日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。
柴胡
柴胡は、昔から和産の柴胡が良品と言われています。また柴胡は漢方の要薬で、配剤処方をみると傷寒論には六方、金匱要略には七方あります。これら傷寒、金匱中頻用の柴胡剤六方中、柴胡の分量を吟味すると、全処方量の18から27パーセントに達します。とりわけその適応症を臓器機能別に見ると
- 消化器系の症状、27.6パーセント
- 季肋部症候群、胸脇苦満、18.1パーセント
- 発熱、16.4パーセント
- 水分代謝異常、16.4パーセント
- 神経症状、13.8パーセント
になり神農本草経や薬徴でいう消化器系の病に多く用いることは正しいと言えます。
柴胡の根は、紫色で昔はシコ、セコと呼ばれていました。それがいつのまにかサイコと呼ばれるようになりました。柴胡には幾種もあり、400年前に鎌倉でとられていた鎌倉柴胡や、三島で育てられた三島柴胡、その他、マルバサイコ、ホタルサイコなどがあります。
和柴胡と唐柴胡を比較すると、和柴胡はやや肥大して不整の根頭から主根と短い側根を分け、概ね細根がありません。根頭には横シワが多く、主根には粗大な縦シワと疣状の小突起があります。外側は黒褐色で潤いがあり、質は柔らかで特異の脂肪様の香気があり、やや酸味があります。唐柴胡は根頭に根出葉の残基があり、主根は単一または先端から2、3に分岐し、側根がありません。外側は淡褐色を呈し、質は硬く香気が少なく、潤いが乏しくカサカサしています。
気味、薬味薬性
味は苦、性は寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
心包、肝、三焦、胆
効能
少陽熱、往来寒熱やアレルギーやストレスからくる熱を解熱します。肝、胆、心臓、および心臓ホルモンの分泌、副腎の働きをフルに活動させます。柴胡剤は、その処方の構成によって作用の特異性が見られるます。共通性のある薬能として
- 胸脇苦満を治する作用
- 抗炎症作用
- 鎮静作用
- 抗アレルギー作用
- 解熱作用
- 鎮痙作用
- 鎮痛作用
- 鎮嘔作用
適応とする体質と処方例
- 寒熱往来、あるいは嘔吐や咳のある方の胸脇苦満を良くします。処方例。小柴胡湯
- 体力があって汗をかかず、気管支のアレルギー反応が激しく、呼吸困難を起こしやすい方に適しています。処方例。神秘湯
- 柴胡は単味では用いず、漢方処方で用います。
細辛
真細辛。ウスバサイシンの根、及び根茎です。根は細く、味は辛くピリッと舌に刺激が感じられるので細辛という名になりました。細辛には真細辛と土細辛があり、真細辛はウスバサイシンの根を干して作った物です。土細辛。カンアオイの根を乾燥したものです。
真細辛の方が薬用としては良く、真細辛ウスバサイシンの根は薄く細く芳香性に富み、山椒のようなピリッとした成分を含んでいます。土細辛の葉は比較的厚く西洋紙のように臭く裏面が淡色になって、根は真細辛に比して太く悪臭もあります。
薬用には通常は根を使用しますが、昔は葉をつけて使用しました。乾燥した葉を湯につけると幾分か元に戻るため、葉の厚さや形で真細辛か土細辛かを見分けることができたといいます。ただ根も葉も細かく刻んだ場合は見分けがつきません。根が細く、辛味が山椒のようで強く、舌を麻痺するものが良品とされています。
細辛は漢方の駆水剤で、漢方流に言えば水毒が心下にあって咳嗽が上逆するものや胸満、脇痛に用いる要薬で繁用します。
気味、薬味薬性
味は辛、性は温
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
心、肺、肝、腎
効能
細辛は辛味成分で、リンパ液とかホルモン、血液の通行を盛んにし自律神経の働きを盛んにし、時には軽く発汗させてアレルギーの症状に対処し抑制します。心臓、腎臓を刺激して利尿作用を盛んにします。痰の分泌を減少させ、痰を減少させます。
適応とする体質と処方例
- 胃は強いがアレルギー反応を起こした末、水分代謝障害を引き起こし、体表及び気管支でアレルギー中毒症の主として浮腫み、咳を起こしているものに用います。処方例。小青竜湯
- 手足が自覚的にも他覚的にも厥冷状態のものに用います。処方例。当帰四逆加呉茱萸生姜湯
民間療法
口内炎に内服で。口中のただれや荒れに、一般の素人療法として一番安全確実な方法。細辛の粉末に酢少量を加えて練り、大豆粒の大きさにして、毎晩寝る前に臍の穴に詰め、上から軽く絆創膏で押さえておく。更に細辛と黄連の粉末1グラムを混ぜた物を1回量として、1日3回服用すると確実に効く。
細茶
茶の変種としてインドのアッサム地方原産のアッサム茶もあります。中国では紀元前10世紀の周の時代に薬用とされ、紀元3世紀頃に嗜好品とされ始め、8世紀の唐の時代に栽培や製茶が普及しました。
一般に乾燥茶が緑茶、発酵しているのが紅茶、半発酵がウーロン茶と区別されています。薬用はその茶の葉を用います。
気味、薬味薬性
味は苦、甘、性は涼
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺、胃
効能
胃の消化を盛んにします。痰熱を取り去ります。心臓からの亢進、炎症からの口渇を除き、利尿を行います。頭を覚醒しサッパリさせます。
適応とする体質と処方例
アレルギー反応による逆上せ、頭痛、頭重、不快感のある方に用います。処方例。川芎茶調散
山査子
中国産のバラ科の落葉低木の山査子または高木のミサンザシの成熟果実を乾燥したものを用います。
日本には江戸時代に伝わり多く植栽されています。山査子の果実は、中国では一般に紅果と呼ばれ、甘酸っぱいため干菓子の山査片やジュースなどにも用いられています。料理では、魚を煮るときに山査子を入れると骨も柔らかくなります。
気味、薬味薬性
味は酸、甘、性は微温
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
脾、胃、肝
効能
消食の効能があり、消化不良や下痢の治療などに用います。特に脂っこいものや肉類の消化に適しています。産後の腹痛や瘀血による疼痛や血便などに用います。
適応とする体質と処方例
口舌、唇の病、歯茎の炎症などに用います。頚部リンパ腺炎で発熱頭痛し、なかなか化膿しないものによく、また偏頭痛のある方に用います。処方例。柴胡清肝散
民間療法
- 健胃、整腸に内服で。1日量5から8グラムを煎じて、3回に分けて服用。消化促進作用がある。
- 二日酔い、食中毒に内服で。8グラムを1回量として煎じて服用。