痔核について
動物は4本足で歩行し生活をしています。人間は進化し400万年前に2本足歩行になりました。そのため骨盤の構造が変化しました。脊椎はS状に変化し、脳も大きくなり、大きな進化を遂げました。骨盤の変化により動物のような年1、2回の発情期が無くなり、1年中発情出来る能力も得ました。
同時に、重力で血液が下半身に溜まり、痔核にもなり易くなりました。この病は4本足走行の動物にはありません。
内臓下部の血滞、血栓
痔核は内臓下部の血滞や血栓性が原因です。軟膏や座薬などの表面的な治療では無理です。だから治らないのです。原因である内臓下部の血滞を漢方で解決します。だから治るのです。
痔核が出来やすい人
女性は出産等で内臓下部にうっ血が生じやすいです。他に、お酒を飲む人は肝臓の門脈部の血流が低下し、本来は肝臓へ行くはずの血液が内臓下部に流れ、肛門部に血流が貯まりやすくなり痔核の原因を作ります。
痔核の根本原因
人間が2本足歩行する事により、身体や内臓の血液が重力で下腹部に集まりやすくなり痔核が発生します。
更にアルコールの摂取などで肝臓に負担を掛けると、小腸からの血流が肝臓の門脈を通過しにくくなります。肝臓へ行くはずの血流が下腹部へ集中し下腹部の鬱血が酷くなります。
また女性の場合、妊娠中に下腹部へ血液が欝滞し、さらに出産により鬱血は酷くなります。
肛門周囲に分布する静脈叢がうっ血し、こぶを造ったのが痔核です。一般に痔で悩む大多数の人が、これで苦しんでいらっしゃいます。
肛門周囲に分布する静脈叢
肛門付近は細い静脈が集中しています。これは肛門部の柔らかさを維持し、便が硬い時でも伸び縮みする役割をしています。
静脈であり細かいがために血液は流れにくいです。肛門の歯状線あたりには細い静脈の塊があります。これは正常時には肛門のクッションの役割をしています。ところが色々な原因で静脈の流れが悪くなると、その部分が膨らんで球のようになります。これが痔核です。
肛門は神経が発達しているので、痔核が神経を圧迫し激しい痛みを起こします。
排便の時、肛門は拡張します。しかし、痔核部分は健康な部分のように拡張出来ません。そのため排便の時に裂けて出血を起こします。この裂けた部分に細菌が感染すると、炎症を起こし腫れ、激しい痛みのため動けなくなる事があります。
痔核の程度
内痔核の進行度合いを程度により1から4度に分けます。罹患期間や生活様式などが影響を与えます。
- 1度。肛門外への脱出がない状態です。
- 2度。排便時に脱出しますが、排便後に自然に元に戻ります。
- 3度。排便時に脱出し、排便後は押し戻さないと元に戻りません。
- 4度。常時脱出の状態です。
外痔核
内痔核が、長期に渡り脱出を繰り返していると、外痔の静脈叢も膨らんで皮膚が球状に盛り上がります。これが外痔核です。血栓や血腫ができると更に痛みが激しくなります。
一般に外から見える場合を外痔核。肛門の内側にあり普通の方法で外から見えないのを内痔核と言います。
痔核の養生
お風呂で十分温まる
肛門部の細い静脈の血流を改善しないといけません。
まず肛門部を温める事です。痔ろうの場合、温めると逆に悪化しますので注意を要します。シャワーでなく出来るだけ入浴にてお尻の血流を改善する。入浴で温まると下半身に停留した血液は上半身に戻りやすくなります。
便秘を避ける
便意を我慢しない、便秘は禁物です。便秘すると排便時に力むため鬱血が更に酷くなります。また下痢は肛門部が不潔になり易いです。
食物繊維
食物繊維を多くし必要なら適切な便秘薬を使用する。少しでもスムースな排便を行い腸内細菌を正常に保つために火を通した野菜の水溶性繊維を多めにします。
お酒を控える
お酒の摂取による肝臓の負担を取り、肝臓の血流を回復させることが大事です。刺激物等も避けます。
立ちっぱなしを避ける
長時間の同じ姿勢は控え、軽い運動やストレッチをする。同じ姿勢でいると血流が停滞します。
下半身の運動
適度に必ず下半身を動かしてください。下半身の運動をすることにより、静脈血を心臓に戻ります。陸上選手には痔核が居ないというのも、うなずけます。
下半身の静脈血を心臓に戻すのは、膝から下の筋肉が有効です。お勧めは脹脛を使う運動です。毎日ご自分で背伸びをする運動を続けます。
痔核と漢方
激しい痛みがある時は、漢方薬が良く効きます。
脱出した内痔核が肛門の括約筋で締め付けられ痛みが発生します。そのためか漢方の下焦の清熱剤である血液中の水分を増やし血液の流れを良くする石膏を使用すると、即効で痛みが消失する方が多いです。
また痔核部分は固く張った皮膚の状態になっています。そのため硬い便等で簡単に傷がつき出血をします。静脈血管の鬱血ですので出血は多く便器にポタリと落ちたり、便器が真っ赤になる事もあります。
ある程度進行した痔核は漢方で縮小しない事もあります。その場合は手術をお勧めします。手術をしても根本の原因は改善されていません。漢方で根本原因を除き再発防止をする必要があります。
痔核の漢方治療
どうして。何故。痔核が悪化するか、考えましょう。治り方は個人差があります。以下は一つの目安として参考にしてください。
漢方治療期間
痔核の場合は、血流改善薬と適方薬を併用すると、1から6ヶ月程で痔核が縮小してくるのが一般的です。また3から9ヶ月程で、消失する人が多いようです。
出血のある人は、止血薬を併用すると通常1から3ヶ月程で出血が無くなってきます。
肝機能の改善も必要
肝臓の血流が悪いと痔核は良くなりません。お酒を飲む人、肝臓が気に成る人は、肝機能改善薬を併用していきます。出来るだけ、お酒を控えるか禁酒が必要なこともあります。
痛みの激しい痔核
痛みが激しい時は、漢方薬で非常に効果的なことが多いです。ぜひお試し下さい。
長年患っていると
長年患った痔核や4度程度の場合は、内服では難しい場合もあります。内服で改善しづらい場合は外科的処置をし、その後に再発防止で漢方薬を内服されることをお勧めします。
痔核と脱肛、両方患っている人
痔核の患者さんで、脱肛を伴っている人もいらっしゃいます。その場合は両方を同時に治療するか、又は酷い方から治療を開始します。
内痔核が脱肛している場合、痔核が治らないと脱肛は改善しません。原則として痔核の治療を優先します。
便秘は痔を悪化させる
便秘をすると痔核は悪化します。便秘の人は癖に成りにくく、腹痛の起こりにくい便秘薬を併用することがあります。
再発防止
良くなっても、食事や生活に気をつけながら、1日1回は服用したほうが良いようです。完全に良くなったと思ったら再発防止をしてください。通常は今まで服用した漢方薬をそのまま服用します。1日1回に減らして6ヶ月程連用します。
漢方で治す
痔は、やまいだれに寺と書きます。お寺に行くまで、死ぬまで、治らない病気だと言われます。
西洋医学的には手術等の外科的治療で痔核は治療されます。しかし手術によって簡単に症状が消えても、痔の原因である静脈の異常なうっ血の原因が取れていない限り、再発し易いと考えられます。漢方治療にて改善が見られない場合、西洋医学的な外科的処置を行い、漢方で再発防止をする方法もあります。
痔は治療と養生が大事です。治療をしないと治りませんが養生が悪くても治りません。生活養生、食養生、共に大事です。一緒に協力し治しましょう。
太陽堂漢薬局の痔核の漢方薬をご紹介
痔核に使われる様々な漢方薬です。
肝臓の門脈圧亢進、便秘、子宮卵巣の腫脹他、妊娠等の圧迫により肛門や直腸静脈が還流を妨げられ、うっ血を起こし痔核は酷くなります。漢方薬は便秘を治し、下腹部のうっ血を除き治癒に向かわせます。
紫雲膏
痛みのある痔核や裂肛などの切れ痔に外用します。激痛の時に使用します。痛みを止めるだけでなく、外用すると出血が早く消失します。傷を修復する働きもあります。
豚脂を基剤として使用しますので、豚アレルギーの人には使えません。
芎帰膠艾湯
太陰の虚証で、痔の出血が長引いて貧血傾向のある人。虚証で貧血がち、痔核からの出血が激しい疲れやすい人に使用します。出血を止めて貧血を回復させます。
甘草湯
痛みが激しい時に、外用で煎じた温かい液を付けると痛みが消失します。腰湯にすると効果が高いです。甘草一味を濃く煎じ温かい煎液で激しい痛みの患部を洗うと、痛みが速やかに消失します。
別名が忘憂湯です。激しい痛みの憂いを忘れる漢方薬の意味です。
腰湯の方法
忘憂湯を煎じ洗面器に入れ、温かい忘憂湯の中に激痛のお尻を付けます。付けた瞬間に痛みが消失していきます。痛みが激しいほど効きます。軽い痛みには効果がありません。
大黄牡丹皮湯
陽明の実証で右下腹部に抵抗と痛みがあり、便秘がちな人。女性では生理異常を伴う人です。血毒で炎症が激しい人の痔核に使用します。下腹部の緊迫感が強く肛門部が腫脹し硬結状となった人に使用されます。
麻杏甘石湯
痔核からの出血と痛みが激しい人に効きます。体力的には中等度以上です。痛みが激しい人ほど治り易い傾向もあります。内痔核の脱出部分が、肛門括約筋で締められた時に激しい疼痛が起こります。
麻黄、杏仁、甘草、石膏の4味の組み合わせです。杏仁は、心臓に働き血液の流れを改善します。石膏は、陽明病の代表的な薬味です。石膏により水分代謝を変え、血液中に潤いを付け、下半身である肛門静脈叢の血流を改善していると思われます。
陽明病とは下半身に熱や炎症、病の原因がある時の病態です。腎臓の水分代謝が上手く行かずに血液中の水分が減少した脱水状態。女性ホルモン他での瘀血。便秘等で腸内に熱の籠った時の主に3つに分かれます。
乙字湯
日本の原南陽の経験方です。痔核に最も頻用される処方です。一般的に肝臓の門脈圧亢進による人に使用します。
この漢方薬は肝臓の血流も改善します。構成薬味を見ると肝臓の機能を良くする薬味が入っています。肝臓の門脈の血流を良くして治すタイプの漢方薬です。肛門裂傷で便秘の人で痔核の痛みも強い人、また出血もしやすい傾向にある人です。桃仁、牡丹皮、魚腥草と同時服用すると効果が増します。
養生として、刺激物、特にアルコール等は禁止となります。
桂枝茯苓丸
古方派の代表的な駆瘀血剤です。瘀血とは血毒の熱が出ている状態です。打ち身をした時、生理前の黄体が活発な時、血栓、血液の欝滞、のぼせ等に使用します。桂枝茯苓丸に甘草と生姜を加えて、マイルドにしたのが甲字湯です。
肛門部の鬱血、痔核に直接に働きます。少陽の実証です。のぼせと足の冷えがある人で、時に下腹部痛がある人に使用します。また女性で子宮や卵巣に問題がある人にも効果的です。便秘の人は便秘薬と併用します。
養生として肛門部を温め、下半身の運動を推奨しています。
十全大補湯
太陰病虚証です。痔核からの激しい出血により貧血をきたし、倦怠感や疲労感が強いです。
芍薬甘草湯
痔核の痛みが激しい場合に用います。
黄連解毒湯
頭に血が昇り、顔に赤みがある、血圧の高い人の痔核に使用します。
三黄瀉心湯
少陽の実証です。黄連解毒湯と同じ目標ですが、頭部が充血した感じで顏がほてり、のぼせ易いです。出血も激しく、便秘を伴う場合に用います。
桃核承気湯
桂枝茯苓丸の強力版で、症状が激しい場合や実証の患者さんに使用します。便秘がちでのぼせが強い、手足の冷えがあるなどが目標となります。腹証では少腹急結が特徴になります。
陽明の実証で、身体もガッチリしていて赤ら顔の人が多いです。のぼせ感が強く、手足が冷え便秘がちの痔核に使用します。女性では生理痛や生理不順のある場合が多いです。桂枝茯苓丸より更にうっ血の酷い時に使用します。
養生は桂枝茯苓丸と同じですが、瘀血が強いので更に下半身の運動量を増やす必要があります。
少腹急結
少腹急結とは瘀血の場合に生じる腹証です。主に左側の下腹部に出現します。臍の斜め下から、腸骨に沿って股間へ向かうバナナ状の腹証です。抑えると圧痛があります。瘀血が強い程、長く太くなります。
当帰建中湯
虚証で貧血がち、体力がなく、痔核や脱肛の痛みが激しい人に用います。
太陽堂漢薬局の改善例
痔核を太陽堂漢薬局で治療された改善例をご紹介します。漢方の不思議な力を信じて。一緒に取り組みましょう。
脱出も以前よりは小さい
男性44歳
漢方薬を変えてからは大分調子が良く、痛みや出血は全く無くなりました。脱出も以前よりは小さく、肛門部に近い所だけになってきた感じがします。痔核自体が前より柔らかくなってきている感じです。
太陽堂漢薬局からコメント
痔核が柔らかくなり、脱出の状態が小さくなってきたようですね。私達も大変嬉しく思います。本当に良かったですね。
原因となる肛門の瘀血が、かなり改善されてきた様に思われます。このまま順調に改善して行くと良いですね。
どうしようもない痛みはもうない
女性55歳
外痔核の、どうしようもない痛みはもうないです。時折、違和感はあります。違和感は便通に左右される感じがします。
太陽堂漢薬局からコメント
通常、肛門部分は柔らかいのですが、痔核があると伸び縮み出来ず、便の出が悪いと傷が付き炎症を起こします。それでも痛みが和らいで来ていますので、小さくなって来たと思いますよ。
便の出始めが硬くならない様に、水溶性繊維質を沢山摂る様に心掛けて下さいね。
症状、排便共に順調です
男性55歳
痔核については、症状、排便共に順調です。
腰痛については、朝の痛みが減ってきました。動き始めると会社に着く頃には痛みは無くなります。
太陽堂漢薬局からコメント
引き続き安定しているご様子ですね。漢方薬で痔の原因となる肛門の静脈血の鬱血を改善して行きましょうね。
腰痛ですが、瘀血が原因で痔核と腰痛の両症を起こしています。朝の痛みが減って来たのは着実に両方が良くなってきていると思います。
ご養生では、緑の野菜を摂ると改善が速まりますよ。たくさんお召し上がり下さいね。
痔核は絶好調です
男性44歳
痔の漢方薬をお願いします。たまに便が硬い事もありますが、全く気になりません。絶好調です。
精神の方もリラックス出来ていて、お陰様で元気に過ごせてます。ありがとうございます。
太陽堂漢薬局からコメント
こんにちは。調子が良い様で嬉しいです。
ご存知のように、痔核は血栓症になります。今回は血栓に汎用する薬味を少し追加し、処方を合わせ直しています。漢方薬が、もう少し隠れた血栓まで改善するようになると思います。
日中も殆ど痛みもなく
女性46歳
外痔核は、ずいぶん良くなり喜んでいます。
排便時も日中も殆ど痛みもなく過ごしております。ただ2日前から少し便が硬く、排便時に痛みがあり、少し日中も違和感が残る感じがしています。
太陽堂漢薬局からコメント
こんにちは。漢方薬を再開し、早く症状が改善されて来ましたね。良かったです。症状を消失させて再発しない所まで頑張りましょうね。
便が硬くなると痛みが生じやすくなります。通常、肛門部分は柔らかく硬い便でも伸び縮みするのですが、外痔核があると伸び縮み出来ず、便によって傷が付き炎症を起こします。
最も重要な事は便の出始めを軟らかくする事です。硬い便が続く時は、便秘薬を使用する等で便を軟らかくする方法を考えて下さいね。
お病気に対して
痔の漢字は、病だれに寺と書きます。お寺に行く、死ぬまで治らないの意味です。痔核で悩むより、漢方治療をし養生をして一緒に治して行きましょう。