陳皮、朝鮮人参(人参)、地楡、竹茹、沈香

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。
初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

陳皮(チンピ)をご紹介

ミカンの果皮を陳皮に当てています。

黄色くなったミカンの果皮を日乾しにして長く保存し古いものとして使いますので、陳久(古いの意)なものが良いとして陳久皮、陳皮となりました。

陳皮の働きは精油が重要で、あまり古くなりすぎたものは精油が無くなっているため、良くありません。

気味、薬味薬性

味は辛、苦、性は温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺、脾

効能

アトニー性の健胃薬となります。

陳皮のもつ弱い辛味成分が、アレルギー毒の発散に働きます。

適応とする体質と処方例

胃に関する自律神経が乱れて、消化障害を起こしているものに用います。処方例:平胃散(ヘイイサン)

朝鮮人参、人参(チョウセンニンジン、ニンジン)をご紹介

生薬-人参

オタネニンジンの根から細根を除いたものです。

通常の食用の赤い人参とはまた別の物で、区別するためにオタネニンジンを薬用人参とも言います。

オタネニンジンは、徳川家光の時代に種子を朝鮮から取り寄せて日光山で栽培したところから始まりました。

人参の名の由来は、根の形が人間の手足のような連想を抱かせるので、人参という名になりました。

人参は、生根を水参と言い調整法により白参と紅参とに大別します。

白参:白参は水参の細根(ヒゲ根)及び皮を剥いで陰干しした物です。円柱形紡錘形で、通例2~5の小枝を分かち、根頭には残茎またはその跡があります。外観は黄褐色で縦皺と枝根を除いた跡があります。味は初めやや甘く後僅かに苦味があります。

紅参:通例2~3本の小枝を分岐し、各小枝から多数の小枝を分かつ、外観は淡褐色~淡紅色半透明で角質様です。1斤(600グラム)中の本数によって品質が決まり、25根を最上品としています。

ヒゲ人参(毛人参):白参を調製するときは除いた細根で通例1~2ミリ以下でヒゲ状を呈します。本来の漢方では、人参の有効成分ジンノサイドが少なく「毒あり」のため破棄する部分です。

竹節人参:トチバニンジンの細根を除いた根茎を、湯通しして乾燥したもの。長さは20~30cmの不整円柱状で多数の結節があります。外観は淡黄色黄褐色で、殆ど無臭で苦味があります。

気味、薬味薬性

味は甘、微苦、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺、脾

効能

胃アトニーで心臓が衰弱して動悸を打つものに使用します。

肺、気管支の働きが鈍っている時に使用します。ただし肺部の熱がきつい時や働きが亢進している時には人参はよくありません。

胃液の分泌を促し、胃腸の働きを盛んにします。したがって胃液分泌の過剰なものに使用してはいけません。

人参の精油中のパナセントが大脳、延髄に作用し血管運動神経を興奮させ血行を良くします。ただし血行が良くなり元気になりますが、増血作用はありません。

血糖降下の作用があるといわれています。

神経系では神経衰弱、ノイローゼに対して体力を増し、睡眠は良好となります。

適応とする体質と処方例

  • いつまでも食物が胃に痞える感じがあり、やがて唾液分泌過多を訴えるようになった胃腸や、腎系の臓器の働きがひどく鈍ってしまっている方に使用します。処方例:人参湯(ニンジントウ)
  • 腸の働きが鈍って下痢を起こしたり、腸の蠕動運動が鈍って仮性便秘となり兎便がある方に使用します。処方例:六君子湯(リックンシトウ)
  • 身体が冷えて、頭痛や立ちくらみなどがあり、特に酷い時には嘔吐を起こしたりする方に使用します。処方例:呉茱萸湯(ゴシュユトウ)

地楡(チユ)をご紹介

生薬-地楡

日本各地およびアジアからヨーロッパにかけて分布するバラ科のワレモコウの茎を薬用として用います。

ワレモコウは、秋の野草の1つで生花にも用いられ、また春先には若い葉をおひたしにして食べたりもします。

気味、薬味薬性

味は苦、酸、性は微寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肝、大腸

効能

薬理学的に出血時間の短縮や血管収縮による止血作用が認められています。

抗菌作用、抗火傷作用が認められています。

吐血や鼻血、下血、湿疹、腫れ物、外傷、火傷などの出血や不正出血に用います。

適応とする体質と処方例

皮膚が乾燥し、痒く渋紙のごとく茶褐色になっている方に用います。処方例:当帰連翹湯(トウキレンギョウトウ)

竹茹(チクジョ)をご紹介

生薬-竹茹、竹葉

竹茹は、ハチクの外側の青皮を剥いで去り、次に縦に数本に割り、内側の白皮を取り去り、残ったものを薄く削ったものが竹茹です。

フワフワと綿のように削ったものでトロロ昆布に似ています。

気味、薬味薬性

味は甘、性は微寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺、胃

効能

胃の働きが亢進した胃熱からの熱気、その他の苦情を楽にします。

適応とする体質と処方例

胃下垂や胃アトニーの虚弱な方の不眠症や、心悸亢進症に用います。処方例:温胆湯(ウンタントウ)

沈香(ジンコウ)をご紹介

生薬-沈香

台湾や中国南部、東南アジアに分布するジンチョウゲ科の常緑高木、ジンコウの樹脂を含んだ木材を用います。

古来より有名な香木として知られ良質のものは比重が大きく水に沈むために沈香あるいは沈水木という名があります。

ジンコウは生木に芳香性の樹脂が含まれているのではなく、切り株の損傷部や枯死した後に自然と集まってくる樹脂です。また木材が倒れて土中に長い期間埋まり腐敗した後に樹脂を含んだ部分だけが残ることがありこれを珍重します。

最近では幹に人工的に傷をつけて樹脂を分泌させたり、木材を10年以上土中に埋めて腐らせて沈香を採取する方法が用いられています。

また正倉院には、蘭奢待と呼ばれる最高級の黄熟香が収蔵されています。漢方太陽堂にも最高級の沈香が展示されています。

気味、薬味薬性

味は辛、苦、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾、胃、腎

効能

体内を温めて、痛みや吐き気を止め、腎気を補い喘息を治す作用があります。

小児の疳の虫に用います。

適応とする体質と処方例

胃腸虚弱で、胃下垂や胃アトニーの著しい人が、喘息発作を起こして呼吸促迫する方に用います。処方例:喘四君子湯(ゼンシクンシトウ)