写真は、青森市八甲田山のブナ林です。
特発性血小板減少性紫斑病の女性。漢方研究会で発表
太陽堂漢薬局が発表報告した論文。論文、改善例のご案内はこちら
特発性血小板減少性紫斑病
2023年11月、伝統漢方研究会第20回全国大会。日本、東京、アジュール竹芝
木下順一朗。福岡県、太陽堂漢薬局
諸言
特発性血小板減少性紫斑病は難病に指定されています。自己免疫性疾患が疑われていますが原因は判明していません。
症例
- 主訴。特発性血小板減少性紫斑病
- 既往症。ハウスダスト、花粉症。感染症で入院経験が数回あり
- 副作用歴。血小板輸血で蕁麻疹が出る
- 現症。37歳、女性、身長165センチ、体重60キログラム
- 望診、問診。舌診は燥湿中間、歯切り痕大、微白苔、舌色普通、舌下静脈なし。食欲普通、便秘気味。水分摂取は少なく、小便色はやや黄色い。生理は順調。腹部が冷える。
- 治療歴。2007年に発症。2009年、脾臓摘出手術。その後ステロイド治療にてプレドニン服薬。2017年、抗CD20モノクローナル抗体のリツキサン点滴
- 服用薬。プレドニン20ミリグラム、胃薬、便秘薬。現在は血小板増加目的でレボレードを勧められている。
治療経過
2017年7月27日。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、臓腑0.1合5プラス。帰脾湯加柴胡3紫根11。苦み、アクのある食材は避ける様に、もし食べる時は味噌料理や生姜を使うよう指導。
2017年9月30日。血小板数13,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、臓腑3.6合2プラス。前方に牡丹皮を追加し加味帰脾湯加紫根10に変更。
2017年11月17日。漢方薬服薬が2週間空く。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡3.6合臓腑4.3合2プラス。全体量を1割減薬し鹿茸追加、加味帰脾湯10分の9加紫根9加鹿茸末0.3グラム。
2017年12月22日。血小板数40,000。主治医よりプレドニン5ミリグラム3錠に減薬。4週間単位で2.5ミリグラム半錠づつ減薬予定。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡4.6合臓腑6.2合2プラス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡5.2合3プラス。
2018年2月1日。漢方薬服薬が約2週間空く。血小板数14,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡5.3合臓腑6.7合2プラス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡4.8合3プラス。
2018年3月6日。血小板数31,000。骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡6.2合臓腑7.3合1プラス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡6合プラス2。帰脾湯加山梔子2紫根10に変方。
2018年4月3日。血小板数43,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.2合臓腑8.2合プラス2。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡6.1合プラス2。
2018年5月15。漢方薬服薬が10日間空く。血小板数42,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.7合臓腑9.1合プラス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.2合プラス1。山梔子を抜き、帰脾湯加紫根10に変方。主治医の指示によりプレドニン5ミリグラム3錠を5ミリグラム2錠へ減薬。
2018年8月21日。血小板数32,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡8.2合臓腑9.8合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.6合プラスマイナス1。紫根を減薬し、帰脾湯加紫根9。
2018年10月2日。漢方薬服薬が12日間空く。血小板数25,000。
2018年11月8日。漢方薬服薬が17日間空く。血小板数37,000。
2019年1月8日。漢方薬服薬が40日間空く。血小板数23,000
2019年3月5日。漢方薬服薬が1ヶ月間空く。血小板数13,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡5.3合臓腑9.9合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡3.5合1プラス。全体量を1割減薬し反鼻を追加。帰脾湯10分の9加紫根9加反鼻末0.27。主治医の指示によりプレドニン5ミリグラム3錠を30ミリグラムへ増量。
2019年4月9日。血小板数71,000、プレドニン5ミリグラム2錠。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡6.8合臓腑9.9合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡5.4合プラス3。
2019年5月14日。漢方薬服薬が10日間空く。血小板数63,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.4合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.2合プラス1。反鼻抜き。帰脾湯10分の9加紫根8.1。主治医の指示によりプレドニン12.5ミリグラム。
2019年6月20日。漢方薬服薬が17日間空く。血小板数35,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡3.3合臓腑9.9合プラス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡2.7合プラス1。反鼻と化石牡蛎追加、帰脾湯10分の9加紫根8.1加反鼻末0.27化石牡蛎末0.5。
2019年7月25日。血小板数60,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡4.7合臓腑9.9合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡3.4合プラス2。
2019年10月3日。漢方薬服薬が10日間空く。血小板数48,000。
2019年11月7日。漢方薬服薬が2週間空く。血小板数59,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.2合臓腑10合プラスマイナス1、副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.4合プラスマイナス1、反鼻を抜く、帰脾湯10分の9加紫根8.1加化石牡蛎末0.5。
2019年12月12日。漢方薬服薬が10日間空く。血小板数16,000。
2019年12月26日。漢方薬服薬が10日間空く。血小板数37,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡5.1合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.2合プラスマイナス1。帰脾湯から木香を抜く、帰脾湯10分の9去木香加紫根8.1。
2020年1月7日。血小板数57,000、プレドニン20ミリグラム服用。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡6.3合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡5.1合プラスマイナス1。
2020年2月4日。血小板数30,000。本人曰く、「昨年11月よりプレドニン10ミリグラムを3日に1回服用している」との事。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡4.7合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.2合プラスマイナス1。甘草を増量、帰脾湯10分の9去木香加甘草0.7紫根8.1。
2020年3月3日。血小板数51,000。病院の指示はプレドニン15ミリグラムだが、本人はプレドニン5ミリグラム、2日飲んで1日空ける事を繰り返している。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡5.3合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡8.3合プラスマイナス1。太陽堂からのコメント。次回は糸練功の結果を6から7合まで上げたいです。血小板を7万が目標です。ステロイドは勝手に量を変えずに、現在の量をお守りください
2020年4月7日。血小板数79,000。プレドニンは5ミリグラム、1日おき。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡6.7合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡9.2合プラスマイナス1。
2020年6月9日。血小板数50,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡8.4合臓腑10合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡8.1合プラスマイナス1。紫根を1.5倍に増量。帰脾湯10分の9去木香加甘草0.7紫根12.6。太陽堂からのコメント。ステロイドは、症状に合わせての増量はあります。また副作用に対し減薬もあります。しかし慢性疾患の使い方は、抜いたり減らしたり、増量しないのが基本です。現在の分量をお続けください。血小板が4万を切るのは、何かあった時に危険です。
2020年7月。漢方薬服薬2週間空く。
2020年8月25日。血小板数29,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡4.7合臓腑9.9合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡8.4合プラスマイナス1。全体量を増量。帰脾湯去木香加甘草0.7紫根10
2020年9月24日。血小板数43,000。プレドニンは5ミリグラム、1日おき服用。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡5.9合臓腑9.9合プラスマイナス1。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡7.9合プラスマイナス1。
2020年10月27日。血小板数95,000。プレドニンは5ミリグラム、3日おき。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.2合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡8.3合プラスマイナス1。
2020年11月26日。血小板数74,000。プレドニンは2.5ミリグラム、1日おき。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡8.1合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡9.2合プラスマイナス
2020年12月24日。血小板数78,000。プレドニン1.25ミリグラムを1日おき。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡9合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡9.4合プラスマイナス。
2021年2月4日。漢方薬1週間服薬空く。血小板数67,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡9.2合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡9.6合プラスマイナス。甘草を抜き、帰脾湯加紫根10。プレドニンを抜いてみる。以後はステロイドは服用せず。
2021年3月9日。血小板数59,000。糸練功結果。骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡9合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡8.2合プラスマイナス1。
2021年4月。血小板数77,000。
2021年6月22日。漢方薬服薬10日間空く。血小板数51,000。糸練功結果、骨髄の反応。脾の臓、陰証、経絡7合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡9.8合プラスマイナス。熟地黄を追加、帰脾湯加紫根10熟地黄4.1。全体量を3分の2量へ減薬。
2021年7月。漢方薬服薬10日間空く。
2021年8月24日。血小板数51,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.2合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応。胆の腑、陰証、経絡10合プラスマイナス。熟地黄を抜き、帰脾湯加紫根10。服薬量3分の2量。
2021年10月6日。漢方薬服薬1か月半空く。糸練功結果。骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡7.8合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡10合プラスマイナス。
2021年11月2日。血小板数74,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、経絡9.2合臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡10合プラスマイナス。要治療の反応消失。帰脾湯加紫根10。服薬量2分の1量へ減薬。
2021年12月。漢方薬服薬2週間空く。
2022年1月。漢方薬服薬1週間空く。血小板数75,000。
2022年3月。漢方薬服薬1週間空く。
2022年5月。漢方薬服薬2週間空く。
2022年6月。血小板数91,000。
2022年8月10日。漢方薬服薬2週間空く。血小板数141,000。糸練功結果、骨髄の反応。脾の臓、陰証、臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡10合プラスマイナス。
2022年11月1日。血小板数120,000、糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、臓腑10合プラスマイナス。副腎の反応。胆の腑、陰証、経絡10合プラスマイナス。帰脾湯加紫根10。服薬量3分の1量へ減薬。
2022年12月14日。血小板数130,000。糸練功結果、骨髄の反応、脾の臓、陰証、臓腑10合プラスマイナス。要治療の反応消失。副腎の反応、胆の腑、陰証、経絡10合プラスマイナス。要治療の反応なし。
2023年3月。血小板数133,000。
2023年4月14日。血小板数183,000。糸練功結果。骨髄の反応。脾の臓、陰証、臓腑10合プラスマイナス。要治療の反応なし。
2023年5月26日。血小板数171,000。糸練功結果。骨髄の反応。脾の臓、陰証、臓腑10合プラスマイナス。要治療の反応出現。
考案並びに結論
特発性血小板減少性紫斑病の女性の相談を受けた。当初はプレドニンを服用していた。患者さん本人がプレドニンを好まず、自分で少しづつ減薬し2021年2月にプレドニンの服薬を止められた。それ以降は漢方薬の服薬だけで改善した例である。
また漢方薬の服薬も最初から服薬忘れが多かった患者さんであった。漢方薬を服用していないと血小板数は下がり漢方薬を服用すると血小板が改善する事を繰り返していた。継続し服薬になられたのは治療開始から5年後の2022年8月からだった。服薬忘れが無くなると急激に血小板数の改善が始まった症例でもある。
西洋医学では難しいと思われる症例でも東洋医学では簡単な場合もある。逆に東洋医学では難しい症例が西洋医学では簡単な場合も多い。
漢方は万能でなし。西洋医学のすばらしき点。東洋医学の及ばぬ点。ままあれど。漢方の力も捨て難し。
今回使用した漢方薬
帰脾湯去木香加紫根。黄耆2、当帰2、人参3、白朮3、茯苓3、酸棗仁3、竜眼肉3、甘草1、乾生姜1、遠志1.5、大棗1.5、紫根10
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