うときもありますがこれは南五味子と呼ばれています。
滋養、強壮、鎮咳力は北五味子に劣りますが、ビナンカズラの成分の粘液質は昔は婦人の頭髪用に用いました。

五味子は酸、甘、辛、苦、鹹の5つの味をもっていますので五味子といわれています。
果皮および果肉は甘く酸ぱく、核は辛く苦く、全体的に鹹いものが良いとされています。
五味子は黒っぽいものを用いるが、分量が多いと飲みにくいので人によって減量します。

気味、薬味薬性

味は酸、性は温

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肺、腎

効能

気管支の機能が衰え咳き込みのきついものや、胃が悪く体内の不良水分が滞り咳があるものの鎮咳を行います。

収斂性去痰薬で、咳嗽が頻発し渇するものに用います。通例、細辛を併用し、滋養強壮の効があります。
糖代謝を司る糖質コルチロイドの分泌に、また無機質コルチロイドにも関係しホルモン分泌の調整をします。

適応とする体質と処方例

  • 胃が比較的虚弱で腎の働きが悪いために、体内に非生理水分が溜まりこれが原因となって咳や浮腫みなどの利尿異常があるときに用います。
    処方例。苓甘姜味辛夏仁湯
  • その他の配合処方例。小青竜湯、清暑益気湯、人参養栄湯、清肺湯

民間療法

滋養強壮、疲労回復に内服で。五味子酒を飲む。五味子300グラム、グラニュー糖300グラムをホワイトリカー1.8リットルに漬け、2ヶ月後にこして出来上がり。1日30ミリリットルを限度に就寝前に飲む。