羚羊角、連翹、蓮肉、鹿角、露蜂房、芦根

漢方生薬

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

羚羊角

羚羊角は、蒙古および中国に棲息しているレイヨウの角です。日本のカモシカの角も和レイヨウとして使用しています。貯蔵には、風に当たることを避け袋に入れて貯えます。風に当たると薬効が落ちると言われています。使用する場合は、ヤスリで粉末にして使用します。

気味、薬味薬性

味は鹹、性は寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

効能

肝臓が悪くてその結果、目の病を起こしているものを良く見えるようにします。肝が高ぶって、癇の虫になって驚きやすいものを治したり、四季の風邪を引いて、こじれて肝部に苦情を出しているものに用います。

適応とする体質と処方例

高熱による痙攣、脳血管障害や子癇などに見られる痙攣や、意識障害などに用います。処方例。羚羊釣藤湯

連翹

連翹

連翹の果実を乾燥して薬用にしたものです。連翹の根を連ショウと言います。しかし連ショウは殆ど市販されず、連翹で代用されています。連ショウは腹部の熱、黄疸の熱を発し発黄するのに使用します。

連翹の和名をイタチハゼと言いますが、イタチのように臭気があって、実がはぜる事からイタチハゼと言われたようです。大粒で褐色を呈し、なるべく両片を分離しないものが良いとされています。

気味、薬味薬性

味は苦、性は微寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

心、胆

効能

様々な菌体に対して抗菌作用を持っています。おできが真っ赤に腫れ、底で膿を持っていそうなものに排膿薬として用います。上焦の諸熱、とくに身体の上部の顏の化膿のニキビ等に使用されています。

適応とする体質と処方例

  • 逆上せがあり、化膿性のニキビがある場合に、化膿時の苦痛を和らげる薬として用います。処方例。荊芥連翹湯
  • 咽喉の腫痛に用います。慢性化、遷延化したものにしばしば効果があります。処方例。駆風解毒湯
  • 咽喉部、頚部、耳部の炎症を治すものに用います。処方例。柴胡清肝湯

民間療法

小連翹と呼ばれるものがあります。これは民間薬として知られるオトギリソウの全草のことで、主に湿布薬として用いられています。

蓮肉

蓮肉

蓮の実です。8、9月に黒く硬いものを採り、刀で割って青い皮と芯を取り去り、刻んで燻り使用します。実だけでなく、種も蓮子という生薬として使われます。

蓮は東洋医学的には特別の意味があります。根に九孔という9つの穴が空いており、9つの穴を持つ人間と同じで親和性が高いと考えています。

気味、薬味薬性

味は甘、渋、性は平

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、腎、心

効能

胃腸の働きを強くします。

適応とする体質と処方例

普段から胃腸が弱く、尿が出そうで出にくく、神経質で憂鬱になりがちな方に用います。処方例。清心蓮子飲

鹿角

鹿角

鹿角は、中国北部、朝鮮半島、ロシアなどに生息する哺乳動物、シカ科のマンシュウジカ、およびマンシュウアカジカの雄の骨化した老角を用います。鹿の雄は、生後2年目の春から夏にかけて、幼角を鹿茸と言います。完全に骨化したものを鹿角を言います。

気味、薬味薬性

味は鹹、性は温

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、腎

効能

スタミナをつける強壮剤です。精力がつき、体力もつき、増血もしホルモンの分泌も十分に行われます。内蔵の虚弱やホルモン不足からくる手足の痛みや、眩暈や酷い疲れにも効きます。

露蜂房

露蜂房

ヤマバチの巣で、山中の木や家の軒に巣を造っているものです。薬用になるものは、雨や露に触れたものが良いと言われています。露の一字をとって露蜂房の名を得ました。

使用方法は、色々とあって黒焼きとして使用したり、末にして酒で飲んでみたり、露蜂房一味を煎じて飲んでみたりします。露蜂房の巣自身が効くのか、巣の中の幼蜂が効くのか、卵が効くのか、迷うところですがおそらくどちらも効くのであろうと考えられています。

気味、薬味薬性

味は甘、辛、性は温、有毒あり

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

効能

軽い歯茎の痛みや、歯の痛みを鎮めます。露蜂房を黒焼きにして軟膏剤に練って殺菌剤として使用します。神経が鋭敏になっている幼児のかんむし、ひきつけ、寝小便などに用います。

適応とする体質と処方例

化膿症などに加えることによって、殺菌作用を高めます。処方例。托裏消毒散加露蜂房末

芦根

葦根

芦根はヨシ、すなわちアシの根です。本名は葦ですが、葦は悪しアシに通ずるので良しヨシと改名したようです。ヨシの生根は、白色柔潤、やや甘みがあります。これを乾燥させると黄色となり味は淡くなります。香気を失った物で、枯れて充実していない物は使用してはいけません。

気味、薬味薬性

味は甘、性は寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肺、胃

効能

消化不良症の健胃薬となります。フグなどの毒を解毒します。

適応とする体質と処方例

各種炎症化膿の初期で、微かな熱感があり、喉の痛み、汗ばむ軽い口渇のある方。処方例。銀翹散