山帰来、蒺藜子、芍薬、麝香、車前子

漢方生薬

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。

山帰来

別名土茯苓ともいいます。中国からインドにかけて分布するユリ科のつる性落葉低木の根茎を用います。別名の土茯苓は中国での生薬名となります。現代でも家庭薬の皮膚疾患治療剤として、サンキライの名でしばしば配合されています。

気味、薬味薬性

味は甘、淡、性は平

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

肝、胃

効能

梅毒や慢性の皮膚疾患、化膿性疾患、頚部結核に用います。レプトスピラ病や麻疹の予防や治療に用いられています。

適応とする体質と処方例

  • 甚だしい炎症や充血はなく。亜急性、慢性の経過を取っている帯下に用いると良いとされます。
  • やや貧血気味で、腹部も比較的軟弱な方に用います。処方例。八味帯下方

蒺藜子

蒺藜子

世界各地の温帯から熱帯にかけて分布するハマビシ科の1年草で、薬用にはその果実を用います。一般に海辺の砂丘に自生し、果実がヒシの実に似ていることから、浜菱の名があります。

気味、薬味薬性

味は辛、苦、性は微温

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

効能

高血圧や情緒不安などに関係する眩暈、頭痛などに用います。皮疹や掻痒感に用います。胸や腹の痛みに用います。

適応とする体質と処方例

老人や虚弱な人の皮膚発疹に用います。病変は活動的ではなく、皮膚は乾燥して潤いがなく、丘疹は小さく数も少なく、いかにも弱々しい感じのものが多いです。分泌液はないか、有っても少ない事が普通であるが時には多いのもがあります。掻痒は大抵の方が訴え、特に甚だしいもの、発疹が殆どなくて掻痒だけを訴える方もいます。処方例。当帰飲子

芍薬

芍薬

芍薬はその根を使用します。芍薬の花の姿はしなやかです。しなやかなことをシャクヤクとも言うのでこの名がつきました。芍薬には白芍薬と赤芍薬があり、呼び名も艶友、菩薩面、花相とも呼ばれています。白芍薬と赤芍薬は、調製法により分けられます。

赤芍薬の調製には、ヒゲ根を除いて水洗いし、そのまま天日乾燥するもので一名生乾と言います。また白芍薬は、水洗いした後コルク皮を剥いで熱湯におよそ5分間浸漬し、天日乾燥します。

気味、薬味薬性

味は苦、性は微寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

効能

痛覚中枢や脊髄性の反射弓の興奮を鎮静させる作用がある。血行不良、冷え、ホルモンの関係の腹痛に効きます。筋の緊張を緩める働きがあります。

適応とする体質と処方例

  • 血糖増加の必要のある方、精神疲労や精力欠乏で起こる寝汗や心悸亢進、手足煩熱、手足倦怠、小便を頻繁に行かれる方に用います。処方例。小建中湯
  • 化膿している場所は筋の緊張をしているため、芍薬の緊張を緩める作用で排膿を促します。処方例。排膿散

麝香

麝香

麝香鹿の雄のヘソと陰部の間の腺嚢分泌物で、特殊香気のあるものである。成分に麝香精油、ムスコン、膠質、タンパク質を含みます。

気味、薬味薬性

味は辛、性は温、強烈な香気

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

心、脾

効能

強烈な香気が、反射興奮性に働いて呼吸中枢の興奮作用と強心作用とを現します。主に虚脱、失神等に使用するのはこのためです。

適応とする体質と処方例

急性の熱病、中毒、心臓衰弱、胃腸の病、四季の風邪に使用します。処方例。六神丸

車前子

車前子

車前草は、よく道端の牛馬車の輪の跡のほとりに生える草との意味で、また車前草の一名のオオバコは大葉子からきた名で、その葉の大きいことからその名が生じました。車前は花穂のついた全草を使ったものを車前葉、果実を車前子と分けています。昔は漢方で車前といえば車前子を指しましたが、現在ははっきりと区別しています。車前草は、全草のみならず根まで使えます。根部の根元に薬効があるとも言われています。

気味、薬味薬性

味は甘、性は寒

帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係

心、脾、肝、胆

効能

目の充血や鼻血、血尿、子宮出血の原因を取り去り、血行を促す力があります。呼吸運動を深大かつ緩慢にさせるので、鎮咳作用があります。利尿薬の補助となります。車前子のみで利尿薬として服用していると身体に悪いと言われています。

適応とする体質と処方例

苓桂朮甘湯や五苓散に加味をすると利尿剤として十分に働きます。