東洋医学は独特の薬理学

東洋医学概念

2020年7月17日。写真は、頭に角がある神農さんと李時珍です。

漢方の薬理学で最初に書かれたのが、神農本草経です。神農さんはあらゆる草を舐め、その薬性を判断したと言われています。
神農さんは漢方薬と農業の神様で牛のように頭に角が生えていたと言い伝えられています。
漢方の薬理学は、その後、李時珍の本草綱目で完成しています。

写真の右側は神農さんが草を舐めている像、頭に角があります。左側は李時珍の像です。

漢方薬は植生で効果が異なる

東洋医学の薬理学をご紹介します。形象薬理学が基本となります。

防已

例えば防已と言う生薬は蔓です。地面に下へ這う傾向があります。蔓ですのでストローの様に水を通す働きで、漢方では下焦、下半身の水毒に使用する生薬になります。

葛根

同じ蔓で葛根は上に伸びていきます。葛根は上焦、首から上に使う生薬です。また葛根の花は紅色です。そのため紅色の静脈血に使用します。
葛根は、血液中の水分が減少し静脈血が欝滞した時に、蔓ですので水分を流し静脈血を薄め血滞を解消しますす。

柴胡

色々な漢方薬に配合されている生薬に柴胡があります。
鹿児島では小学生の私達の小遣い稼ぎにセコ取りが有りました。セコは柴胡の事です。

航空隊が有ったためか、その当時はまだ戦争中の爆撃の痕が残っていました。
爆弾の穴の北側の斜面、日当たりの良い所に柴胡は生えていました。
シラス台地で斜面で水捌けが良く、日当たりの良い所です。
水捌けの良い所に生える柴胡は、体内の湿、余分な水分を除きます。

形象薬理学

日当たりの良い所で育つ生薬は血毒を解消する傾向があります。黄柏などもそうです。
逆に日陰で育つキノコなどの菌糸体は水毒に働く傾向が有ります。
柴胡は日当たりの良い所に生えますので血熱を冷まします。

清流の水辺に咲く薏苡仁は、水毒に働きます。
薏苡仁は固い穀物です。固いイボを取る働きがあります。柔らかいイボには効きません。

春に咲く紫の美しい藤の花。夏の台風などの風で、藤の枝と枝が擦れ合います。擦れ合った部分に腫瘍の様なコブが出来ます。生薬名は藤瘤と言い腫瘍に使います
東洋医学の薬理学は形象薬理学という例です。

血毒の原因とは

漢方には似臓補臓の原則があります。
似た臓器はその臓器を補うと言う考え方です。肝臓の弱い人にはレバーを食べさせ、心臓の弱い人にはハツを食べさせます。発達障害の子には猿頭霜、猿の頭の黒焼きを投与します。

同様に東洋医学の形象薬理学では、赤い酒査鼻には赤い紅花を使用します。
黄疸には、黄色い漢方薬の黄連、黄芩、黄柏、黄耆を使用します。
心臓の形をした杏仁、薤白の名のラッキョウは心臓のお薬です。
処方例として、茯苓杏仁甘草湯。括呂薤白白酒湯など心臓の漢方薬が有ります。

漢方の血剤には脂性成分が多く入っています。
脂性成分は油脂の毒を消します。
血毒の原因は油脂の摂りすぎです。或いは油脂の代謝異常でも血毒が生まれます。

排便は身体の不要となった脂溶性物質の排泄です。水性の排泄物は尿です。
便秘をすると脂の排泄が上手く行われないので、血毒の原因となります。
血毒を除くには、便秘を整え野菜等の線維を多く摂ります。

漢方薬のコラボレーション

甘麦大棗湯と言う漢方薬が有ります。
激しい精神興奮や痙攣などに使用される薬方です。発作時は頓服として用います。

ヒステリー、統合失調症、癲癇、夜泣き、不眠症、胃痙攣や腹痛、子宮痙攣、咳など激しい症状や興奮状態に用います。
癲癇の大発作では繁用薬方となります。
ご自分の意思でコントロールできない状態に使用される薬方です。

アトピー性皮膚炎などの激しい痒みは、トラウマになり必要以上に掻いてしまうことがあります。掻くとそれが刺激となり炎症反応が進みアトピー性皮膚炎などは更に悪化します。
以前、近畿大学の発表では皮膚病で掻きむしる患者さんに甘麦大棗湯を投与すると1ヶ月ほどで改善することが報告されています。

この甘麦大棗湯の処方構成は甘草、大棗、小麦の3味です。
甘草は、食品に甘みを付けるため醤油やその他に配合されます。またタクアンの黄色の色付けにも使われます。
大棗は、ナツメの実です。ドライフルーツや子供のおやつに成ります。
小麦は、小麦です。
3味は、どれも食品です。単独で食べても効果はありません。

しかし1800年前の漢方の古典である金匱要略に記載通りの分量で混ぜると漢方薬の甘麦大棗湯が出来あがり、非常に効果がシャープな漢方薬になります。
漢方薬は薬味単味ごとの働きや生薬成分ではなく、経験に基づく組合せによるコラボレーションの産物です。