日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。
麻杏薏甘湯。金匱要略
処方薬味
麻黄 | 杏仁 | 薏苡仁 |
甘草 |
適応疾患
筋炎、筋肉リウマチ、関節リウマチ、関節炎、変形性関節炎、疣贅、汗疱、進行性指掌角皮症、諸種神経痛、水虫、湿疹、喘息症状
使用目標
発熱して特に夕方熱が上がり、諸関節や筋肉が腫れて痛む方に用います。この腫脹は特に強いものではなく、痛みも割合緩和です。
漢方の証、方意
- 虚実。少陽病、実証
- 十二臓腑配当。手の関節筋肉の腫れ、四肢の疼痛、浮腫。燥証としての午後のほてり、皮膚の枯燥、フケ。表の寒証としての悪寒、発熱
- 備考。麻杏薏甘湯証は、汗が出た後、風に当たり、長い間身体を冷やしたために起こることが多いです。これを東洋医学の言葉では、風湿といいます。この風湿により関節が腫れて激痛があるものには蒼朮、附子を加えると効果を示します。
麻子仁丸。傷寒論
処方薬味
麻子仁 | 芍薬 | 枳実 |
杏仁 | 蜂蜜 | 大黄 |
厚朴 |
適応疾患
常習便秘
使用目標
老人や虚弱体質の方の便秘に用います。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病、虚証
- 十二臓腑配当。心、三焦
- 方意。燥証と裏の実証による兎糞状便、便秘、皮膚枯燥。腎の虚証による疲労倦怠、頻尿、夜間頻尿
木防已湯。金匱要略
改善例
呼吸困難、動悸、息切れ。76歳、女性
1年前から時々呼吸困難がおこり、動悸、息切れが甚だしく、2ヶ月前からは呼吸が普通に出来なくなり、横になって寝られなくなった。患者は青い顏をしてやせ衰え、苦しそうな息をしていた。冷え性で口渇があり、昼間は尿が少なくて、夜は5、6回尿利がある。脈は細く不整。心臓はかなり肥大し、心音は不純。
これは木防已湯の証である。病気がかなり重く予後は悪そうに思えたが、増損木防已湯を投与。2週間もすると呼吸が楽に焉、横に寝られるようになった。
処方薬味
防已 | 石膏 | 桂皮 |
人参 |
適応疾患
代償失調になった心臓弁膜症、諸種心臓疾患、心不全、下肢浮腫、心臓神経症、狭心症、心筋梗塞、心臓喘息、気管支喘息、腎炎、ネフローゼ症候群、腎不全、妊娠腎、脚気、アジソン病、黒皮症
使用目標
呼吸促迫して咳も出る方、息苦しくて横になれず、浮腫がある方に用います。
胸は詰まって苦しく、少し体を動かすと息切れしてつらくなり、喘鳴があり、心下部が冷えて硬く、顏色は貧血性で薄黒く、脈は沈緊である方に用います。
腹部は上腹部全体が固く板を張ったようになります。喉が渇き、尿利が減少し、夜寝ると尿意が起こります。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病、実証
- 方意。上焦の水毒。心下痞硬、胸内苦悶感、呼吸困難
熊胆円
処方薬味
赤芽柏 | 黄柏 | アロエ |
牛胆 | 人参 | 大黄 |
黄連 |
適応疾患
吐き気、二日酔い、悪酔、むかつき、胃弱、整腸、食欲不振、腹部膨満感、消化不良、食べ過ぎ、飲みすぎ、胸やけ、もたれ、胸つかえ、嘔吐、軟便、便秘
使用目標
飲む前、飲んだ後や、食べすぎ、消化不良に用います。胆石、胆砂のある方の消化不良やもたれ、胸つかえにも用います。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。実証から中間症
- 十二臓腑配当。胆
薏苡仁湯
処方薬味
麻黄 | 当帰 | 白朮 |
薏苡仁 | 桂皮 | 芍薬 |
甘草 |
適応疾患
多発性関節リウマチ、漿液性関節炎、結核性関節炎、筋肉リウマチ、脚気、変形性関節炎、筋炎、腱鞘炎
使用目標
四肢の諸関節や筋肉の痛みのある方に用います。熱感、腫脹、疼痛があり、慢性化に移行しようとする方にもに用います。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病、虚実中間から虚証
- 方意。水毒による関節筋肉の腫痛、または、水太り、浮腫に対する方剤です。
- 備考。急性期の関節炎には麻黄加朮湯、麻杏薏甘湯を用います。