間質性肺炎に対する漢方治療の取り組み

呼吸器の病

間質性肺炎と診断される。漢方研究会で発表

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間質性肺炎

2017年11月、伝統漢方研究会第14回全国大会。日本、静岡、大仙家

木下文華、太陽堂漢薬局。福岡県福岡市、日本

緒言

間質性肺炎とは、肺胞上皮や肺胞壁に損傷が起こり肺胞壁の繊維組織での炎症性細胞増殖をみる疾患群の総称で、肺臓炎とも言われる。その多くは原因不明の突発性間質性肺炎と診断される。

炎症が続くと肺胞が潰れ、繊維化した組織となり、咳、痰、チアノーゼ、太鼓ばち指、呼吸困難等の症状が進行する。また空気が入り難くなって肺活量が減り肺血管の抵抗が増える為、肺高血圧症のリスクも高くなる。

数名の間質性肺炎の患者さんに対して、漢方治療における証決定を絞り込む八網分類を行ったところ、共通の薬方に辿り着いたのでここに報告する。

症例1。薬歴7153、67歳、女性

医療機関診断名。間質性肺炎。

既往歴。なし。

現病歴。2016年末に体調を崩し2017年1月3日入院。気管支カメラなどの検査結果、間質性肺炎とのこと。今まで病歴は特になし。この病気はリウマチ等の合併症でもなるとの事だが、血液検査の結果では大きな問題は見つからなかった。退院したら膠原病専門のクリニックを受診してみては如何かと言われた。現在はプレドニン60ミリグラムを服用。様子を見ながら50、40、30と減らし退院になるとの事。リンパ球の値が高いらしく薬が効きやすいそうで、肺も大分綺麗になって来ている。

初診

間質性肺炎、肺、陰証、0.2合6プラス、竹茹温胆湯加紫菀。肺の繊維化、小腸、陰証、0.8合5プラス、野蒲陶製剤

服用開始1ヶ月後

間質性肺炎、肺、陰証、1.4合5プラス、竹茹温胆湯加紫菀。肺の繊維化、小腸、陰証、1.7合5プラス、野蒲陶製剤

合数はまだ低いが、症状は落ち着きステロイドも減量になった。

服用開始3ヶ月後

間質性肺炎、肺、陰証、4.3合2プラス、竹茹温胆湯加紫菀。肺の繊維化、小腸、陰証、4.5合2プラス、野蒲陶製剤

比較的安定している。

服用開始5ヶ月後

間質性肺炎、肺、陰証、6.6合プラス3、竹茹温胆湯加紫菀。肺の繊維化、小腸、陰証、6.9合プラス3、野蒲陶製剤

体調良く症状も落ち着いている。身体も随分動かせる様になり、ミニバレーを再開したり旅行など楽しんでいる。現在も漢方薬を継続中。

服用開始7ヶ月後

間質性肺炎、肺、陰証、7.9合プラス2、竹茹温胆湯加紫菀。2.8合に経絡病あり。肺の繊維化、小腸、陰証、6.9合プラス3、野蒲陶製剤

肺に新たな白い部分が見つかり、プレドニン1ミリグラム増量。竹茹温胆湯に加味の薬味を紫菀から杏仁、玄参へ変更。

症例2。薬歴7169、54歳、男性

医療機関診断名。間質性肺炎。

既往歴。なし。

現病歴。5年前から風邪後の咳が続いて咳や痰が絡んでいる。量は少ないが、朝が酷くて夜中に時々ゴホゴホする。医大の検査でKL6値が1000を超えていた。肺の生検を取ったが原因分からず、経過観察中。呼吸検査とCT、胸部レントゲンを半年毎に撮っている。

初診

間質性肺炎、胆、陰証、0.1合6プラス、竹茹温胆湯去甘草加炙甘草。肺の繊維化、肺、陰証、マイナス0.2合5プラス、野蒲陶製剤加当帰

服用開始2ヶ月後

間質性肺炎、胆、陰証、4.2合2プラス、竹茹温胆湯去甘草加炙甘草。肺の繊維化、肺、陰証、3.3合3プラス、野蒲陶製剤加当帰

咳は弱くなって来た。むせるのが少し短くなってきた。

服用開始4ヶ月後

間質性肺炎、胆、陰証、5.3合1プラス、竹茹温胆湯去甘草加炙甘草加桔梗玄参、人参は党参使用。肺の繊維化、肺、陰証、4.8合1プラス、野蒲陶製剤

先月の聴診器検査ではあまり変化はみられなかった。再来月、レントゲンとCT検査を受ける予定。痰がべったりついてなかなか出て来ない。竹茹温胆湯に麦門冬湯加三味の桔梗、玄参を加味。

服用開始6ヶ月後

間質性肺炎、胆、陰証、6.8合プラス3、竹茹温胆湯去甘草加炙甘草加杏仁玄参、人参は党参使用。肺の繊維化、肺、陰証、5.4合プラス2、野蒲陶製剤

咳は少し減って来ている。今月末、検査予定。桔梗を杏仁に変更し、加味を杏仁、玄参とした。

症例3。70歳、女性

医療機関診断名。間質性肺炎。

既往歴。なし。

現病歴。2015年2月に間質性肺炎と診断される。その時のKL6値が1400。レントゲンの結果では左の肺の下に薄っすらと影があり、レスプレンとデキストロメトルファンが処方された。その後、毎月KL6値とレントゲンを撮りCT検査を年に3回の状態で経過を観測していた。

2年前の夏頃に整体で肺を広げる体操を毎日行い、KL6値が800に下がった。昨年の暮れに腰を痛めてしまい、その月のKL6値は1700に上昇。その後の検査ではKL6値が2780にまで上昇。インターネットで糖鎖の情報を得て毎日飲み始めて以来KL6値が670まで下がったが、毎日の咳がなかなか治まらない。

初診

間質性肺炎、胆、陰証、0.5合5プラス、竹茹温胆湯加杏仁玄参

この方はまだ漢方薬を飲み始めて1ヶ月経過していない。竹茹温胆湯に杏仁、玄参が加味され、間質性肺炎の治療法の確立に役立つ例と思い報告した。

服用開始1ヶ月後

間質性肺炎、胆、陰証、3.0合2プラス、竹茹温胆湯加杏仁玄参

漢方薬服用開始から1ヶ月弱。KL6値が576と少し下がり咳も少し治まって来た。

考察

慢性的に炎症が続く間質性肺炎の八網分類は、

  • 病因は、気、水
  • 表裏、三陰三陽は、少陽病或いは太陰病
  • 寒熱は、熱
  • 陰陽は、どちらとも言えない
  • 虚実は、虚証から虚実中間

上記に当てはまる漢方薬は、少陽病から太陰病の湿咳。又は痰の多い乾咳の証が該当すると思われる。

糸練功にて、湿咳に分類される、脾胃の水毒による上焦の熱証を呈する竹茹温胆湯に絞り込まれた。現時点では、杏仁、玄参の加味が最もsmの反応となる。

今後も様々な例を経験し、より確実性の高い治療法を確立して行きたいと思う。

今回使用した漢方薬、保険食品

  • 竹茹温胆湯。茯苓、半夏、陳皮、甘草、生姜、人参、桔梗、竹茹、麦門冬、柴胡、黄連、枳実、香附子
  • 桔梗2
  • 紫苑3から4
  • 玄参2から2.5
  • 杏仁2
  • 当帰0.7から1
  • 野蒲陶製剤、ラピー製

参考文献

南山堂。医学大辞典

木下順一朗著。古方これだけ覚えれば絶対だ、伝統漢方研究会、2008