気味の食養生

漢方食養生

2020年9月30日;(写真は阿蘇の牧場です)

五味の分かりにくい食材

五味(ゴミ)は、酸、辛、苦、鹹、甘の五種類です。(五色ゴシキでも分かれますが、今回は五味です。)
それぞれの味は東洋医学の臓腑に影響します。
酸は肝の臓
辛は肺の臓
苦は心の臓
鹹は腎の臓
甘は脾の臓です。

酸っぱい、辛い、苦い、鹹(塩辛い)、甘いは、誰でも分かります。
食べた時の味で判断出来る物と、しかし味では判断出来ない物も有ります。

「酸」に配当される食物は

1.酸っぱい物(酢、ロヤルゼリ等)
2.バラ科(スモモ、リンゴ、杏、梅、等)。例外として、梨は甘いに配当されます。
3.柑橘類(ミカン、柚子、レモン、キンカン、橙、等)。夏の柑橘系(枳実キジツ、枳殻キコク)と冬の柑橘系(陳皮チンピ、青皮セイヒ、橘皮キッピ)は働きが異なります。

「辛」に配当される食物は

1.辛い物(ネギ類、ニラ類、ワサビ、香辛料等)
2.刺激物(酒、アルコール類他)
3.芳香、香りの強い物(紫蘇、薄荷、菊花キクカ等)

「苦」に配当される食物は

1.苦い物(ビール、レバー、レタス、ゴーヤ等)
2.新芽(タケノコ、フキ、豆の胚芽部分、山菜等)
3.アクの有る濃緑色野菜(ホウレン草、春菊等)
根菜類でも、アクの強いゴボウなども「苦」の仲間です。
4.心臓、ハートの形に似た物(ラッキョウ、銀杏、杏仁キョウニン等)

「鹹」に配当される食物は

1.塩辛い物(塩、味噌、醤油他)
2.海産物で無脊椎の物(海藻、貝類、ナマコ、蟹他)。魚類は脊椎が有るので除かれます。

「甘」に配当される食物は

1.甘い物(砂糖、ハチミツ他)
2.豆類、穀類(米、大豆、小豆、胡麻、トウモロコシ他)
3.イモ類(サツマイモ、ジャガイモ、山芋他)。例外として里芋は「辛」に配当されます。
4.黄色野菜(カボチャ、人参他)
5.淡色野菜、アクの無い(白菜、トマト他)。トマトはナス科の為、少し「苦」の働きもあります。
6.菌糸体(椎茸、マイタケ、エノキ他)

主食は遺伝子を繋ぐ「甘」

栄西禅師が書かれた喫茶養生記には「一切の食は甘を性となしたる也」と記載されています。 甘の食材を主食とするの意味です。

1週間放置すると腐れる食材(肉や魚、葉野菜、果物他)と腐れない食材が有ります。
腐れる食材は副食です。
放置しても腐れない食材。大自然が次世代への遺伝子DNAを残そうと来年も芽吹く物。
豆類、穀類、イモ類が主食となります。

気味の厚薄で効果が

漢方では五気(ゴキ。寒、涼、平、温、熱)と言う服用したり食した時に、身体を冷やすか温めるかの寒熱の判断基準が有ります。
また五味(ゴミ。酸、苦、甘、辛、鹹)と言う味は、身体のどの臓腑や身体部分に作用するかの判断基準になります。

五気の作用の強さ

漢方の古典「素問(ソモン)、陰陽応象大論(インヨウオウショウダイロン)」には「気味の厚薄」理論が記述されています。
ここでは「気」は香り(鼻で感じる味)、「味」は舌で感じる味で記載されています。
気(香り)の厚い(強い物)は、気の発散作用があります。
気(香り)の薄い物は、気を収める働きがあると記載されています。
味の厚い(濃い物)は、裏(身体の内面、消化器や内分泌など)に働きます。
味の薄い物は、表(身体の表面や骨格、筋肉、皮膚など)に働くと記述されています。

気厚は「散」、気薄は「収」。
味厚は「裏」、味薄は「表」です。

例えば、ワサビは香りが強く(気厚)で発散作用。唐辛子は香りが弱い(気薄)で気を収めます。
ワサビは味が薄く(味薄)で身体の表面に働きます。唐辛子は味が濃い(味厚)で身体の深い部分に働きます。
ワサビが発散作用で、唐辛子が身体の深い部分を温める事が理解できます。

食事では塩や砂糖は気(香り)が薄く、味が濃いです。
味が濃いため身体の深い部分まで届き、収に働きます。香りが薄いので、散ではなく身体に溜め込みます。
塩で浮腫み、砂糖で肥るのが理解できます。