瓜子(冬瓜子)、藿香、葛根、滑石、栝楼仁(瓜呂仁)

漢方生薬

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。
初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

瓜子、冬瓜子(カシ、トウガシ)をご紹介

冬瓜子は冬瓜の種子であり、漢方では消炎性利尿、排膿薬として水腫および癰腫に用いられます。

冬瓜は、他の瓜類より遅く成熟し、霜が降るようになって後に熟すので冬瓜の名を得ました。霜が降る季節になると、冬瓜の皮の表面に白い粉をふくので白冬瓜ともいわれています。

淡黄白色で、粒は大きく充実していて、未熟種子や夾雑物のないものが良品とされています。

気味、薬味薬性

味は甘、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾、胃、大腸、小腸

効能

美容の薬で白くなりたい時には冬瓜を使用します。

おできや腫れに用い化膿を防ぎ、また散らす働きがあります。

肺を潤し、痰を除きます。

利尿し水分代謝を促します。

適応とする体質と処方例

下半身や下腹部に炎症があって腫脹、疼痛、圧痛を訴え、自覚的に苦痛が激しい急性の方に用います。処方例:大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)

民間療法

  • にきび(外用)。桃の白い花の搾り汁とトウガンの種子(冬瓜子)のすり潰した汁を同量混ぜてつける。
  • 消炎性利尿、緩下、排膿薬として、腫瘍に〔内服〕。1日量5~8gを煎じて飲む。

藿香(カッコウ)をご紹介

生薬-藿香

シソ科カワミドリの葉茎。

洋名をパチョリと呼びます。パチョリ油は香水の調合に用いられます。インドではパチョリを衣服の香料や浴湯料に用いたり、薬用としては鎮痛は解熱の他、喘息や消化器疾患の治療に用いていました。

日本ではカワミドリは腓草香(ハイコウソウ)で、藿香ではないとしていますが、中国の図鑑ではカワミドリに藿香をあてています。

気味、薬味薬性

味は辛、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾、胃、肺

効能

夏の風邪や急性の胃腸炎などの整腸作用として用います。

熱射病、日射病などの発熱、悪心、嘔吐の症状がみられる時に解暑作用があります。

適応とする体質と処方例

生物や冷たい物などを飮食したことにより、上腹部がはって苦しい発熱や疲労感、嘔吐、下痢、口臭などがあるときに用います。処方例:藿香正気丸(カッコウショウキガン)

民間療法

頭痛、風邪、健胃に。内服、乾燥した全草(5~10g)を1日量として煎じる。

葛根(カッコン)をご紹介

生薬-葛根

葛根は秋の七草のクズの花の根のことです。

クズのことをカズラとも言います。大和の国「くず」で葛根を作っていたのでクズと呼ばれています。

葛根には板葛根と、板状をさらに細かくしたサイコロ形の角製葛根があります。

白色。淡褐色を呈し、なるべく色の白いもので澱粉質に富み、繊維性の少ないものを良品とされます。

葛澱粉は錠剤の結合薬としては、他の澱粉に比し崩壊力がもっとも良好として需要が多く、その他撒布剤、賦形剤としても消費されています。

気味、薬味薬性

味は甘、辛、性は平

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾、胃

効能

肩こりの薬となります。僧帽筋の緊張を緩める作用があり、肩を楽にしてくれます。

副交感神経が興奮して収縮した腸を、弛緩させる働きがあります。

胃の熱で胃腸に関係する部位に炎症を起こしているために、その部位の働きが亢進し口渇している方に用います。

発汗、発散、解熱させる働きがあります。

適応とする体質と処方例

  • 体内で生じた毒素や体外から入った細菌、ウイルスや異種物質のために、苦情が生じ、その苦情が表れているときに用います。処方例:葛根湯(カッコントウ)
  • 急性腸炎や細菌性の下痢、湿熱の下痢などに収斂消炎作用を利用し、黄連、黄芩などの清熱薬を配合して用います。処方例:葛根黄連黄芩湯(カッコンオウレンオウゴントウ)

民間療法

  • 疲れ(20g)、肩こり(15g)・内服、クズの根(葛根)を輪切りにし、干したものを1日量とし、3合の水で半分になるまで煮詰めたものを、数回に分け飲用。
  • 寒気・内服、クズの根(葛根)15g、ひねショウガ(生姜)の輪切り3切れをあわせて1日量とし、3合の水で半量になるまで煎じ、熱いのをフフ吹きながら毎食前30分に分服。
  • 虫垂炎・内服、真正のクズ粉8gを1合の水で服用

滑石(カッセキ)をご紹介

生薬-滑石

滑らかな感じがする白い色の粘土鉱物なので滑石という名がつけられました。

色白く軟らかにして、石に書いて白く書けるものが良いといわれ、一般的に使われるのは鳥滑石(オウカッセキ)といって石に書いて青白くなるものもあります。

江戸の庶民は衣服のしみや油で汚れた家具など洗い落とすために滑石を使っていました。例えば行灯(あんどん)をひっくり返した時も、床を流れる油の上に滑石をふりまき、それを盲の女に踏ませまいと大騒ぎした句も残っています。

オイルクリナとして重宝された滑石は漢方の湯液に僅か一つまみ加わるだけで、ある種の薬効作用物質が選択的に吸着され、そのため方剤としての薬能が助長され、或いは減殺されたりして、漢方薬の妙味を発揮しうるのだと思われます。

気味、薬味薬性

味は甘、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

胃、膀胱

効能

硅酸アルミニウムによって胃炎を取り去ります。

天然硅酸アルミニウムは、胃及び腸感内における胃腸有害物質、過剰な水分粘液などを吸着させることによって腸炎などを取り去ります。

塩化アルミニウムやケイ酸などが血管中に入り、排泄されるとき腎臓の熱つまり炎症ををとって尿利を整えます。

適応とする体質と処方例

排尿障害を起こし排尿時の灼熱感や尿意が頻繁にあったり、小便が出にくくなった人が胸騒ぎがしたりイラツキ、物事が気にかかり、不眠、頭痛などの症状を伴っている時に用います。処方例:猪苓湯(チョレイトウ)

栝楼仁、瓜呂仁(カロニン)をご紹介

生薬-栝楼仁・栝楼実

キカラスウリの根を瓜呂根。その種を瓜呂仁と呼んでいます。

根に沢山の澱粉を含んでいるので細かく砕いて水で洗うと、澱粉を取り出せます。この澱粉を天花粉と言います。

栝楼根カロコンは、微かに苦いと言われているが、時には苦味のきついものがあり土瓜根と呼ばれています。

気味、薬味薬性

味は苦、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺、胃、大腸

効能

虚弱質の肺、気管支を元気づけ熱っぽくのぼせる感じの咳を鎮めます。

体液を造り軽い便秘を治します。

催乳作用があります。

胸部に熱が生じ、熱が滯っって胸苦しい胸部が痛い、結胸、胸痺に用います。

適応とする体質と処方例

胃腸が弱く利尿が十分に行われていない体質の人が、熱性の病気を起こし胸部が悶えたり痛んだりして、胃が硬く自覚的な圧痛があるときに使用します。処方例:小陥胸湯(ショウカンキョウトウ)