
脳梗塞とくも膜下出血。患者さんとの「かけ橋」
漢方太陽堂の患者さんに、毎月お配りしています。
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脳梗塞の男性
(No.2050)
2ヶ月前に脳梗塞を起こし、1ヶ月前まで入院していた。
顔が赤く発色し、舌には白苔があり、内熱が窺える。
現在の症状は降圧剤ノルバスクを服用した状態で血圧130。80。便秘が有りプールセニドを服用している。
不眠症が有り、脳梗塞発作後より、ふらつきと右膝下から右足指先へ痺れがあるとの事。脳梗塞に対してはアスピリンを服用している。
糸練功で確認すると、左中焦に五志の憂(自律神経のアンバランス)と高血圧が動脈硬化の証として4合Ⅱ。左上焦に脳梗塞が5合Ⅰ。
脳梗塞後遺症の右足の痺れが右下焦2合Ⅲに確認される。
薬方は高血圧に対し動脈硬化改善剤、脳梗塞に脳血流改善剤、後遺症に麻痺や痺れの改善剤を各々投薬する事とした。
3ヵ月後、高血圧左中焦8+(1)、脳梗塞左上焦9+(1)、後遺症右下焦9+(1)に各々改善。アスピリンの服薬を中止した。
5ヵ月後、全て10±に改善。症状が消失し、漢方薬の服薬量を半分に減量する。
7ヵ月後、殆ど治癒したと思われる。
再発防止の為、うっ血を取り除く効果のある漢方薬を1日1回服用に変え、現在も再発防止の目的で服用している。
脳梗塞と診断された男性
(1944年生、男性No.5626)
車の運転中、突然様子がおかしくなり、脳梗塞と診断を受けた。
2年前に一度、脳梗塞を患い治療を終えていたが、頸動脈の詰まりや左海馬のモヤ等、新しく色んな箇所が詰まっているとの事。会話は出来るが、時々時間や日付が分からなくなる。右頸動脈が8割詰まっており、カテーテル手術を行う運びとなった。
糸練功にて、左海馬、胃瀉0.1合5+に反応あり。脳梗塞の後遺症を改善する漢方薬を選薬した。
手術後、右眼の視界が狭くなり、もやがかかって見える。リハビリ中に壁にぶつかるのでご家族の方もご心配の様子。
右眼に対して「清熱+水毒」を取る漢方薬を追加した。
2ヶ月後の眼科検診で、眼の異常はみられなくなった。海馬、脳血流とも順調に改善が進んで行った。
漢方治療開始から5ヶ月後、とても体調良く、長崎のバスツアーを楽しまれた。
更に3ヶ月後、血流改善剤を病院薬から漢方薬へ徐々に移行し始める事とした。
漢方治療開始から10ヶ月後、最寄りの駅まで車の運転が出来るまで回復。
脳梗塞で倒れた1年後の検査では、MRIでは全く異常がみられなかった。
脳梗塞の回復にはリハビリが重要である。日々、ハイキングやバスツアー、カラオケなどを楽しみながら漢方薬を継続され、2年で漢方薬を廃薬。うつろだった目がハッキリし、頭もスッキリする様になられた。
くも膜下出血による左半身不随・記憶障害
(1950年生、男性。No.4996)
くも膜下出血で倒れた男性が、奥様に付き添われて車椅子でご相談に来られた。
医大にて脳動脈のクリッピング手術の後、半年程リハビリを続けているが、左半身遂行障害・左手不完全麻痺・記憶障害・注意障害などの後遺症が残っている。
全身が硬く柔軟性がない。脳卒中の後遺症麻痺に、古来より用いられて来た漢薬がある。麻痺の部位が、「手足」「下肢」「左半身」「右半身」によって用いる薬方が異なる。後遺症が左半身・右半身と左右に分かれた場合、左半身には「加減潤燥湯」を、右半身には「加減除湿湯」を繁用する。
この患者さんにも加減潤燥湯が適応と思われ選薬した。
漢方薬服用開始から2ヶ月後、短期的な記憶が残る事がある。頭が冴えてきたのか、よくお話しをする様になられた。
更に2ヶ月後、全く動かなかった左手でグパが出来る。歩幅は小さいが歩ける様になってきた。
漢方薬服用開始から6ヶ月後、車椅子には随分乗っていない。記憶障害が改善し、自己表現も出来る様になって来たと喜ばれていた。まだ左手の動きが完全ではなく指も1本ずつ独立して動かせない。
漢方治療の原則通り「標本治療」を行った。左手の感覚が無かったのが5割程戻って来た。
漢方治療開始から1年経った頃、左手指を伸ばす事が出来た。
病院の検査では記憶障害がかなり改善されている。数字の計算もスラスラ出来る。
その後、筋肉のコントロールをする漢方薬に切り替え、左半身、記憶力とも限界を感じる事なく回復が進んで行った。
重度の後遺症に改善が見られ始めた男性。くも膜下出血
(1969年生、男性。No.7598)
後天的に、重度の後遺症を背負ってしまった男性の夫人より相談を受けた。
きっかけは、くも膜下出血。1ヶ月間集中治療室で治療。3ヶ月間に渡り意識を失っていた状態から奇跡的に目覚めたものの、四肢の麻痺、高次脳機能障害で視界が一部分しか見えない等、重度の後遺症に見舞われた。
嚥下障害もあり、気管支を切開してチューブを繋げている状態で、医師からは治療法が無いと言われる程であった。
非常に難しい症例であったが、糸練功で確認し肝気を補う漢方薬を中心に選薬を行い、治療を開始した。
服用開始1か月後、視界、記憶、身体の硬さに改善が見られ始めた。
2か月目には視界、嚥下能力に改善が見られ、病院で手術を行う事が可能な状態になった。その後複数回に及ぶ手術を経て、少しずつ動きや視界、記憶の状態も良くなり始めた。
1年後には気管支のチューブが取れると言う大きな進歩があった。
その後も家族の支えもあり、懸命に治療に取り組まれた。
現在、漢方薬を服用開始して4年になる。
ご本人の状態は介護が必要なものの、立位の姿勢が取れるようになるまで改善が見られた。
漢方薬の力を実感すると同時に、ご家族やご本人の弛まぬ努力に感銘を受け続けている症例である。
現在も漢方薬の服用を続けておられる。これからも出来る限りの手を尽くして、状態の改善に取り組んでいきたい。