肝機能改善目的で肝細胞の破壊を止める煎じ薬

がん

悪性腫瘍に対する考案。かけ橋掲載分

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肝硬変に肝臓がんを併発した主婦

1934年生、女性

B型、C型混合肝炎に肝臓がんが出来た主婦の方。
初回来局時GOT124、GPT148、LDH455、血小板61000、TTT17.4、ZTT12.4、腫瘍マーカーAFP7000。
検査数値上では肝硬変もあるようである。がんに対しては手遅れで、抗がん剤の服薬もできない状態との事。糖尿病もありインシュリン16単位を注射している。顔色もくすみ悪い。

初回、肝機能改善目的で肝細胞の破壊を止める煎じ薬、がんに対する免疫力増強目的で菌糸体製剤。腫瘍に対しポリープ等の塊を取る働きのある粉剤を投与。

8ヵ月後、CT検査でがんが縮小しているらしいとの事。腫瘍に対し菌糸体製剤、肝炎に対し川玉金製剤に変方する。
11ヵ月後、腫瘍マーカーAFPが20に低下、正常値に近くなる。本人は疲れも無く食欲も有り、太ってきて快調との事。
1年3ヶ月後、腫瘍に対し菌糸体製剤、肝炎に対し川玉金製剤、肝細胞再生目的で曲蔘製剤に変方する。
1年6ヵ月後、病院の検査で肝臓がんが消失しているとの事。

がんに対する免疫強化の治療方針を肝機能改善中心に変更する。腫瘍と肝硬変に散剤、肝機能改善目的に川玉金製剤、肝炎ウイルスに対し、肝炎ウイルスと肝細胞再生目的で曲蔘製剤に変方する。

治療開始より2年1ヵ月後、GOT73、GPT95、LDH392、AFP25で肝臓がんの心配は無くなったが、現在も肝硬変の改善のために上記薬方を服用中である。

上皮性悪性腫瘍に対する考察1

以前より、がん患者を観察すると半夏厚朴湯証を呈している人が多い事に気付いていた。これはモルヒネ投与による副作用、又はがんに対する不安からの証の出現と考えていた。

がん患者は反応穴において5ヶ所の反応を示す事が解っている。大きく分けて補法の適する反応。瀉法の適する反応である。補法の適する反応は第5胸椎横、瀉法の適する反応は第10胸椎横に集中している。
詳しい反応穴の場所は木下反応穴資料を参考にして下さい。
これらの反応は強弱の差は在っても全てのがん患者に共通する反応である。
補法の適する反応は臓腑では小腸の腑に属する。菌糸体製剤にて改善出来る。
瀉法の適する反応は4ヶ所に分かれている。

  1. 腎の臓に属する瀉法、ミネラル製剤で改善
  2. 肺の臓に属する瀉法、青皮製剤で改善
  3. 大腸の腑に属する瀉法、キチンキトサンで改善
  4. 大腸の腑に属する瀉法、薏苡仁で改善

上記4ヶ所の瀉法は訶子製剤だけでも全て改善する。
現在まで補瀉合わせ上記5ヶ所を治療点としてきた。これによりがんが消失し腫瘍マーカーも正常化した患者さんが多数存在する。

しかし中には糸練功による合数の改善を確認しているにも関わらずがんの縮小が見られない患者さんもいた。

今回、肺がんの患者さんで従来の理論に合わない例に遭遇したので報告する。

55歳男性。
1998年8月8日、左肺がん。脊椎と心臓横のリンパ腫に転移。

手術も抗がん剤も出来ない状態との事。現在は放射線治療だけ受けている。
糸練功による病態の確認

  • 小腸の腑の補、1.5合、5プラス、がん本体、K菌糸体製剤、1日2回投与
  • 大腸の腑の平、3合、5プラス、五志の憂、半夏厚朴湯、1日1回
  • 肝の臓の補、6合、3プラス、リンパ腫、牡蠣肉エキス、1回3錠、1日1回

1998年10月13日、大村先生発表によるがん組織への重金属蓄積の排除に対応する為、青皮製剤開発。従来の薬方に青皮製剤追加投与

平成11年9月21日、上記4ヶ所のがんの瀉の反応穴、発見。患者さんは咳も無く元気
糸練功による病態の確認

  • 腎の臓の瀉、3.5合、1プラス、ミネラル製剤適応
  • 肺の臓の瀉、2.5合、2プラス、青皮製剤適応
  • 大腸の腑の瀉、1合、3プラス、キチンキトサン適応
  • 大腸の腑の瀉、5合、1プラス、薏苡仁適応

この4ヶ所全てに対応する訶子製剤開発。投与内容は以下の通り
菌糸体製剤、1日2回
訶子製剤、1日2回、菌糸体製剤と訶子製剤は同時服用
十全大補湯合曲蔘製剤、1日1回
スクアレン、1回3カプセル、1日2回
2000年3月9日、咳がまた出始める。麦門冬湯追加。
糸練功による病態の確認

  • 小腸の腑の補、5合、プラス1、菌糸体製剤適応
  • 腎の臓の瀉、7.5合、プラス1、ミネラル製剤適応
  • 肺の臓の瀉、消失、治療終了。青皮製剤適応
  • 大腸の腑の瀉、7合、プラス3、キチンキトサン適応
  • 大腸の腑の瀉、消失、治療終了。薏苡仁適応
  • 小腸の腑の補、2合、1プラス、麦門冬湯適応

1年7ヶ月前と比べ明らかな改善をしている。この結果だけを診ると治療終了に近い状態まで改善しているようである。

2000年3月15日、吐血、入院。糸練功による病態確認と異なる。がんは改善されていないと思われる。他にチェックすべきポイントが漏れていると考えられる。
2000年3月23日、何回もこの患者さんを糸練功にてチェック。1合に半夏厚朴湯証が在るだけで他に異常がみられない。

驚いた事に何回か診ているうちにがんの病変部分より半夏厚朴湯証が出ている事に気付く。当然、五志の憂からも半夏厚朴湯証が出ている。しかも五志の憂からは2つの半夏厚朴湯証が検出される。
1つは本来この患者さんが持っている自律神経の異常

これはがんの病変部分より検出されない。

もう1つは五志の憂、がんの病変部分両方から検出される半夏厚朴湯証。俄かに信じ難い。
考察。

信じられない結果であるが、その後2人のがん患者で確認。

2人ともがんの病変部分より半夏厚朴湯証が検出される。

3人のがん患者の結果が偶然とは考えられない。

その夜、布団に入り、以前ヨードをゲル化した製剤でがんを治療していた先生を思い出す。

この先生は私の敬愛する矢数道明先生と交流を持たれ、また全国に広がった漢方研究会の創設に関わった先生で、ゲル化したヨードでご自分の息子さんのがんを治されたそうである。その後も何例かの例を手記にて発表されている。残念な事にヨードのゲル化技術を人に漏らすこと無く他界され、現在は失われた製剤である。

次の日の朝、ヨードとがんの病変部から発する半夏厚朴湯証との関係を調べる。これまた驚くべき結果が出る。
元来の五志の憂の半夏厚朴湯証はヨウ素イオンで消えない。

しかしがんの病変部より発している半夏厚朴湯証はヨウ素イオンにて消失する。また曲蔘製剤2包とスクアレン4カプセル同時服用でも消失する。

更に数日前の新聞にがんの漢方治療として出ていた記事を思い出す。

その中で、中国でがんに使われている、克癌7851は本草綱目に記載の緑青、鉄くずが基本となっていると記載されていた。本草綱目の緑青は天然の岩緑青である。
早速、緑青、銅イオンと鉄イオンをイメージ診にてチェック。鉄イオンには効果が認められないが銅イオンは手ごたえあり。更に半夏厚朴湯中の薬味を調べると厚朴に効果あることが判明。和厚朴には効果無し、唐厚朴に効果あり。

これら厚朴、銅、ヨウ素は元来の五志の憂の半夏厚朴湯証には反応しない。しかしがんの病変部から発する半夏厚朴湯証には反応する事も判明。その強さも半夏厚朴湯、曲蔘製剤とスクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオンの順に強くなっている。

半夏厚朴湯に関する考察。
半夏厚朴湯は水を利する。金匱要略には身体皆腫ると記載されている。人体の中で水のみを物理的に動かすのは不可能である。半夏厚朴湯の薬理には利尿ホルモン、抗利尿ホルモンが関係しているかもしれない。
しかし他の利水の漢薬の作用を考えるとミネラルを始め生体内物質を動かす事により、それに伴い水が動いているとしか考えられない事が数多くある。浸透圧現象でも水が動くのは水以外の溶質の濃度の違いにより、その結果水が動いている。漢薬の利水剤の作用は水溶性生体内物質を動かしてバランスを整えているだけではないのか。その結果、水が動くのでは。そう考えれば新薬利尿剤の強制的利尿作用と漢薬の利水作用との違いが明確に理解できる。
ヨウ素、銅もその生体内物質の1つなのでは。ヨードの関係する甲状腺に半夏厚朴湯を多用するのは唯の偶然とは思えない。半夏厚朴湯証で無い人も甲状腺機能低下症になれば半夏厚朴湯証を呈する。半夏厚朴湯は甲状腺機能亢進、バセドウ氏病。機能低下、橋本氏病両方に使われる。
仮説。
がんの病変部はミネラル、ヨード、銅イオン等のバランスが崩れ、本来半夏厚朴湯証でない人にも半夏厚朴湯証が現れるのでは。

これはがんの第6番目の反応と治療点として考えるべきだと思います。
追伸。
方意さえ解れば、糸練功と薬味理論により処方を組むのは難しい事では在りません。厚朴、銅イオンより強い薬味を既に探し出しています。先生方の追試を至急お願いします。2000年3月24日、伝統漢方研究会へ投稿

上皮性悪性腫瘍に対する考察2

前回報告した第6番目の反応、治療点は、半夏厚朴湯、曲蔘製剤とスクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオンで反応は現在の所、糸練功で調べた全員の患者さんに確認されています。第6番目の反応、治療点として間違いないようです。
また銅イオンより更に強い薬味が解っています。銅イオンより黄精が強く、更にバラ科の甜茶が効果が高いようです。
その後、ある先生から石決明が良いのではと指摘がありました。通常、貝殻は表裏共に瀉です。しかし石決明のみは裏、内側が瀉、表、外側が補となっています。また、石決明は九孔と呼ばれる9個の穴が開いたのを薬用とします。この穴は稚貝より1年に1個づつ増えていきます。修治は水で練った小麦粉で殻を包み火で炙り、表の黒い部分を取り除き砕いて使用します。
石決明を調べると確かに強く、ほぼ完全に第6番目の反応が消えるようです。更に甜茶と石決明を合わすと更に効果が良い事が解っています。黄精と甜茶の配合は不可です。
この結果、第6番目の反応穴への薬味、薬方の強さは半夏厚朴湯、曲蔘製剤とスクアレン、厚朴一味、ヨウ素イオン、銅イオン、黄精、甜茶、石決明、黄精と石決明の順に強くなります。
第6番目の反応は従来の悪性腫瘍の瀉の第10胸椎横の反応穴にも出ますが、反応が弱く見逃しがちです。五志でチェック後、同じ合数でがんの病変部より出ていないかチェックした方が確実です。

新しい訶子製剤には甜茶と石決明が組み込まれています。訶子製剤の方意中でミネラル製剤の方意がまだ弱いようです。牡蠣生姜の含量を増やせば解決するのでしょうけど、他の4つの方意への影響を考え、焼牡蠣を原料として検討中です。
追記。
悪性腫瘍の第7番目と思われる反応が見つかっています。骨盤横の白血病、悪性リンパ腫の反応穴に出ます。これも殆どのがん患者に共通した反応です。

これに対し、別の先生が牡蠣肉エキス、笹多糖類製剤で第7番目の反応が消失する事を発見されました。牡蠣肉エキスのみの製剤は不可。漢薬方意としては腎の補、加味帰脾湯証です。単一薬味としては紫イペ、太子蔘などで対応できるようです。リンパ系免疫力の低下だと思われます。
更にがんの患者さんには共通して風毒診があるようです。この風毒は強力で従来のスクアレンや曲蔘製剤では消失し切れません。第7番目の反応に対応できるように、菌糸体製剤、訶子製剤を現在改良予定です。2000年5月6日、伝統漢方研究会へ投稿