東洋医学の寒熱とは

東洋医学概念

2023年6月6日。写真は福岡県福津市宮地嶽神社です。

冷たいビール

以前は外国に行くと、冷えていないビールを出されることがありました。
ビールの苦みは身体を冷やすします。それを考えると常温で飲むのも本来の飲み方かもしれません。

以前、偏頭痛持ちの男性に呉茱萸湯を出したことがあります。
呉茱萸湯証は、上腹部の冷えが原因で反射神経で頭痛が生じる証に用いる即効性の漢方薬です。
しかし漢方薬服用開始から2、3ヵ月しても偏頭痛が改善しませんでした。
私は患者さんに食生活を聞いてみました。毎晩、冷たいビールを大量に飲むそうです。
ビールを辞めてもらいました。すると直ぐに頭痛が落ち着きました。ビールを飲みだすと、また頭痛が生じます。
この患者さんは聞き分けが悪く、漢方治療が終わるまでビール禁止を説得するのが大変だった事を覚えています。

身体を冷やすビールを常温で飲んでも身体は冷えます。冷たくない分、冷やしにくくなっているだけです。

煮ても寒は寒

根物の生薬である大黄も黄連も黄芩も苦いです。寒から涼で身体を冷やします。
これらを30分以上煎じても身体を冷やす薬性は変わりません。
根物でも冷やす物は冷やします。30分以上煮ても冷やす物は冷やします。

野菜を温野菜にするのは冷やす性質を除く目的ではありません。冷やす力はやや減じマイルドになるとは思いますが。

東洋医学で言う熱とは

東洋医学で言う熱は西洋医学の熱とは異なります。
例えば、風邪をひいて40度以上の高熱が出ます。患者さんが悪寒をし寒いと訴えれば、高熱でも東洋医学では寒となります。
35度台の体温でも身体が火照る、喉が渇くと患者さんが訴えれば熱と考えます。
体温が高い低いではなく、患者さんがどう感じるかが東洋医学の寒であり熱です。

実熱と虚熱

熱には実熱と虚熱があります。
実熱は陽証であり、虚熱は陰証になります。

例えば、高血圧でガッチリ型で赤ら顔は実熱で陽証です。
遠出をし遠距離を歩いた時など、夜に足が火照ることが有ります。疲労し弱ったために出る熱で陰証で虚熱です。
唇の荒れも陰証の虚熱です。
喉が渇き水をゴクゴク飲むのは実熱、口渇。
喉は乾くが口を湿らす程度で落ち着くのは虚熱、口乾になります。

寒熱と症状

尿の色が濃いのは熱症。但しビール色の尿は黄疸の可能性があります、結膜の白目が黄色くないか確認をします。
尿の色が透明に近いのは寒症です。
女性のおりものが薄く白く量が多いのは寒症。色が褐色で濃いのは熱症。

下痢で臭いが強く肛門に灼熱感が有り、下痢してスッキリすれば熱症。
同じく下痢で水性が強く、下痢して脱力感が強ければ寒症です。

皮膚病で浸出液が臭いがしたり色が濃かったら熱症。
目ヤニは熱症になります。

食養生では体温に左右されるのではなく、東洋医学の寒熱により食材の五気、寒、涼、平、温、熱を選択して食べていきます。

難しい食養生

一般の食養生では全ての物を寒熱で捉える傾向があります。
果物は寒、根物は温、海産物は寒と。

五気、寒熱だけで捉えるから無理が生じます。余計に複雑化します。
五味と形象薬理学を考えます。
病性の寒熱、燥湿、病向の収散、升降の4つだけでも理解すると応用が効きます。

果物

果物は降ですが、すべての果物が身体を冷やすわけではありません。
バラ科のリンゴ、アンズ、梅、すももなどは酸のため温です。また大棗なども温です。
また、バラ科の多くの果物や大棗などは潤で身体を潤します。「水は寒なり」ですが、それでも温で身体を温めます。
冬の温州ミカンや金柑、橘なども潤ですが、酸のため温で身体を温めます。

根菜類

根物である牛蒡は温ではなく涼、寒です。
漢方薬の根物の黄連、黄芩、大黄、竜胆、牡丹皮、沢瀉、柴胡なども涼、寒で身体を冷やします。
根物が全て身体を温める分けではありません。

瀉剤は寒か

瀉剤の物も寒と考えがちです。
瀉のニンニクやラッキョウは温です。また瀉剤の麻黄も温で身体を温めます。

浄血は寒か

浄血作用のある物も寒と考えやすいです。
温経湯は駆瘀血剤ですが、太陰で温で身体を温めます。
同様に烏賊にも浄血作用が有りますが、烏賊は海産物ですが、平から温です。身体を冷やしません。コウイカの内部の甲羅、烏賊骨だけが涼です。

五気の寒、涼、平、温、熱。燥湿、補瀉、升降、収散、五味、五色は別々の概念です。