日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。初めての方から専門家まで参考になるよう、気味、帰経、効能、適応とする体質と処方例、民間療法をご紹介。
前胡
ノダケの根を採集して水洗いし、後に日干ししたものです。柴胡に類する根にして、外面は灰黒色で内部は白色で質は柔らかいです。芳香があり味は微かに苦みがあります。
気味、薬味薬性
味は苦、辛、性は微寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺
効能
逆上せのきつい熱を解熱します。
適応とする体質と処方例
アレルギー毒による中毒症を軽減します。特に首の凝りをとり痰をとり胃腸を整えます。処方例。参蘇飲
青皮
ミカンの未熟な青緑色の七月頃の果皮を採って乾燥したものです。青皮は肝胆の働きを盛んにします。
気味、薬味薬性
味は苦、辛、性は温
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肝、胆
効能
肝胆の働きを高めます。胸の張ったような痛み、肩や乳房の痛み、消化不良による下腹部痛などに用います。
適応とする体質と処方例
軽度の胸脇苦満、胸のはったような痛み、左右または片側の脇下の痛みなどに用います。処方例。柴胡芎帰湯
皂角子、皂莢
サイカチの実の入ったサヤを皂莢ソウキョウと言います。皂莢末と大棗の果肉とを混ぜて蜂蜜で丸としたものを皂角丸と言います。皂角丸は金匱要略という本には「咳がきつく逆上せ、時々痰を吐き伏臥すれば咳がきつく寝れず座っておらねばならぬものに使う」とあります。サイカチの刺を皂角刺と言い皂莢と同じく殺虫の力があります。サイカチのサヤの中に入っている種子を蒸乾したものを皂角子と言います。皂莢と同じく去痰薬として気管支炎の咳嗽に用います。
気味、薬味薬性
味は辛、鹹、性は温、小毒あり
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺、大腸
効能
皂莢は去痰剤として使います。皂莢は刺激が強いので用心して使用しなければなりません。人事不省に皂莢末を鼻内に吹き込んで覚醒さす時もあります。皂角刺はオデキの腫を潰したり散らしたりして治す力があります。
適応とする体質と処方例
諸化膿症で初期体力があって炎症、充血が甚だしく熱のある時は、葛根湯や十味敗毒湯を使用しますが、その後の状態で濃が今でもジクジクと治りにくい時に、この薬で体内から力をつけ傷口を治し同時に殺菌する処方です。処方例。托裏消毒散
桑白皮
桑類の根の皮を薬用に使用します。春の発芽前に根を掘り起こして、細根を除き乾燥します。名の通り白い皮が良いですが、晒して灰白色にしたものはあまり良くありません。
気味、薬味薬性
味は甘、性は寒
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
肺
効能
肺や気管支の熱をとって咳を鎮めます。小便不利の者の利尿の働きがあります。
適応とする体質と処方例
体力のあるアレルギー症で、ヒスタミン毒の中毒症があり、その毒が気管支に症状を起こしてる咳がある時に用います。処方例。五虎湯
蘇木
インドからマレー半島原産で、中国南部や台湾でも栽培されるマメ科の常緑小高木、スオウの心材を乾燥したものを用います。スオウというのは中国の蘇方の転じたもので、蘇芳とか蘇方木と言われています。なお同じマメ科の植物にハナズオウがありますが、この花の色が蘇方染めの色に似ていることから名づけられました。
気味、薬味薬性
味は甘、鹹、性は平
帰経。東洋医学の臓腑経絡との関係
心、肝、脾
効能
外傷や腹痛、無月経、産後の瘀血などの婦人科疾患に用います。心臓の収縮力増強、中枢神経抑制、抗菌などの作用があります。
適応とする体質と処方例
腹部の抵抗、圧痛、月経異常、打撲、便秘、のぼせ、胸満、心悸亢進のある方に用います。処方例。通導散