
2020年12月9日;(写真は滋賀県。長浜城です)
漢方の診察方法は四診(シシン)です。
望診(ボウシン)、聞診(ブンシン)、切診(セッシン)、問診(モンシン)の4つです。
この中で目で見て判断するのが望診です。
爪の望診
今日は望診で爪の診方をご紹介します。
ご自分の爪を診てみて下さい。
爪の成長は半年
爪は伸び入れ替わるのに約半年掛かります。
爪は皮膚の変化した組織です。
そのため過去半年間の皮膚の栄養状態、血流他(身体の状態)の記録が残されています。
小爪
爪の生え際の白い半月部分です。
次の爪に成長する若い爪です。親指は大きく小指になると小さくなります。
小爪が大きい人は、新陳代謝が活発です。
爪の縦シワ
爪の栄養状態を診ます。
爪は皮膚の変化したものですので、皮膚の栄養状態が分かります。
縦シワは老化でも入ります。また皮膚の栄養素であるビタミンB2、B6やタンパク質ケラチンなどの不足で縦シワが出来ます。
縦シワ解消には野菜不足を解消し、良質なタンパク質を多く摂ります。
爪の横シワ
爪の入れ替わりに半年かかると考えれば、真ん中付近に横縞があるのは3ヶ月前に身体に異変が有ったと考えられます。
発熱やその他の病気、ストレス、強い疲労等が考えられます。
スプーン爪
スプーン匙の様に爪の真ん中が凹んだ爪です。
乳幼児では普通に見られます。小学生以上である場合、爪への血流不足が考えられます。まず貧血を疑います。
ばち指
スプーン爪とは逆に付け根付近より盛り上がった爪です。
親指から膨れだし他の指の爪も膨れていきます。
肺がんや肝硬変など重篤な病が原因の可能性もあります。
爪の黒い線
老化やストレス、他の原因でも生じます。
黒い線が濃くなったり、濃淡があったり線の太さに変化がある時は、悪性のメラノマの可能性もあります。
耳の望診
耳にも様々な反応がでます。
男性ホルモンの影響
男性ホルモンが多いタイプの方は、年齢が上がると耳たぶにシワが出来やすいです。
同時に耳からの毛が多いのも男性ホルモンの影響です。
男性ホルモンが多い人は、梗塞性の病気を起こす可能性が高いです。
心筋梗塞や脳梗塞などです。
梗塞を防ぐ養生法
梗塞を起こさない為に血液中の水分量を維持する必要があります。
サウナやお風呂、運動の前にコップ1杯の水が必要です。
喉が渇いた時には既に脱水をしています。
何故なら喉の渇きは血液中の水分減少により生じるからです。
コツは喉が渇く前に水分を補給することです。
食養生では
「水で晒さない生玉ねぎ」や「納豆」などで血液をサラサラにします。
ミカンの皮に付いている白い筋も血栓予防に有効だと言われています。
食養生で「潤」の食材。バラ科の果物、イチゴ、桃、梨、リンゴ、梅など。海産物、梅干し、お味噌汁なども身体の水分保有を高めます。
腎虚と耳
耳の前側、顏側に縦シワが入ることが有ります。
東洋医学では腎虚(ジンキョ)になります。
腎虚の養生法
よく歩く事、下半身の運動をすると良いです。
漢方の食養生では五畜(ゴチク)と言いますが、その中で豚肉が良いです。豚肉をよく食べる地方はお元気なお年寄りが多い地区でもあります。
同時によく噛む事です。唾液腺ホルモンのパロチン(老化防止ホルモン)が分泌されます。早食いは老化を早めます。
小指の望診
手の平を広げます。
小指の長さが薬指の第一関節より短い方がいます。
生まれ持ったものです。
小指と瘀血
女性では、子宮後屈やTaylorテラ症候群(骨盤内うっ血)、卵子の膜が厚かったりなど瘀血(オケツ)証の方が多いです。
東洋医学では、妊娠しにくい原因の一つとも考えています。
漢方薬では、駆瘀血剤(クオケツザイ)の桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、通導散(ツウドウサン)などによる体質改善の適応の人が多いです。
瘀血の食養生
食養生では瘀血の原因となる脂物、油物を減らし、緑の野菜を多く食べます。
清熱作用のある生野菜も合っています。
野菜をとにかく増やします。
出来れば体重も落とした方が体質改善が早くなります。
排便の望診
漢方では、問診で口から入れた物の流れを必ず聞きます。
飲食物の流れ
水物に関しては、口から入る水分(口渇か口乾、水分摂取量)、身体循環(発汗の状態、浮腫、胃内停水イナイテイスイ)、排尿(色、量、回数)などです。
食物に関しては、口から(食欲、食事量)、身体循環(肥痩)、排便(下痢、便秘など)などです。
便の状態
二便の異常は問診の項目ですが、今回は望診での排便です。
昔と違いトイレが水洗になったため、便の望診が容易くなりました。
便の色はビリルビン
赤血球の中のヘモグロビンは古くなると代謝され、ビリルビンに変換され肝臓から胆汁として排泄されます。
大便の色はもともと白色です。ビリルビンの色が付き黄土色の便が出来あがります。
胆石などで胆管が詰まると、胆汁が流れ難くなり便が白くなります。非常に危険な兆候です。
緑色の便
赤ちゃんなどで便が緑色を呈することが度々有ります。それは異常ではありません。
大人の場合でも一時的な場合は消化不良などであります。もし緑の便が長く続く時は、何らかの原因が考えられますので受診をお勧めします。
タル便
肛門付近の出血は血便になります。
消化器上部の胃や十二指腸部分で出血があると、肛門に辿り着くまでの時間の経過で便が黒色に変色しタル便になります。胃・十二指腸潰瘍などが原因の場合が多いです。
便の太さ
便の太さが太いのは実証、細いのは虚証です。バナナ状が基準です。
以前に比べ細くなっていると、肛門や直腸付近に腫瘍やポリープが有る可能性があります。
トイレの水に浮く便
比重の軽い便は水に浮きます。まず考えられるのは食物繊維が少ない可能性があります。野菜や根菜類の不足の可能性があります。
便が水に沈む場合は、食物線維も十分に摂っており比重の重い便になります。
水性下痢
食べ物中で身体に影響を及ぼす食中毒やアレルギー物質を排泄するのが下痢です。防御反応の1つです。
下痢をすると体液のミネラル分が下痢として流れます。特にカリウム等が失われると脱力感、倦怠感が現れます。カリウムの多い野菜や果物等で補う必要があります。
下痢の時のカリウム補給は、果物の中で身体を冷やさない温性であるリンゴなどが良いです。
脂溶性便
最近、増えているのが脂溶性便です。通常の下痢は水性です。脂溶性便は油、脂の消化不良です。水洗で流しても便器に付着している便です。
軟便から下痢状のこともあります。
ガスが出やすい腸内異常発酵も同じ原因の場合が有ります。
胆汁の界面活性力が落ちている時に出る便です。原因の多くは胆石、胆砂の場合が多いです。
兎便(トベン)
高齢者に多い便です。ウサギの便の様にコロコロした便です。大腸の蠕動運動で出来た便の形です。大腸内の水分の減少が著しい場合の便です。
海藻類や火を通した野菜、完熟した果物などの水溶性繊維を多く摂ります。水溶性繊維は腸内の水分や油分を吸着する働きがあります。便に潤いを与えます。
便秘薬ではミルマグ等の水酸化マグネシウムが同様の働きがあります。漢方薬では麻子仁丸(マシニンガン)、潤腸湯(ジュンチョウトウ)、芒硝(ボウショウ)なども同様の働きです。
防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
お勧めしませんが、もしダイエット目的で防風通聖散などを飲む時は、便が形を成さない程度を目安にすると効果が上がります。
しかし行き過ぎて下痢状になると体力が落ちますのでお気をつけ下さい。
蒙色望診
望診では一般的に陽証は赤味があり、陰証は黒っぽく現れます。その色の濃さで虚実や病の強さを診ます。
望診での気色と血色
また蒙色望診(モウショクボウシン)と言う東洋医学の望診法が有ります。
蒙色とは病ごとに出現する箇所が異なる、独特の肌色(気色、血色)です。
正に東洋医学の体表解剖学です。
蒙色の診方
蒙色は薄暗い所で約2m程離れて診ます。また明るくすると見えなくなる蒙色が有ります。それが気色と言われる色です。急性病や発病の兆候として現れます。
明るくしても見える蒙色は血色です。一般的には慢性病の時に現れます。
蒙色望診は昭和23年に2代目、目黒玄竜子が発表した望診法です。
鉛筆の芯を削った時に出る黒炭を付けたように見えるのが蒙色です。
蒙色の治療
蒙色の出ている部分にお灸を何壮かして治療をしていきます。
蒙色が一番強く出ている箇所にお灸をすると、その蒙色は消失します。
すると別の箇所に新たな蒙色が出現することが有ります。その蒙色にもお灸をし消していきます。
これを繰り返し全ての蒙色を消すと病状は消失します。
病ごとに現れる蒙色があり、その蒙色をお灸にて消すと病が改善すると言う独特の治療法です。
実際はお灸の代わりに効果のスピードは落ちますが、温灸や唐辛子チンキ、温湿布などでも代用できます。
蒙色と古典
古典の黄帝内経素問(コウテイダイケイソモン)の「五色篇第四十九」には「望診する時は、約10歩の距離を隔て表面に現れている所の発色を観る、、、青と黒が現れるのは痛みがある時、黄と赤は熱がある時、白は寒がある時、、、」とあります。
望診の距離は素問では約10歩、蒙色望診では約2mと成っています。
素問「五色篇第四十九」と蒙色望診とは何らかの関連があると思われます。