桂皮・桂枝、荊芥、決明子、玄参、膠飴

漢方生薬

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。
初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

桂皮・桂枝(ケイヒ・ケイシ)をご紹介

普通の葉は、中心に1本太い筋が入っていて細い筋が左右に出ているのが、ケイの葉は中心に3つの大きな筋があってその形を圭といいます。

古代国王が、その身分を表す為に用いた印の型に似ているので、圭に木辺をつけて桂枝と呼ばれるようになりました。

気味、薬味薬性

味は辛、甘、性は温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

心、肺、膀胱

効能

血行をよくします。

副交感神経の緊張を正常にします。

芳香性の健胃薬で、胃壁を刺激して胃酸の分泌を盛んにします。胃酸過多や胃潰瘍に用いると胃痛を起こすことがあり、これは黄連で抑えることができます。

又、量が多くなると桂枝の辛味成分が、血液を通り子宮、腎に分泌、刺激されると流産の原因や腎の病となります。

適応とする体質と処方例

内臓が悪くなく、比較的汗かき症の方。処方例:桂枝湯(ケイシトウ)

民間療法

健胃、整腸〔内服〕乾燥した根茎(肉桂)の粉末を1日に0.3~1g、2回に分けて、食前に服用。

荊芥(ケイガイ)をご紹介

生薬-荊芥

荊芥の本名は仮蘇と言われ、匂いや味が紫蘇のようで仮蘇と言われました。荊芥の花が咲く時期に地上部の花、葉、茎を採集し、3mm前後に細かく刻んで日陰で乾燥したものです。

荊芥は古いほうが良いと言われますが、あまり古すぎると有効成分の揮発分が失われたり、虫がついたりするのでよくありません。

気味、薬味薬性

味は辛、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺、肝

効能

発散、発汗させ血行を盛んにさせます。精油の辛くて苦い成分は、内臓を刺激し、よく働くようにし、芳香の匂いで体内の毒素を発散させます。発汗力は相当強く、汗かきの虚弱者には使用してはいけません。

おできの薬として使用します。防風と一対で併用することが多く、防風は化膿時のアレルギーによって生ずる毒素を排除する働きに対して、荊芥は精油が血行をよくし発汗を増しアレルギーに対処します。

発汗、解熱、解毒薬で頭痛やめまい、瘡腫に用います。

荊芥の葉を用いて、鼠の穴に入れると鼠の害を防ぐのに良いです。

適応とする体質と処方例

  • 体表の皮膚部におできがあり、頭痛を伴なっており、肝臓機能の低下した方に用います。処方例:荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)
  • 化膿性皮膚疾患で、皮膚、筋肉が腫脹して熱を帯びたものに用いられます。処方例:十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
  • 肥満体質の改善や常習便秘。高血圧や脳卒中、脳梗塞の予防まで応用として用いられます。処方例:防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
  • 蕁麻疹、痒疹で赤く地図の様になっている発疹、固定蕁麻疹などに用います。また、アトピー性皮膚炎にも多用されます。処方例:消風散(ショウフウサン)
  • 胸部から上に充血して毒気多く、顔面や頭部、頸項部に充血化膿性腫物を起こしたものに用いられます。処方例:清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)

決明子(ケツメイシ)をご紹介

生薬-決明子

エビスグサの種子を決明子として使用します。

決明子を連服していると視力が増進されるというので、明を決(ヒラク)種子ということで決明子の名が得られました。また馬蹄決明子とも言われます。

決明子を連服すれば、ホルモンの分泌が盛んになって男性の性器が馬の蹄のごとく堅くなるので、馬蹄決明子とも言われています。

これによく似た名前に石決明と草決明とがあります。石決明はアワビの貝殻で草決明はノゲイトウの種子です。

気味、薬味薬性

味は甘、苦、鹹、性は微寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肝、胆

効能

緩下剤となり大黄と同じような働きがあります。

眼の関係の疾病を治します。

ホルモンの分泌を盛んにし精力旺盛な身体にします。

適応とする体質と処方例

眼の充血、流涙、眼の疼痛などに用います。処方例:決明子湯(ケツメイシトウ)

民間療法

  • 便秘(5g)〔内服〕煎じて服用。
  • 高血圧予防〔内服〕1日10gほどを煎じてお茶代わりに飲むと良いが、同量のヨクイニン(ハトムギの種子)を加えて飲むと健康茶として好ましい。決明子、ヨクイニンとも焙じて使用。
  • 神経痛、リウマチ〔内服〕決明子、防已(オオツヅラフジの根茎)、桑白皮(桑の根)各12gを混ぜて煎じて飲む。

玄参(ゲンジン)をご紹介

生薬-玄參

多年草のゴマノハグサの根を薬用として用います。

ゴマノハグサとは、葉の形がゴマの葉に似ていることからそう呼ばれています。

玄参とは「黒い人参」という意味です。

気味、薬味薬性

味は苦、鹹、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺、胃、腎

効能

熱病による口渇や煩躁、結核などによる発熱、リンパ節腫などの清熱として用います。

便秘や腫れものなどに用います。

咽喉や口舌部の疼痛に用います。

適応とする体質と処方例

胃腸が虚弱な神経症や不眠症に用います。処方例:加味温胆湯(カミウンタントウ)

膠飴(コウイ)をご紹介

生薬-膠飴

粳米または糯米を蒸した後に、麦芽のアミラーゼを用いてデンプンを分解し、糖化させて造った飴です。

膠飴には、軟らかいものと硬いものがあり、軟らかいものは黄褐色で半透明の濃厚な水飴状で、固形のものはこの水飴を攪拌し、空気と混ぜて固めたものです。

一般に水飴状のものが良品とされています。

気味、薬味薬性

味は甘、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾、肺、胃

効能

胃腸虚弱者の腹痛を緩和します。

過労からくる胃腸障害、腹痛、咳嗽、吐血、口渇、咽痛、便秘などに用います。

非常に甘いため腹部膨満を起こしやすく、多量にとると嘔吐することもあります。

適応とする体質と処方例

虚弱な体質で冷えなどによる腹痛のある方。処方例:小建中湯(ショウケンチュウトウ)