日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。
赤芽柏
別名将軍木皮といいます。若芽が赤い為アカメといい柏餅のカシワの葉のように食べ物を包んだりした由来からアカメガシワという名前になりました。
日本の民間薬として古くから、切らずに治す腫れ物の薬として用いられて来ました。
効能
樹皮にはゲラニインなどのタンニン成分やベルゲニン、ルチンなどが含まれベルニゲンは胃液分泌抑制や抗潰瘍作用がみられます。この抗潰瘍作用は潰瘍治療薬マロゲンとして製剤化されています。
また葉のエキスは少量で胆汁の排出を促進、エキスを大量にすると抑制する作用がみられます。
適応とする体質と処方例
- 胃十二指腸潰瘍には樹皮を煎じて服用。抗潰瘍作用が働きます。
- 痔や腫れ物のある方は生の葉の汁を患部に直接塗ります。
- 汗疹の治療に葉を浴湯剤として用います。
- 処方例。熊胆円
民間療法
- 胃潰瘍には、1日量1から3グラムを200ミリリットルの水で半量になるまで煎じ、毎食後30分ぐらいの時に服用する。
- 腫れ物に外用、内服で乾燥葉2から4グラムを煎じて、その汁で患部を洗う。また、乾燥した樹皮を1日量2から4グラム、水200ミリリットルで半量になるまで煎じて、1日3回毎食後30分に服用する。外用と内服とを併用するとより効果的である。
阿膠
阿膠とは、ウマ科のロバの皮を除毛し煮詰めて膠にしたものです。ニカワとは煮皮の事で、粗製のゼラチンです。日本の局方ゼラチンはウシの皮や骨で作られています。主産地は中国の山東、浙江省で、古くから山東省の東阿に産するものが優れています。
その昔、中国の山東省-東阿県-に丸い車輪ほどの井戸がありました。この井戸の水で作った膠が最も良いとされ東阿県の膠つまり阿膠という名が付きました。漢方では止血、補血、滋陰に用います。
気味、薬味薬性
味は甘、性は平
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺、腎
効能
血液の循環を良くし血液の凝固を促します。排尿関係の強壮として働きます。痔の出血、子宮の出血、下血、吐血、血淋等の止血作用があります。紫斑病や血友病の止血作用もあります。
適応とする体質と処方例
- 慢性の局部的な鬱血によって血管が破れて起こる出血に対して、血行を良くしながら止血します。処方例。温経湯
- 細菌性の熱病で、心臓が苦しくなった人の血行が良くなるよう心臓の負担を軽くします。処方例。炙甘草湯
- 腎臓の糸球体が最近の毒によって侵され、糸球体が虚弱になって排尿が少なくなくなったために、体内の塩分が溜まって口が渇いている方の糸球体に活力を与えます。処方例。猪苓湯
- 虚弱体質で貧血気味、下腹が痛くて出血する方の止血。処方例。芎帰膠艾湯
芦薈
日本薬局方に収載されているアロエはケプアロエやキュラソアアロエ等の葉の液汁を濃縮、乾燥したものを用います。漢方では芦薈と言います。
一般に日本の家庭で栽培されているアロエはキダチアロエで芦薈の原料には適さないです。アロエはアラビア語の苦味に由来する名で、日本へは鎌倉時代に伝えられました。
気味、薬味薬性
味は苦、性は寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肝、胃、大腸
効能
苦味の成分に刺激性があり、大腸粘膜を刺激して瀉下作用があります。その他、抗腫瘍作用も報告されています。
漢方では、清熱、瀉下の働きがあり、習慣性便秘、ひきつけ、癲癇等に用います。刺激性の瀉下剤なので、痔、月経時、妊娠時には用いないほうが良いです。外用薬として、火傷、創傷、虫刺され、湿疹、赤切れ、神経痛、関節痛に用います。
適応とする体質と処方例
便秘の方に少量の大黄と一緒にすることにより便通を促進します。処方例。熊胆円
威霊仙
昔中国の商州に手足が不自由で数十年歩くことができない老人がいましたが、新羅の名僧がテッセンという薬草を与えたところ、数日で歩くことができました。テッセンの効き目の威力は大したもので神のなす業、霊仙のようだということで威霊仙という名になりました。
気味、薬味薬性
味は辛、性は温
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
膀胱
効能
鎮痛、麻酔作用がある。抗菌。チフス菌、陽炎菌、赤痢に対して抑制作用がある。利尿剤
適応とする体質と処方例
四肢の痺れや痛み、遊走性の痛みのある方に。処方例。疎経活血湯、二朮湯
茵蔯蒿
山野や河岸の小石の間で冬期に白い絹毛のヨモギに似た葉のカワラヨモギが自生しています。川に生えるヨモギという意味ですが、餅草に使うヨモギとは薬効が全く違います。
山野に自生するものを山茵蔯、野原に自生するのを野茵蔯といっていますが山茵蔯が良いといわれています。なかでも、新しく、色鮮やかで、葉や軸が少なく、香りの強いものが良品とされています。
多年草で冬になっても根は枯れないので、翌年その古い根から芽がでてくるので、ちょうど陳いところを因にして繁殖する草というところから茵蔯の名が生じたと言われています。
気味、薬味薬性
味は苦、性は平
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
脾、胃、肝、胆
効能
解熱作用があります。胆汁分泌を促進する力があります。水虫やタムシなどの各種の微生物に対して抗カビ作用があります。黄疸を抑制する力があります。消炎、利尿の働きがあります。
以上のことから、茵蔯蒿は黄疸の聖薬とされています。神農本草経には、上薬の茵陳蒿の薬効として風湿、寒熱、邪気、熱結、黄疸を治す。久服、軽身、益気、耐老とあります。
適応とする体質と処方例
- 体力が有って、大小便の出にくい黄疸に用います。処方例。茵蔯蒿湯
- 黄疸で、喉の渇きが激しく小便の出が悪いが、便秘はしないものにものに用います。処方例。蔯五苓散