パーキンソン病、本態性振戦

その他の精神神経症

パーキンソン病や振戦は、ご自分の意思では抑えられない振るえがきます。

パーキンソン病、振戦が進行すると、箸を持つことも困難になり、仕事や日常生活、歩行に影響が出てきます。
少し頭を前にかがみ、独特の前屈の姿勢になります。しゃべるのも遅くなったりします。経過は少しづつユックリ進行していきます。

中脳黒質のニューロンが脱落し黒質線条体の働きが低下した病態です。ニューロンの脱落は老化により生じるため、誰でも120歳になると理論的にはパーキンソン病になります。

パーキンソン病の人は、年齢よりもニューロンの脱落が早く、老化が早く進んでいると考えられます。

西洋医学的にも様々な新薬が開発されていますが、現実には非常に難しい疾患だと言えます。

パーキンソン病と本態性振戦の東洋医学の治療概念

パーキンソン病やチック病、本態性振戦の区分けを東洋医学ではせずに、振るえという症状を漢方の証として捉え、患者さん一人一人に合わせ漢方独特の概念により治療がなされます。

東洋医学で言う臓腑経絡は、西洋医学の内臓とは異なります

肝は筋を主どる

東洋医学の臓腑概念の中に、五主と言うものがあります。その中に「肝は筋を主どり」とあります。これは肝が病むと筋肉が引きつったりする。パーキンソン病、振戦、チック症になると言う意味です。

ちょうどパーキンソン病や本態性振戦、チック病などの病態が東洋医学の肝に含まれ、これらの症状は肝の病となります。

また肝の五志は怒りです。イライラや短気などのストレスにより、肝の病は酷くなるとされています。そのため、イライラや焦りなどは避けなければいけません。

振戦は東洋医学の治療で改善する人も多い疾患です。
パーキンソン病は西洋医学的にも東洋医学でも難しい疾患です。
西洋医学の治療で奉功しない時、東洋医学と言う方法も残されています。

パーキンソン病、本態性振戦に有効な報告がある様々な漢方処方

以下の漢方薬は、パーキンソン病や振戦、チック病等に有効だとの報告が学会等であった薬方です。

  • 小承気湯
  • 抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、抑肝散加芍薬
  • 半夏厚朴湯
  • 苓桂甘棗湯
  • 四逆散、他柴胡剤
  • 厚朴一味

上記薬方は、パーキンソン病、振戦に単独で用いるより、芍薬甘草湯を合方、芍薬、厚朴等を加味して用いる場合が多く、効果も増します。

パーキンソン病や振戦に用いられる生薬

パーキンソン病や振戦に多用される主薬は厚朴と芍薬です。

厚朴

厚朴はホウノキの枝の皮です。
唐厚朴と和厚朴があります。唐厚朴は内皮が黒く、和厚朴は内皮が白っぽいのが特徴で鑑別のポイントになります。
元々、唐厚朴と和厚朴は種類の異なる植物です。和厚朴は日本で唐厚朴の代用品です。日本では安価な和厚朴が使われる傾向にあります。

厚朴は気塊を取る漢方薬です。和厚朴では梅核気などの気塊が取れずらいとの報告があります。
パーキンソン病や振戦の原因は東洋医学では肝の気の昂りです。その肝気の高ぶりを唐厚朴で解消する目的で使用されます。

白芍薬

芍薬には白芍薬と赤芍薬があります。
赤芍薬や皮付き芍薬は駆瘀血作用を目的に桂枝茯苓丸などの構成薬味です。
白芍薬は緩める働きです。運動筋、内臓筋、精神も緩めます。パーキンソン病や振戦の筋肉の痙攣や収縮を緩める目的です。

芍薬も脳内に働きますので一概には言えませんが、パーキンソン病や振戦の本治法、原因療法として厚朴が働き、標治法、対処法として芍薬が働いていると思われます。

漢方太陽堂では、これらの薬方を中心に一人一人の患者さんに合わせ、パーキンソン病、本態性振戦の治療法を組み立てていきます。

古方派の漢方診療医典を参考にパーキンソン病と本態性振戦

大塚敬節、矢数道明、清水藤太郎共著に、パーキンソン病に対する漢方治療の記述がありますので、ご紹介します。

小承気湯合芍薬甘草湯

小承気湯は大黄、枳実、厚朴の構成処方です。
小承気湯の厚朴3グラムの量を普通の3倍から4倍に増量して用いると記載されています。厚朴1日量の9から12グラムの大量使用を勧めています。
大黄の量は大便の通じ具合によって増減するがよいとあります。

これでふるえがとまり、筋肉の強剛が緩解することがある。筆者はこれで全治せしめた例を持っているとのこと。
その小承気湯に芍薬甘草湯を合方します。芍薬甘草湯の芍薬量は1日3から5グラムになります。

厚朴9から12グラム、芍薬3から5グラムが必要になります。

抑肝散合芍薬甘草湯加厚朴

抑肝散は痴ほう症に対し改善例が報告されている薬方です。抑肝散により脳内の細胞が賦活するとの報告です。
抑肝散の構成薬味である当帰、釣藤、川芎、白朮、茯苓、柴胡、甘草の研究では、どの薬味が働いているのか判明していません。抑肝散処方によるコラボレーションの可能性があります。
従来は子供のチック症に対する特効薬として使われていた処方です。
パーキンソン病と振戦に対しては、抑肝散に入っていない厚朴と芍薬を追加した治療薬になります。

気分に落ちつきがなく、不安な、不眠などを伴うものに良いようです。
最近58歳の男子で、パーキンソンの初期で、軽症のものに、本方を用いて3か月でほぼ完治したものがあるとの報告です。
大沢勝氏は、厚朴1味を用いて、治癒せしめた例を報告しています。

パーキンソン病の漢方改善例から

漢方太陽堂の患者さんの症例をご紹介

電車のホームが怖くない

男性60歳
足腰の転びそうになる症状は、ほんの少しですがパーキンソン病が改善しているようで電車のホームが怖くない時があります。
ただ心臓がバクバクして締め付けられ、胸がドキドキして酸素が足りない状態になります。病院では心電図異常なし、心臓に水も溜まっていませんでした。
心臓が悪いんでしょうか。今はこの症状が気になります。

2017年10月20日

漢方太陽堂から患者さんへ

漢方薬を飲み始めて約1ヶ月になりますね。足の動きが少し改善されて良かったです。
糸練功上でも順調に動いていると思われます。
極力漢方薬が切れる期間を作らないほうが改善が上手く進みます。頑張って続けて下さいね。
また、心臓の状態ですが、東洋医学的にパーキンソン病と同じ原因と思われました。
こちらも落ち着いて来ますのであまりご心配されないで下さいね。