大黄牡丹皮湯の薬味と処方の成り立ち

漢方理論

下焦の血熱を取る大黄牡丹皮湯。漢方研究会で発表

漢方太陽堂が発表報告した論文。
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大黄牡丹皮湯

2012年11月、伝統漢方研究会第9回全国大会。日本、福岡県八百治ホテル

金沖良子。福岡県、太陽堂漢薬局
福岡県福岡市、日本

諸言

下焦の血熱を取る代表的な薬方に大黄牡丹皮湯がある。下焦の血熱に対し、大黄甘草湯を基本に幾つかの薬方が造られている。
大黄甘草湯から、どのように薬味が変化し処方が組まれるのか。大黄甘草湯から大黄牡丹皮湯までの薬味を取り上げ、その処方の成り立ちを検証した。

大黄甘草湯

目標

便秘症で胃中熱があり嘔とする。

薬味

大黄。味は苦、乾燥利尿し、降ろす。血塊下焦、清熱、瀉下作用。
甘草。国老の異名のとおり、他の薬味の働きを高める。ここでは大黄の働きを高める。解毒、緩和作用。

方意

大黄は燥性が強く、大黄甘草湯は、燥性、瀉下清熱。

調胃承気湯

大黄甘草湯プラス芒硝

目標

陽明病実証。体力が衰えた人、老人、病後の便秘などの症状に使用。

薬味

大黄
甘草
芒硝。味は鹹、潤し、降ろす。血塊下焦、清熱、瀉下作用。

方意

大黄は燥性が強く、芒硝は潤性が強い。調胃承気湯は、燥性も潤性もなく、瀉下清熱のみ。

大黄牡丹皮湯

調胃承気湯去甘草プラス牡丹皮、桃仁、冬瓜子

目標

体力があって、瘀血の腹証、右下腹部があり、下半身に炎症や化膿があって、発熱、腫脹、疼痛などの症状を呈し自覚症状が強く、便秘の傾向があるものに用いる。右側お臍斜め下、腸、肛門、生殖器、子宮、膣の下腹部の炎症で便秘がみられる。

薬味

大黄
芒硝
牡丹皮。血塊下焦、清熱、瀉下作用、消炎作用。
桃仁。血塊下焦、清熱、瀉下作用。
冬瓜子。血塊下焦、清熱、瀉下作用、消炎排膿。ウリ科西瓜等と同じのため利尿作用

方意

大黄は燥性が強く、芒硝は潤性が強い。更に冬瓜子は燥性。大黄牡丹皮湯は、燥性が強く、瀉下清熱、駆瘀血清熱、消炎排膿。

騰竜湯

調胃承気湯プラス牡丹皮、桃仁、冬瓜子、蒼朮、薏苡仁

目標

大黄牡丹皮湯証より、急迫症状強い。

薬味

大黄
甘草
芒硝
牡丹皮
桃仁
冬瓜子
蒼朮。燥、利尿作用。
薏苡仁。種子は降下の作用。固い薏苡仁は消固。発散、利尿作用あり。消炎排膿

方意

大黄、冬瓜子、薏苡仁、蒼朮は燥性が強く、芒硝のみ潤性。
騰竜湯は、大黄牡丹皮湯より燥性が強く、瀉下清熱、駆瘀血清熱、消炎排膿。更に、薏苡仁の消炎排膿、消固作用が加わる。

考察

様々な駆瘀血剤や蒼朮、薏苡仁を組み合わせることで諸症状に対応することができる方剤を組むことができる。

参考文献

中山医学院編。漢薬の臨床応用、神戸中医学研究会、1979
木下順一朗著。古方これだけ覚えれば絶対だ、伝統漢方研究会、2008