間質性肺炎。漢方研究会で発表
太陽堂漢薬局が発表報告した論文。論文、改善例のご案内はこちら
間質性肺炎に対する竹茹温胆湯
2021年11月。伝統漢方研究会第18回全国大会。日本、伝漢研合同論文発表会
木下文華。福岡県、太陽堂漢薬局
諸言
2017年、間質性肺炎に対する漢方治療の取り組みという論文を発表しました。間質性肺炎は、肺の奥の肺胞と言う酸素と二酸化炭素をガス交換する組織の壁に炎症が起こり肺胞の壁が線維化します。線維化が進むと肺が硬く縮み、酸素を上手く取り込めなくなります。
いくつかの原因が考えられますが、原因不明の特発性肺線維症と診断される事が多いようです。
間質性肺炎は、長年かけて進行します。はじめのうちは無症状ですが、進行が進むと息切れや空咳などの症状が現れます。指先が太鼓のバチ指になる事もあります。また肺癌の合併症のリスクが高くなります。
間質性肺炎の血清マーカーとして、SP-A、SP-D、MCP-1、KL-6があります。中でもKL-6は、間質性肺炎の感度、特異度が高く、KL-6値が1000U/ミリリットル以上の場合、余命は平均3年以内と言われています。
今まで漢方相談を受けた間質性肺炎の患者さんへ竹茹温胆湯を用いる事が多かったです。息切れや空咳などの症状改善だけでなく、KL-6値も下がる場合が多いです。不治の病とされる間質性肺炎に対して、竹茹温胆湯が何故、有効なのか。竹茹温胆湯の働きをもう一度見直してみました。
鑑別1
まず、咳の鑑別についてまとめてみました。
乾咳
喘鳴少なく、濃痰で切れにくい。痰量少ない。布団等で温まると酷くなる。滋潤剤である地黄、麦門冬の適応。
湿咳
喘鳴多く、薄い痰で切れやすく、痰量多い。利水剤である麻黄、杏仁の適応。
心臓性喘息
食後に動悸、息切れ、喘鳴悪化。坂道、階段等での息切れ。呼吸困難。
鑑別2
次に、間質性肺炎の八網分類を行います。
間質性肺炎の八網分類
- 病因。気、水
- 表裏、三陰三陽。少陽病或いは太陰病
- 寒熱。熱
- 陰陽。どちらとも言えない
- 虚実。虚証から虚実中間
間質性肺炎は慢性的に炎症が続きます。当てはまる漢方薬は少陽病から太陰病の乾咳。又は痰の少ない湿咳の証が該当すると思われます。
糸練功にて、湿咳に分類される、脾胃の水毒による上焦の熱証を呈する竹茹温胆湯証に絞り込まれました。杏仁、玄参を加味すると、よりsmの反応になります。線維化に対して、東北地方で民間薬として伝承されてきた野蒲陶をあわせると良いようです。追記として、食養ではキャベツが良いようです。
竹茹温胆湯の構成生薬
- 茯苓、半夏、陳皮、甘草、生姜。二陳湯で脾胃の水毒を取る
- 麦門冬。去痰、上焦の熱証、水毒を取る
- 竹茹、柴胡、黄連、枳実、香附子。上焦の熱証、精神、気滞を取る
- 桔梗。消炎排膿
- 人参。気虚改善、滋潤
考察
今回取り上げた間質性肺炎のように、難治性や難病指定と診断される疾患。対症療法や手術など外科的な処置を行う疾患に対して、東洋医学的に捉えて漢方治療を行い治癒するケースは少なくないと思います。
古来より伝承されて来た漢方の力も捨て難し。これからもその可能性を信じて行きたいと思います。
今回使用した漢方薬、保険食品
- 竹茹温胆湯。茯苓、半夏、陳皮、甘草、生姜、人参、桔梗、竹茹、麦門冬、柴胡、黄連、枳実、香附子
- 桔梗2
- 紫苑3から4
- 玄参2から2.5
- 杏仁2
- 当帰0.7から1
- 野蒲陶製剤
参考文献
南山堂、医学大辞典。木下順一朗著、古方これだけ覚えれば絶対だ、伝統漢方研究会、2008。