2022年7月5日;(写真は、鹿の群。湯布高原です。)
四季の季節に合う養生法
東洋医学の四季は、新暦ではなく旧暦で考えます。
四季は旧暦
「節分」の次の日「立春」から春が始まります。
同様に「立夏」「立秋」「立冬」と季節が変わります。
春は陰中の陽
新暦2~4月です。
寒い2月でも雪の下で芽吹く植物達がいます。
早春には麦踏(ムギフミ)をします。
冬の寒い時期、平均気温10度前後で私達の身体は36度の体温を保つため、26度も発熱しなければならない身体に成っています。
しかし気温が上昇する春から夏にかけ、体温が上がり過ぎないよう身体は変化していきます。
春の身体の変化に自律神経が追いつけず、体調を崩す季節でもあります。
旧暦の1月7日に「春の七草」を食べます。新暦の1月後半~2月後半です。春の七草を食べる時期から葉野菜を食べ始めます。
上がり過ぎた体温を、蒸散作用のある緑の葉野菜で発散します。
次に春の山菜の時期には、苦み、アクのある山菜で身体の熱を取ります。
そして真冬に26度も体温を上げていた身体は、6度だけ体温を上げれば良い真夏の30度に対応していきます。
夏は陽中の陽
新暦5~7月です。
気温で夏を考えるのではなく、日照時間で考えます。5~7月になります。
暑い夏に脱水、熱中症を起こさないよう、滋潤作用のある旬の果物を食べます。苦みやアクのある野菜の旬です。苦みやアクで火照った身体を冷やします。
秋は陽中の陰
新暦8~10月です。
お盆を過ぎると、朝晩が涼しくなります。
9月の秋のお彼岸には、ヒガン花(彼岸花、曼珠沙華)が咲きます。
冬を迎えるため、夏の火照った身体を冷ます少し苦みのある秋ナスや、旬の果物の柿を食べます。
冬は陰中の陰。
新暦11~1月です。
熊やリス、コウモリ、ネズミなど冬眠する時期です。
季節の過ごし方
黄帝内経素問(コウテイダイケイ)の四気調神大論(シキチョウシンタイロン)篇第二には
「春は、ゆったりと伸び伸びと。朝、緩やかな散歩。冠をかぶらず」とあります。
散歩をし、冠(防寒の帽子)を取り、少し発散、発汗しなさいと。
食事では「春の七草」葉野菜で発散します。
「夏は、陽気を体外に全てを発散させ」
クーラーの中にいるだけでなく汗をかきなさいと。
発汗した分、滋潤作用のある果物を摂ります。
「秋はやたらと動かず。冷えを受けないよう」
朝晩が冷えてきます。
昔は「夜露(ヨツユ)に濡れるな」と言われていました。気温が上昇し始める朝露ではなく夜露です。
「冬は早寝。日が昇ってから起床。体を温かくし寒気にふれず、発汗しないこと」
冬眠の季節です。身体は頑張って26度の体温上昇を維持します。発汗を防ぎ身体機能を助けます。
東洋医学の養生法、少しでも皆様の健康にお役にたてればと祈っています。
夜露に濡れるな
東洋医学では、人の一生、1年間、1日も陰陽で見ます。
陰陽の動き
陰中の陽、陽中の陽、陽中の陰、陰中の陰の4つです。
陰中の陽と陽中の陽が陽。
陽中の陰と陰中の陰が陰です。
- 季節では、春、夏、秋、冬。
春夏が陽。秋冬が陰です。 - 1日では、午前3時~日の出、日の出~正午、正午~日の入り、日の入り~午前3時。
午前3時~正午が陽。正午~午前3時が陰。気温ではなく太陽光線の強さで考えます。 - 一生では、胎児期、青年期、成人~20代後半、老齢期。
胎児期・青年期が陽。成人を過ぎると陰です。
夕方以降は陰中の陰
私が小学生の頃、太陽が沈み暗く成りかけた頃に、母から「夜露に濡れるな」と何回も言われていたのを思い出します。
日が沈み気温が下がってくる時に、身体を濡らすなと言うことだと思います。
東洋医学では夕日が沈むと「陰中の陰」に入ります。陰の時期に身体を冷やすなと言う教えだったと思います。
朝露は構いません。日の出から「陽中の陽」になりますので。
生理周期も高温期は陽中の陽、生理は陽中の陰
生理中は陽中の陰ですので陰です。
また「生理中は髪を洗うな」とも昔は言われていました。今みたいにドライヤが無い頃です。「血は熱なり」です。生理により出血している(熱を出している)時に身体を冷やさないためだったのでしょう。
「秋ナスは嫁に食わすな」も同じです。
秋の季節は「陽中の陰」で陰の季節です。秋ナスを食べすぎると身体を冷やして妊娠しにくくなります。孫の顔を早くみたいお姑さんの心遣いです。
進行性指掌角皮症と漢方
東洋医学では、すべての病が太陽病(タイヨウビョウ)から少陽病(ショウヨウビョウ)、陽明病(ヨウメイビョウ)、太陰病(タイインビョウ)、少陰病(ショウインビョウ)へと進行すると考えています。
進行性指掌角皮症を陰陽で診る
進行性指掌角皮症は女性に多い手の皮膚疾患です。
洗剤負けと言われる場合もあります。
女性の利き手の人差し指から始まる事が多い皮膚病です。その後、両手に広がっていきます。
酷くなると指先の皮膚が薄くなり指紋が消失します。皮膚が薄くなると物を触るのにも痛みが伴います。
陽証の漢方治療では
少陽病位で三物黄芩湯(サンモツオウゴントウ)や加味逍遙散(カミショウヨウサン)、麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)などが使用されます。
陽明病位で大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)や防風通聖散(ボウフウツウショウサン)などです。
陰証の漢方治療では
進行性指掌角皮症で意外と多いのが陰証(インショウ)です。しかも表(ヒョウ)の燥証(ソウショウ)が多いです。
その為、湿度の低い乾燥した冬場(陰期)に悪化する方が多いです。
陰証の太陰病位では、温経湯(ウンケイトウ)や当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)、薏苡附子敗醤散(ヨクイブシハイショウサン)などが使われます。
梅雨、湿度と皮膚病
人間の身体は、周囲の気温や湿度で影響を受けています。
季節と湿
ジメジメした梅雨。蒸し暑く寝苦しい夜。湿度が上がると体調の悪くなる方が多い季節です。
山の国道を走っていると車にひかれた動物を見る事が有ります。雨の前日が多いです。
湿度が上昇していく時は自律神経が狂うと言われています。
明日から雨になる時は神経痛が酷くなったり、子供さんの喘息の発作も出やすくなるので気を付けないといけません。
大量の発汗
人間は1日の間に大量の汗をかきます。
寝ている間に約500ml、入浴すると400~800ml、運動では1時間で1,000ml以上の汗をかきます。
静かに座っているだけでも2時間で約100mlの発汗が有るそうです。
脱水で口渇
誰でも喉が渇くと水分補給をします。喉が渇く時は、血液中の水分が減少し反射的に口渇を覚えます。血液が脱水状態になり口渇を覚えます。喉が渇く時は、すでに脱水状態になっているという事です。
お風呂に入ると大量の汗をかきます。血液はドロドロ塊やすくなっています。更に42度以上の湯温は皮膚刺激により血栓ができやすくなります。お風呂に入る前のコップ1杯の水で血栓を防止できます。
湿の皮膚病は汗と湿度で悪化
湿度が上がる梅雨時期、肌から大量の汗をかいています。
漢方では皮膚病を燥(乾燥タイプ)、湿(浸出液が多いタイプ)の2タイプに分けます。
湿タイプには、一般的なアトピー性皮膚炎やニキビ、真菌症、白癬菌、汗疹なども含まれます。
湿の皮膚病の漢方薬
適応する漢方薬は、消風散(ショウフウサン)、桂枝加黄耆湯(ケイシカオウギトウ)、越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)、十味敗毒散(ジュウミハイドクサン)、荊防敗毒散(ケイボウハイドクサン)、柴胡剤(サイコザイ)加牡蛎(ボレイ)などです。
湿タイプの皮膚病は梅雨時期に酷くなる場合が多いです。逆にお盆を過ぎると、朝晩が涼しくなり湿度が下がりだします。その時期から改善が早くなる特徴があります。
湿の皮膚病の養生
皮膚病がある部分は、汗をかいても拭いてはいけません。タオルで拭くと目に見えない細かい傷が皮膚に出来ます。そこから汗が侵入し症状が酷くなることが有ります。拭くのではなく、タオルやハンカチを当て汗を吸い取るようにします。
乾燥した汗は冷水では溶けず流れません。塩が冷水で溶けないのと一緒です。
皮膚病の養生は、まず洗い流す事。お風呂で低刺激の石鹸で洗い流しましょう。