間質性肺炎

間質性肺炎

肺胞性と間質性肺炎

肺炎は、気管支や肺胞腔内に炎症が起きる肺胞性と間質性肺炎に大別されます。
呼吸をすると空気は肺の中に入り、気管や気管支を通り肺胞に行きます。肺胞の壁には血液が集まっており、ここで酸素と二酸化炭素の交換が行われます。

肺胞の壁を間質と言います。細胞自体は実質になり、細胞と細胞の間が間質と考えると分かりやすいです。
間質性肺炎により間質が硬く繊維化すると肺が拡がらなくなり、呼吸が出来にくくなります。
間質の繊維化が進行すると、肺は硬くなり縮みます。縮んだ後には、穴ができ嚢胞となります。

間質性肺炎の原因

間質性肺炎の原因は、自己免疫疾患、空気中の塵、カビや毛、薬の副作用、特に免疫を抑える薬、抗リウマチ薬や膠原病の薬、ステロイド剤等。他に健康食品、ウイルス、逆流性食道炎、遺伝的背景等の原因や誘引もあります。しかし原因が不明な場合が多いです。

以前に小柴胡湯で間質性肺炎の副作用報告がありました。ただその副作用を出したのは、あるメーカー1社の小柴胡湯でした。他社の小柴胡湯では副作用報告は殆どありませんでした。
非常に質の悪い安価な生薬原料。特に黄芩等を使うと従来は考えられなかった副作用が生じるのだと思われます。

漢方太陽堂では栽培品の黄芩は用いず、伝統的な生薬鑑別法により野生品の黄芩、その中でも最高の尖黄芩しか用いません。

間質性肺炎の症状

間質性肺炎は動くと呼吸困難を起こし、坂道や階段での呼吸困難から平地での歩行や日常生活でも呼吸困難を起こすようになります。
乾燥性の空咳が多発することもあります。

肺から心臓へ負担が行き、肺高血圧を起こすこともあります。
まれに風邪等が引き金になり急性憎悪することがあり、注意が必要です。一般的に予後は悪く呼吸不全で亡くなることも多い、恐い疾患です。

間質性肺炎の西洋医学的治療

西洋医学ではステロイド治療、抗繊維化剤もありますが完治は難しいのが現状です。
また抗繊維化剤の副作用として胃腸障害、光線過敏症も問題となります。

間質性肺炎の漢方治療

漢方治療では、咳や呼吸困難等の症状を除く目的と、肺組織の繊維化を防いで間質性肺炎の進行を止める漢方治療を行います。
まず原因となる薬品、物質を特定し除くことが大事です。

免疫を上げる漢方薬

同時に漢方薬で免疫力を上げることが、間質性肺炎を治す早道となります。また線維化を防ぐ漢方治療も行っていきます。

免疫への漢方薬の働き

漢方薬の免疫に対する働きとして、白朮によるサイトカインCytokineTh2のインタロイキンInterleukin5への直接分泌抑制作用などが証明されてきています。また黄耆を含む漢方薬が間質性肺炎に有効であったとの改善例報告もあります。

その他、咳を鎮め呼吸を楽にする麦門冬や熟地黄の配合された数々の漢方薬を標治法として用います。
現在の西洋医学で治療法が殆ど無い間質性肺炎。漢方薬を試してみる価値は十分にあります。

竹茹温胆湯

気力体力が無い虚証向けの温胆湯から発展した処方です。
温胆湯は胃腸が弱く胃内停水のある人向けの漢方薬です。胃内停水を除く二陳湯に気塊を取る枳実、順気が目的の竹茹を合わせます。

竹茹温胆湯は微熱が有ったり、咳と痰が多くて安眠できない人が多いです。夢も多く神経質で動悸がする人に使用します。
漢方太陽堂では竹茹温胆湯を使用し、何例もの間質性肺炎の症状を回復させています。

四苓湯

五苓散から桂枝を除いた薬方で、澤瀉、白朮、猪苓、茯苓からなる漢方薬です。
表に邪熱がややある疾患に用います。免疫に働くと学会報告のあった白朮が配合されています。
漢方では伝統的に白朮と同時に茯苓を組合すことが多いです。

柴苓湯で免疫力を高める

現在、最も免疫に対して使用されている漢方薬です。間質性肺炎の免疫力を高めます。

リウマチや抗核抗体、自己免疫性肝炎、他の自己免疫疾患にも多用されます。血小板凝集能抑制作用も報告されており、免疫反応を調整し炎症を和らげる働きがあります。

桂枝茯苓丸、甲字湯

漢方では瘀血、血分のうっ滞を除く漢方薬の代表です。
桂枝茯苓丸は患者さんの不具合が多い処方です。
桂枝茯苓丸の副作用を消し、日本で江戸時代に水戸藩の典医の原南陽が改良したのが甲字湯です。甲字湯は桂枝茯苓丸に生姜と甘草を加え胃腸障害を消し、安心して飲めるマイルドにした処方です。

野蒲陶エキス

服用すると咳などの症状が落ち着きます。間質性肺炎による肺の線維化を回復させる働きが有るようです。
線維化を防止するには薏苡仁でも似たような効果があるようです。
症状が軽ければ薏苡仁、症状が重ければ野蒲陶エキスが効果があります。