一日の陰陽と五行説

東洋医学概念

2024年4月16日。写真は、熊本市熊本城です。

東洋医学である漢方は陰陽説を元に創られています。

一日の陰陽

黄帝内経素問金匱真言論篇第四に
陰の中にも、また、その中で陰の部があり、陽の中にも、また、その中で陽の部がある。
これを一日に例えると

  • 夜明けから正午までは、天は陽中の陽。陽
  • 正午から黄昏までは、天は陽中の陰。陰
  • 日暮から一番鶏が鳴く時刻、丑の刻、午前二時までは、天は陰中の陰。陰
  • 一番鶏が鳴いてから夜明けまでは、天は陰中の陽。陽

陽中の陰、陰中の陽

ここで私達の感覚と異なるのが

  1. 正午から夕方までが陽中の陰であることです。気温が一番高くなる午後二時は陽中の陰で、陰である点です。
  2. 午前二時から夜明けまでは陰中の陽です。気温が一番低くなる日の出前は陰中の陽で、陽である点です。

陽中の陰は、陽の中に陰が出来、陰に向かうの意味です。
陰中の陽は、陰の中に陽が出来、陽に向かうの意味です。

東洋医学では気温や現状を見ていません。これからどうなるのか、方向性を見ています。

五行の中の陰陽

木火土金水が五行です。五行にも陰陽があります。

木は陰中の陽、肝、春
火は陽中の陽、心、夏
金は陽中の陰、肺、秋
水は陰中の陰、腎、冬
土は季節の変わり目。立春、立夏、立秋、立冬の前の十八日間で年四回あります。脾、土用

素問、霊枢、難経で異なる五行

東洋医学の古典である黄帝内経は、素問は脾王説で書いてあります。
同じ黄帝内経でも霊枢、難経は心王説により書いてあります。
書かれた時代が異なるのか、素問が古くて霊枢、難経は後の時代とも言われています。

素問は脾王説のため養生法として使いやすいです。
霊枢、難経は治療法として発達しています。

黄帝内経による治療法

東洋医学の古典には治療理論が書いてあります。
その中の幾つかをご紹介します。

制すれば即ち生化する

東洋医学の自然治癒力は勝復関係で説明されます。
難経七十五難に書いてあります。

  1. 木の肝が病的状態となり実していると
  2. 相剋関係の土の脾が虚します。
  3. 相生関係の土の脾の子、金の肺が親である脾を助けようとします。生体の正常化作用です。
  4. 金の肺が相剋関係の木の肝を抑制します。この勝復関係にて木も土も正常化します。

素問臓気法事論篇第二十二

季節と病の治り方について書いてあります。

病が虚して肝に在るは夏に癒ゆ
夏に癒えざれば、秋には甚だしい
秋に死ざれば冬には持ち
春には起きる

肝の病は陰中の陽です。夏は陽が強くなる陽中の陽になります。夏に癒えます。
秋は肝と相剋関係で真逆です。陽中の陰です。秋には甚だしいです。
冬は肝と相生関係で陰中の陰です。冬には持ち堪えます。
春は肝の季節です。春には治り起きます。

難経四十九難、五十難

病邪の種類と犯された臓腑により、病の治り方と予後について書いてあります。

六淫

病因として六淫は、風邪、暑邪、火邪、湿邪、燥邪、寒邪があります。

  • 風邪は2、3、4月の旧暦の春に起きやすいです。上焦、表、発散の傾向があります。風邪による悪寒、頭痛、めまい、鼻水、喉の痛みなどの症状です。
    肝を侵します。
  • 暑邪は5、6、7月の旧暦の夏に起きやすいです。裏熱、身熱、高熱、顔が赤く、口渇等の症状です。
    心を侵します。
  • 火邪は気温が高くなると悪化します。血熱が強く炎症、化膿、腫れ等の傾向があります。吐血、血便、血尿などの症状もあります。
    心、心包を侵します。
  • 湿邪は湿気の影響で起きます。梅雨時などに悪化しやすいです。疲労感、浮腫、湿の皮膚病のストロフルス、汗疹などの症状です。
    脾を侵します。
  • 燥邪は8、9、10月の旧暦の秋に起きやすいです。湿度が下がるなど乾燥に影響されます。痰の少ない咳や皮膚の乾燥などの症状です。
    肺を侵します。
  • 寒邪は11、12、1月の旧暦の冬に起きやすいです。寒く冷たいのが特徴です。足腰が冷える痛む、下痢などの症状です。
    腎を侵します。
五邪

病として五邪は、虚邪、実邪、賊邪、微邪、正邪が有ります。
五行の臓腑には属する邪は、中風、傷暑、飮食労倦、傷寒、中湿があります。

  • 風による中風。木の肝に属します。
  • 暑気による傷暑。火の心に属します。
  • 暴飲暴食、過労による飮食労倦。土の脾に属します。
  • 寒気による傷寒。金の肺に属します。
  • 湿気による中湿です。水の腎に属します。

病に虚邪、実邪、賊邪、微邪、正邪があります。
上段緑字は難経五十難、下段黒字は脈経の記載です。

  • 相生関係。母子関係で、母と同属の邪が子を侵す時、虚邪
    虚邪は病むといえども治し易し
  • 相生関係。母子関係で、子と同属の邪が母を侵す時、実邪
    実邪は病むといえども自ら治す
  • 相剋関係。夫婦関係で、夫と同属の邪が婦を侵す時、賊邪
    賊邪は大逆となす。十死治せず
  • 相剋関係。夫婦関係で、婦と同属の邪が夫を侵す時、微邪
    微邪は病むといえども即ち差ゆ
  • 邪がそれと同属の臓を侵す時、正邪

相生関係の虚邪は治し易く、相剋関係の賊邪が最も重症です。