日本漢方の古方派を中心とした漢方薬、処方をご紹介します。一般の方から専門家まで馴染めるよう、改善例、処方薬味、適応疾患、使用目標、漢方の証、方意をご紹介。
葛根黄連黄芩湯。傷寒論
改善例
肩凝り、50歳、男性。漢方処方応用の実際より引用
約10年前からの常習性の頭痛で苦しんでいた。血圧もやや高く、特に最小血圧が亢進し、160から110ぐらいを上下していた。2月末に初めて来院してから、柴胡加竜骨牡蠣湯、黄連解毒湯などを用いたが症状は一進一退で5月中旬、頭痛と肩凝りを訴えたのである。
藤平健博士が、高血圧症に葛根黄連黄芩湯を用いて良い事があると言われる事にヒントを得てこの処方を用いてみた。患者は体格の良い骨格のがっちりした人である。葛根黄連黄芩湯を用いて1週間後に来院したとき「今度の薬を2日飲んだら、肩のこりは嘘のようにとれて、さっぱりしました。しかし昨日からまた頭痛だけがおきています。」と患者が報告した。
その後、この患者に半夏白朮天麻湯を用いて頭痛がおこらいないようになった。これは10年来の病気で、証が錯雑していたものであろう。
処方薬味
葛根 | 黄連 | 黄芩 |
適応疾患
インフルエンザ、気管支喘息、二日酔い、火傷、口内炎、舌炎、充血性眼疾患、胃腸型感冒、赤痢等急性胃腸炎、各種の発熱性下痢、肩凝り、高血圧症、脳血管障害発作後、不眠症、不安神経症
使用目標
発汗すべき証に下剤を用いたため、下痢が止まらなくなり、息切れして、汗が出る方に用います。熱のある下痢の初期にも用いられます。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。少陽病と太陽病の併病、実証
- 方意。上焦の熱証による胸中煩悸、息切れ、心下痞、火照り。脾胃の熱証による下痢、悪心、嘔吐。表の寒証による項背強、頭痛。上焦の熱証による精神症状による不安感、不眠。
- 備考。葛根黄連黄芩湯は、三黄瀉心湯の中に大黄の代わりに葛根と甘草を入れた薬方です。三黄瀉心湯証に似ていて、表熱証があり、裏実の候のないものに用います。
葛根湯加辛夷川芎
処方薬味
葛根 | 麻黄 | 桂枝 |
芍薬 | 大棗 | 生姜 |
甘草 | 辛夷 | 川芎 |
適応疾患
副鼻腔炎、蓄膿症、肥厚性鼻炎、慢性鼻炎、鼻づまり、鼻茸
使用目標
濃厚な鼻水、後鼻漏のある方、慢性の蓄膿症の方によく用います。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。太陰病または太陽病、実証
- 十二臓腑配当。太陽病、実証
- 方意。葛根湯の表の寒証、表の実証。上焦の湿証による濃厚な鼻汁、後鼻漏。
- 備考。葛根湯加川芎辛夷に黄芩、桔梗、石膏、大黄などを入れる場合もあります。
葛根湯加苓朮附湯
処方薬味
葛根 | 麻黄 | 桂枝 |
芍薬 | 大棗 | 生姜 |
甘草 | 蒼朮 | 茯苓 |
附子 |
適応疾患
三叉神経痛、上腕神経痛、夜尿症、肩凝り、乳腺炎、結膜炎、中耳炎、上半身のリンパ腺炎、耳下腺炎
使用目標
上焦、上半身の神経痛、リウマチ、肩凝り、関節痛に対する方剤です。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。太陽病、実証
- 備考。葛根湯に水をさばく役目の強い蒼朮、利水作用の強い茯苓、止痛作用の強い炮附子が入っています。葛根湯加朮湯、葛根湯加苓朮湯より陰証に用います。
葛根加半夏湯。傷寒論、金匱要略
処方薬味
甘草 | 葛根 | 生姜 |
芍薬 | 麻黄 | 桂皮 |
大棗 | 半夏 |
適応疾患
感冒、流感、大腸炎、赤痢、肩凝り、五十肩
使用目標
表の寒証、表の実証の葛根湯証で吐き気のある方に用います。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。太陽病と脾胃の水毒、脾胃の熱証の合病、実証
- 方意。表の寒証、表の実証と脾胃の水毒、脾胃の熱証による項背強、頭痛、悪寒、発熱、悪心、嘔吐、腹満、食欲不振
- 備考。葛根湯に半夏を加えたものです。
加味八仙湯。万病回春
処方薬味
甘草 | 白朮 | 川芎 |
当帰 | 茯苓 | 桂皮 |
羌活 | 牛膝 | 柴胡 |
人参 | 地黄 | 陳皮 |
防風 | 半夏 | 芍薬 |
秦艽 |
適応疾患
手足の痺れ感、運動麻痺、脳溢血の麻痺と疼痛、顔面神経痙攣、顔面神経麻痺
使用目標
手足の痺れ感に対して用います。水太りの方に顕著で、長く座っていると痺れる方や運動麻痺、知覚異常のある方に用います。山椒などを食した後の舌の痺れで味が分らない時に良いとかかれた古書もあります。
漢方の証、方意
- 病位、虚実。虚証
- 十二臓腑配当。心